ポ・コロン
コロンとの出会いです。
<<司令本部・アーレイの自席>>
ラインスラストの一件から数週間後、”一通の手紙”がアーレイの下に届く。
「カルネから来たこの手紙は君宛てだと思う、読んでみてくれ」
「ん?あの一件かな」
内容を口には出さないが眼光が少し強くなったので、あの1件だと察しが付いたアーレイは、これは面倒事だろうなと思いながら手紙を受け取り捲ると、達筆なカルネ語で書かれた文面が目に入り即座にフェアリーが自動翻訳してくれる。
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初めましてデルタの黒騎士様
我が敬愛する黒の精霊様の加護を受け、黒騎士に成られた事を大変嬉しく思っております。先日の一件は大変申し訳ありませんでした。星団法に基づき輸出をしていたラインスラストに何ら落ち度はありません。
今回の発端はアデール女王様の死期が近づき支配力が弱まったと勝手に判断して浮足立ち始め、規律ある行動をするように命じてはいたのですが獣の血が騒ぎ身勝手な行動に出てしまいました。
あの場で黒騎士様が現れ瞬殺した事で黒の精霊が怒っていると噂が広まり、獣人達は静かになりました。この度の騒動を鎮めて頂いたこと誠にに感謝いたします。
今回の件とは別にどうしても解決できない闇がございまして、厚かましいお願いだと思いますが黒騎士様を頼る以外に思いつきません。その闇とは星団法があるにも関わらず奴隷狩りが行われ闇取引が暗躍し、未だ獣人達は奴隷として搾取され続けています。
奴隷が存在するのはヒャンド共和国、ディスティア帝国、アーヴィン王国の3か国で、その中でも特にヒャンドとアーヴィンの取り扱いが大きく、商業連合の原理主義派の一部がフォーレスト、クーン、カルネなどから秘密裏に奴隷を集め、労働者や慰み者などに使われているのが現実です。どうか哀れな獣人達を救ってください。
カルネ共和国 ジャクリーヌ
「カルネ共和国 首都カルディ デファンストリート3439-5 ポ・コロン」
署名の後に協力者の名前や住所が記載され、添付されている顔写真を見るとまだ年端も行かぬ犬族の女の子が写っていた。この子はレジスタンスとして活躍していて、アーヴィンの地下組織との窓口になってくれるらしい。
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「アーレイ、これは星団の闇の一つなんだ。君には知られたくなかった」
「この星団はまだ奴隷を使ってるって凄いな」
奴隷について説明を始めるクリスの表情は暗く根深い問題だと察しがつく。1番の悪は買う方だが商魂逞しい連中が言葉巧みにスケベ心を煽り、巨額が動くこともあって中々潰せないらしい。とはいえ数年前に規制が厳しくなり監視衛星などを使い徹底的に摘発したお陰で、労働者としての奴隷は激減していた。しかし慰み者としての需要は減らないと語る。
「人権団体は奴隷解放運動を行わないのか?」
「その人権団体が問題なんだよ、人間至上主義者と獣人というわかりやすい対立なんだ」
撲滅できないもう一つの理由はディスティアは人間至上主義を掲げ、差別心を巧みに煽り国民を煽動していると語る。しかし星団側であるはずのヒャンドが従わない事に疑問が浮かぶ。
「お得意のコウモリ外交だからな、万が一反星団側に加わった時に不利になるから強く出れない」
ヒャンド共和国はトレミー星団の防衛拠点としての役割があり、ディスティアの進行を妨げる重要拠点として位置づけられている。万が一反星団側に寝返ると形勢が逆転してしまう恐れがあるので、強制的に従わせる事が今まで出来なかったらしい。とは言ってもこの問題を放置するわけには行かず、アーレイは星団会議に「強制介入の条文をねじ込めば良い」とクリスに言い放つ。
「簡単に言うなよアーレイ、色々根回しが大変なんだぞ」
「クリスに任せた!適材適所と言うだろ、俺は現場が好きだ」
「アーレイは面倒臭い事はすぐ逃げやがる」
事実、第9艦隊の事務手続きやら業火の乗務員の選別など、事務的な仕事はクリスに丸投げしていた。とはいえこのままでは埒が明かないので陛下にアポを取ることになる。
<<王宮・謁見の間>>
「アーレイ、戦火が下火のうちに片付けてくれ」
「わかりました」
