第9艦隊
フローレンスと初めて出逢います。
<<デルタ軍・宇宙港>>
輸送船団を救助したアーレイはデルタに戻るなりジェフから呼び出しを受け、王宮に出向くことになってしまう。
「いきなり勅命で呼び出してっさ、如何にも王国って感じだな~」
「アーレイ、このような場合は間違いなく名誉なことなんだぞ」
2人のモジュールにいきなり<ジェフである出頭せよ>のメッセージが届き、その場で敬礼しているクリスを見たアーレイは、真面目っぷりが面白くて笑っていたよ。
<<デルタ王国・客間>>
「ご苦労だったアーレイ、君の作った船がすごい戦果を挙げたそうじゃないか」
「敵は2世代前の戦艦ですし、火力が低いので当然の結果かと」
謁見の間でひれ伏しながら報告するのかと思いきや、客間に通されジェフ自ら出迎えを受ける。クリスは緊張して直立不動になり「アーレイ、粗相の無いように」と釘を刺されてしまうが、挨拶もそこそこ気軽に握手した後は、着座してお茶を飲みつつ遠慮なしに今回の報告を始めてしまう。
「初陣で壊れもせず戻って来たのは君が始めてでな、喜んでいいぞ」
事前報告で戦果を聞いていたのか執事に「モニターはよ」とか指示を出し、500インチはあるだろうか大型のモニターが運ばれてくる。既にAiによる編集が行われたのかオープニング映像が流れ始め、余程嬉しいのか始まる前から食い入るように見ていた・・。
「おお!発艦シーンは新鮮だな、船が滑り出すのは迫力があるぞ。これは面白いな戦艦が曲芸飛行をやるのか!」
巧みに編集された映像は宇宙戦争映画さながらで、業火、烈火が戦闘機のように縦横無尽に隕石群を飛び回り、後方に回り込んだ敵機を撃破するシーンなどあの映画とそっくりだ。
「この主砲が役に立つ日が来るなんて想像すら出来なかったわ」
クライマックスはもちろん主砲による砲撃だ。ジェフは戦艦や駆逐艦が爆散する様を見て以前、星団法に縛られ使い所が無くなり、悔しい思いをした素粒子砲が日の目を見てとても嬉しそうだ。
クリス「陛下、正直に申しましてこの戦艦は砲撃戦には向きません。ですので配備先を迷います」
ジェフ「それなら2人して新たな艦隊を組めばいい、名称はデルタ第9艦隊だ」
今回の成果に明るい未来を想像したのかは分からないが、軍事バランスを崩すには絶好のチャンスと踏んだのだろう。ジェフは自分の直感を信じ、異例ではあるが新たな艦隊を組む決断をした。
「え゛!2人とも艦隊指揮官なのでしょうか」
「まあそうなるな、精進いたせ」
念願だった艦隊司令官の座を手に入れたクリスは緊張のあまり、武者震いをするかの如くフルフルと震えていた。因みに異星人が艦隊を持つ事自体、異例中の異例だったりする。
「うーん、ちょっと早過ぎたかな~」
「マジで前代未聞なんだぞアーレイ!」
艦隊を持てと言われても自分が理想とする形とは程遠いらしく大して喜ばないアーレイを見て、斜め上を行くとしても程があると思ったクリスは怪訝な顔をして文句を言って来る。
「アーレイ、素直に喜べ」
それはジェフも同じらしく、いつもの掛け合いが始まってしまう・・。
「まぁ確かに艦隊を持てるのはいいですが、まだ開発したい船があるのです」
「両方やればよかろう」
「それなら艦隊司令官はクリスに任せて、用事がある時以外は出向きませんけど」
「構わんかまわん!君の好きに動きなさい」
「はい、わかりました」
「まだ何か不満か?」
「いえ、休暇ください」
「またそれか、2人とも適当に取れ」
「はーい」
「承知しました」
「アーレイ肩身が狭いだろ、今度は中尉だ」
「はい?適当ですね・・・」
「そりゃ、俺の胸先3寸だから」
「やっぱブラックデルタ軍だな」
「俺の特権だ!(ドヤ」
「ソ〜ですね〜(笑」
歯を着せぬ物言いの掛け合いは名物とまでは言わないが、最近では当たり前になりつつある。なので執事や侍女らは生暖かい目で見守っていたわ。それとアーレイと話した後のジェフが上機嫌になるという噂が流れていたがそれは本当なのだろう・・。
「クスクス(笑」
少し離れた席で静かに控えていたフローレンス王女は、遠慮ないアーレイの態度が面白いのか笑みを溢していた。