ジェフ曰くヒャンドに警告を出しても適当な取り締まりでお茶を濁し、熱が冷めると元に戻るので強気にやっても構わないと言われた。戦火が下火ならそう簡単に寝返ることはないと考えたらしい。
「奴隷商ネットワークを侮るなよ、彼奴等は事前に察知して逃げるぞ」
「奴隷解放は星団統一には通らなければならない橋ですね、特殊部隊をお借りします」
何度か奴隷解放を試みたが情報漏洩が元で逃げられいたちごっこの状態らしい。星団統一を目指すアーレイにとって是非とも解決しなければならない問題だと認識しているのか凄く素直に命令を受け取っていた。
「うむわかった。どうしたもう行っても良いぞ」
謁見が終わったがアーレイは退出しなかった。そして文句をいう・・。
「休暇!」
「早く行け!」
「ブラックデルタ(小声」
「んっ?なんか言ったか、礼は弾むぞ」
「いえ別に〜金より休暇の方がいーなー」
「チッ」
「失礼しまーす!」
相変わらずのやり取りになれば、後ろに控えるフローレンスは当然の様に反応する。
「クック(笑」
公の場なので口にはしないが「もう面白すぎるよアーレイ様」と心の中で呟いていた。
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<<指令本部・会議室>>
「根絶やしを考えているので草を大量導入して緻密に行動履歴を洗い出し、特殊部隊を使い一気に逮捕するつもりだ」
ジェフとの謁見が終わりキースを呼び出し作戦を練ることになる。特殊部隊の使用許可も頂いたアーレイは全ての奴隷商人を捕縛し、一気に問題解決するために影の大量投入を提案をする。
キース「奴隷商はヒャンド警察と繋がっているらしいぞ」
アーレイ「ヒャンドには悪いが協力者はデルタの息の掛かった者に限定するつもりだ」
何度か奴隷商人を逮捕するためにデルタも動いてはいたが、些細なことから情報が漏れ、あと一歩のところで取り逃がしていた。なので今回はヒャンドと繋がりが深いと言うか警察組織や軍を一切使わず作戦を遂行する。
「クリス影を大量投入して下調べを頼む、もちろん貴族、大臣、商人全ての動きだ
「実は草を放って下調べは随分前に終わっている」
「そうか、それなら第9艦隊を演習の体で待機してもらいたい」
危険を察知すると奴隷商はジャンプコアを2個搭載した違法高速艇を使い逃走していた。となれば業火の出番だろう。確実に追い詰める事が出来るはずだ。
「奴らの後を追うのか、アレなら大丈夫だ」
「そのつもりだ。その前にカルネに行って協力者を連れてくる」
演習とはいえ急いで準備すれば怪しまれるだろう。捕まっている奴隷達には悪いがもう少しだけ我慢して貰うしかない。焦る気持ちを抑えアーレイはキースと共にカルネ共和国へと向かう。
<<デルタ宇宙港>>
カルネには旅行者の体でしか入れないのでアーレイは単独で民間船を使い現地入り。キースはクロウ星団外に移動を禁じられている獣人を運ぶ為に隠密行動用の特殊艇に乗り静止軌道上で待機してもらう事になった。
「手紙が来たお陰で、結局休暇は取り消しかよ(オコ」
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「荒れていますね」
「だってさー、休暇くれと言っても取れないんだぞ」
「私は24時間働けますけどね」
「ふん、心の洗濯は必要ないだろ」
「そうですね〜」
「ちょっと最近生意気だから検査してリセットしようかな」
「きゃー、Ai差別だー!」
「人権屋がここにいたよ」
「ふん、当然」
「マジでムカつくAiだわ」
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あの手紙は勿論ジェフも読んでいる筈でアーレイに見せれば動かざる得ないと考えたのだろう。必然的に休暇は後伸ばしになり不機嫌だが困っている人がいる以上動くことを決め、一路カルネ共和国に向かうのだった。
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<<カルネ共和国と首都カルディ>>
粗暴で野蛮な獣人が住んでいた惑星カルネは数百年前、前アーリー・メンディエタ女王が進化魔法を使い、知的レベルの爆上を行いディスティアの侵攻を防いだ経緯がありクーンと深い繋がりがある国だ。現在ディスティアの支配下だが自分たち本当の支配者は「クーン獣人精霊女王」だと信じ解放の時を心待ちにしている。