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「王女様から多量のセレトニンを感知」
「言わんでええわ」
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パタパタと嬉しそうに飛び回り状況報告してくるAiが、段々斜め上になって来たと感じるアーレイだったとさ・・。
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<デルタ第9艦隊発足時>
20万トンエルフォード級・旗艦エルフォード
エルフォード級同型艦4隻
15万トン級巡洋艦5隻
10万トン級駆逐艦10隻
15万トン級ミサイル駆逐艦1隻
5万トン級小型特殊戦艦、業火・烈火
20万トン級支援艦、さざなみ・翠雨
補給艦1隻
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<<作戦司令本部>>
ジェフとの謁見が終わり作戦指令本部に出向き事務手続きを済ませ、ラウンジで寛いでいるとニコニコ笑顔のヴィックが入ってきた。
「アーレイ少尉もとい中尉、フルダイブと戦艦が完成しました」
製造に関しては技官3人に丸投げをしているのでその報告に来たらしい。それに姉妹艦となる2隻と支援艦も完成したと話す。
「それじゃ3番艦は”強烈”4番艦は”憤怒”支援艦は”翠雨”だ」
1.2番艦は火をイメージして3.4番艦は強さを強調する艦名にしてみた。けどクリスは聞き慣れない星団外語なので、はてな顔をしていたよ。
「残念なお知らせがひとつあって艦長は当分の間、健常者になります」
「仕方ないか~」
話を聞くと機関士やパイロットは傷病者を起用できたが、そもそも艦長クラスが不在の為、手始めに副官から育成する事になってしまう。しかしアーレイは今回の戦果が広まりさえすれば志願兵が来ると予想し慌ててはしない。
「アーレイ頼みがある、君の発想力を用いてバトルドロイドの設計を頼めるか」
ヴィックが技研に戻ると、先ほどまでモジュールで誰かと会話していたクリスが突然頼みごとをしてくる。間違いなく武器課の連中が戦果を聞いて依頼したのだろう。
「ん?別に構わんが、戦果レポートを見たんだな」
「そうだよ業火のレポートを見て、特殊武器課が是非君に作って欲しいそうだ」
アーレイとしては艦長の志願兵が一番欲しいけど、他部署からの依頼はそれはそれでよい事なので二言返事で引き受ける。しかしアニメや映画の世界では普通でも実際に作るとなると大変そうだ。
「流石に良くわからんぞ、地球にはない兵器だからな」
「技官と武器課の連中がサポートしてくれるから頼むね」
桁違いな技術力があるこの星団ではドロイドの戦いが主流と思うのが普通だろう。しかし星団法によって火力や稼働時間が制限され上限が300体と至って少数だ。それでも生身の人間では太刀打ち出来ないので、結局のところ機甲歩兵が主流だったりする。
<<技研内・特殊兵器開発科>>
「それでは契約書にサインをしてきます」
特殊科を訪れたアーレイは部屋に入るなり技官に質問攻めにされ、素材に関しては秘密保持契約が必要になると説明すると急げとばかりに総務部に向かってしまい、今は1人でせっせとグランドデザインを描いている。
「総数が決まっているなら稼働率を上げれば使えるな」
ドロイドは前衛として使うので破損が多く、稼働率の悪さに目をつけたアーレイは業火で使用したシリコンカーバイトとジルコニアを使用した複合装甲を採用した堅牢なドロイドを作るつもりだ。
「アーレイ中尉、この外装は凄い強度ですね」
「壊れなきゃずっと戦えるだろ」
セラミックとジルコニアを採用したことで通常のレーザー兵器は跳ね返すか、塩素を応用したシールドでビームで吸収してしまい、滑腔砲でも持ち出さない限り外装が壊れることはないだろう。それに俊敏さを優先して人間より一回りほど大きなサイズ感で収めてみた。因みに見た目はGダムではなくMHに近いデザインだ。とはいえ試作機はそこまでゴテゴテという感じではない。