カルネ共和国の首都カルディは広大な農地の真ん中にあり周囲10キロほどの城壁で覆われた古典的な農業都市だ。他にも同じような都市が複数存在し良質な穀物を生産、輸出する事でクロウ星団の胃袋を支えていると言われ、ディスティア帝国が植民地支配できない理由の1つだったりする。
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<<首都カルディ・コロンの家>>
「来ては見たものの、相当警戒されているな・・」
アーレイは指定された住所に向かうとそこは平屋建てのアパートで、取り敢えず呼び鈴を押すものの働きに出ているのか応答せず、近所に聞き込みを試してみたが皆一様に口が堅く、パン屋に勤めている事だけが掴めた。
「フェ、シーカーで探査」
「民間人はシーカーなんて持ってませんよ」
「あっそうだった。仕方ない夜に出直すとしよう」
ほぼ手ぶらでの入国なので頼れるのはモジュールだけだが、探査されないように防御幕を張り巡らせてあるのか内部をスキャンする事が出来ず、取り敢えず夜に出直す事に。
<数時間後・・>
「戻ってないな・・」
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「フェ、何かセンサー仕掛けるか?」
「ある訳ないし、私を放置して使わないでネ」
「ですよね~」
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近代的な道具が使えなければ昔からある手法を使うしかないだろう。アーレイは髪の毛をドアの目立たない所に貼り付けた。だが鼻の効く犬族は警戒するだろうから鍵穴にピンセットでホコリ少しを詰めて出入りの確認を行うつもりだ。
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「これでよしっと」
「良く知ってますね」
「ふん、そもそも発想が違うんだよ」
「すごい敗北感・・」
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住人に怪しまれないように早朝ステルスモードで”印”確認に行くが不在だった。
「ありゃ、いないわ」
そして次の日の朝も不在だ。間違いなく近所の誰かがアーレイが嗅ぎ回っている事を教えたのだろう。
<<3日目の早朝>>
「ふむ、流石に今日は戻っているようだな、しかし待つしかないか」
気配を感じたので内部スキャンすると辛うじて生体反応がでた。しかし入り口に仕掛けた髪の毛や埃は変化は無く、警戒され違う出入り口から入ったと考えたアーレイは裏手に回り張り込みをする事にした。
<<数時間後・・>>
「おお、流石レジスタンスだわ」
ステルス状態で待つ事数時間、隣の建物に面した壁の一部が開き周囲を警戒しながら犬族らしき耳を持つ女の子が姿を現す。しかし帽子を深くかぶり顔が見えないので対象者かどうか判別はつかない。
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「あいつが”ポン”だっけ?」
「ポ・コロンです」
「よし後を付けよう、ブーツは消音モードで風下から行こう」
「それが、懸命かと」
「フェ、マーカー付けようか?」
「犬族ですよ!流石に音で気づくと思いますよ」
「そだねー」
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※マーカーには追跡用、転送用などがあり位置を特定できる便利グッズ。高性能なモジュールを装着していると探査でバレやすい欠点がある。
<<街中のパン屋>>
「コロンはパン屋に勤務だから間違いないな」
街中を15分程歩いただろうか。まだ開店していないパン屋に入って行く。あとは開店時間に顔を確認して夜に部屋に出向けばいいだけだ。ヒャンド攻略が 間近に控えているのでコンタクトを取ったら、そのまま一緒に連れて行くのでキースに連絡を取りその時を待つ事になった。
<<対象者帰宅後>>
夜も更けた頃、コロンは塒に戻って来たので夕食を済ませ落ち着いた頃を狙って訪問するつもりだ。そして時間が過ぎ、気を引き締めたアーレイは扉をノックする。
「カルネのジャクリーヌに頼まれて来た者だ」
何度かノックをするが返答が無く、ジャクリーヌの名前を出すとカチャと鍵が外れた音がするものの何の変化も無い。なのでゆっくりと扉を開きアーレイは部屋の中に入って行く。もちろん敵意を見せる訳にはいかないので手ぶらだ。
「おや、かくれんぼかな」
廊下を歩き奥の部屋の中に入った瞬間、天井から何やら黒い影が降って来たのですかさずアーレイはスタンを掛けてみた。
謎)「ウギャー」
体の自由が効かなくなったのか降って来た物体はドタンと大きな音を立てて床に張り付いていたよ。少し痺れているのかゆっくりと顔を上げると確かにそこにワンコがいた。
犬「ううう(泣」
アーレイ「お前アホだろ」
顔面を強打して鼻血が出たのか左手で押さえながら、もう一方の手にはナイフが握り締められ全く歓迎されてないようだ。
「ううう、酷いのだ」
「襲って来たお前が言うなよ、俺はアーレイだお前の名はなんだ」
見た目が中学生のように幼きワンコはしかめっ面でアーレイを睨み、名を名乗りたくないのか犬歯を見せて完全に威嚇行動していた。なのでぶっ飛ばして帰ろうかと思ったがアーヴィン攻略が控えているので取り敢えず「ポロンだろ?」とわざと間違えてみた。
「ウガー!ポ・コロンなのだ」
「お前が、協力者の”ポコン”か?」
「ギャウギャウ!ポ・コロンなのだ!」
単純バカなのか、わざと名前を間違えると早速食いついて来る。なので「ポコン」とか言い放ち会話数を増やしつつ本題に入ることにする。
「それよりお前は誰だ、アーレイだけじゃ分からないのだ」
「デルタ宇宙軍中尉と言っても信用しないのか?」
「人間は信用しないのだ」
人間族に対し憎悪の念があるのか協力しそうにもない。「アーレイは交渉決裂だ」と言い放つと「何故ジャクリーヌ様のことを知っている」と問われ、「奴隷解放の為に協力している」と返すが「人間がそんなことするはずはないと」と完全に拒否られてしまう。以前奴隷商に追いかけ回されたトラウマが残っているようだった。
「信用しなくていい俺は奴隷制度が気に食わないだけだ。それにジャクリーヌって副将軍だろ」
「副将軍は歯痒い思いをしているのだ。同じ仲間が酷い扱いを受けているのでな」
聞けばジャクリーヌはレジスタンスを支援してはいるものの表立って動けず、代わりにコロンが連絡役を任されていると語り、本当に奴隷解放するなら信用してやると言い放った。
<アーレイお待たせ>
「じゃ、今からヒャンドを攻略するから付いてこい」
「はぁ?今からだと」
丁度いいタイミングでキースから連絡が入り、コロンのモジュールにリンクを飛ばし会話を聞かせる事にした。もちろん中空モニターにはデルタ軍のアイコンが現れる筈なので少しは信用されるだろう。
「コロン行くぞ」
「待つのだ!パン屋に連絡をしたいのだ。休みを貰う」
「知らん、早くやれ」
話を続けても埒が開かないので、アーレイは肩をすくめ連絡を促すが・・。
「もちもちポコです。明日から休みをもらいたいのですが」
<じゃ、もう来なくていいわお前はクビ>
「はい、えっ、なんで酷いのだ」
そして一方的に切られてしまいコロンは棒立ちで信じられない顔をしていたよ。因みにリンクしていたのでパン屋の店主との会話はアーレイにも聞こえていた。
「おい、お前のせいでクビになった責任とるのだ、無視するなのだー!」
必要とされていないので首になったと考えたアーレイは、コロンを無視してキースに連絡を取り転送用のマーカーのスイッチを入れると、2人とも即座に上空に待機している小型船に転送された。
「ありがとうキース」
「ああ、楽勝だったよ」
転送を初めて経験したらしくコロンは恐怖のあまり鼻をクーンクーンと鳴らし蹲って怯えていたわ。
「アーレイ、これが協力者なのか?」
「そうだよこのワンコだ」
「普通にワンコだな」
「ああ、思いっ切りワンコだ」
「ワンコ、ワンコ呼ぶな!酷いのだ!」
コロンと言う非協力的な協力者と共にヒャンド奴隷解放作戦を始めなければ成らないアーレイだった・・・。
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