「試作機は3週間程で組み上げます」
「早いねー」
工業力が地球と比べ桁外れに優れているデルタならではの速さだろう。感心している所にクリスが姿を表す。
「また依頼が舞い込んだぞ、人気者だな」
したり顔をしているのでまた頼みごとだろうと思ったら今度は「戦闘機の設計を頼む」と言われてしまう。とはいえ頭の中で草案は出来ていたのでサクッとグランドデザインを決め、マルチ攻撃機、高機動攻撃機、爆撃機、哨戒機の4種類を描いた。
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「1式高機動戦闘機」
スペック10を基本とした単座型戦闘機には超強力なビーム砲を2門を装備し数十機による飽和攻撃を行えば駆逐艦クラスなら行動不能に出来る。もちろんドッグファイト性能もピカイチでデザインは異なるがF22ラプター的な戦闘機だ。
「10式マルチ攻撃機」
1式をベースに多種多様な武器を積みマルチに使える戦闘機に仕上げた。これを戦闘機に例えるならF15やSu57といったところだろう。
「Cー100&200哨戒機」
単座型と複座型の哨戒機は機体背面に円盤型のアンテナを装備している。20万トン級の戦艦に搭載できるように小型化した機体だ。
1式、10式、Cシリーズに関してはセラミック&カーボン複合素材を使ったモノコックボディーに強力な推進力を誇るエンジンが2基与えられ、軽くて高機動な戦闘機に仕上げる予定だ。
「SH150&SH200」「2式中型爆撃機」
高い防弾性能とステルス性能を有した超高域哨戒機と中型爆撃機は、後に設計する空母に搭載するので試作機だけ作る予定だ。150は6名、200は10名と搭乗数が多い。因みに全ての機体はステルス機能が付き隠密行動も得意だったりする。
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すべての工程において技官がバックアップしてくれるので、アーレイはデザインと素材とコンセプトを描くと後の細かい調整はすべてやってもらえる。とはいえ結構な作業量でドローンと戦闘機の設計に2週間も費やしてしまう。
「俺の休暇はどうした!!」
ここ数週間は仕事が終わるとクリス、技官、キースなどと飯や酒を喰らい、離れた官舎には戻らず、繁華街の近くに借りたアパートで寝ての繰り返しの日々を送っていた。因みに非番の日は疲労がたまり過ぎて寝て起きると夕方なんてことがしょっちゅうで、ブラック企業顔負けの仕事漬けの毎日を送ってしまう・・。
<<数日後・王宮内客間>>
「呼ばれる理由に心当たりがないのだが・・」
「間違いなく頼み事だと思うぞアーレイ」
設計の合間を縫ってジェフから出頭命令が下り、クリスと共に向かうことになるがどうも様子がおかしい。普段なら横に並ぶことはないが今日は耳打ちをしながらの移動になる。少し嫌な予感のするアーレイは既にジト目になっていた・・。
「おい、アーレイ」
「なんですか陛下」
そして相変わらずのやり取りが始まることになるが、いつも後ろに控えているフローレンスが見当たらないことから入室して数秒で察しが付いた。
「相変わらず遠慮の無い喋り方だな」
「ええ、気にしていませんから」
「ちょっと頼みがある」
「なんでしょ」
「あのな、フローレンスと挨拶してくれんか」
「いつも後ろに控えている王女様ですか?」
「そうだ、実は頼まれてな君と一度挨拶がしたいと申しておるのだ」
「嫌です」
「勅命じゃ」
「無理です」
「そう言うな、軽く挨拶だけだ(困」
「そこまで言われるのでしたらお受けします(ドヤ」
「なんかお前の方が偉そうだな、態度デカくないか?」
「デルタのために頑張っているのであって、陛下の為には頑張りたく無いです」
「こら!」
「嫌だって陛下がその頼み方する時って、どうせ王女様に何度もお願いされたんでしょ」
「何故わかる!」
「教えなーい!」
「ふん!」
「それで、どちらに向かえば宜しいのでしょうか」
「客間だ客間!」
「はーい」
「はーいじゃ無いだろ!」
「承知しました」
「うむ宜しい、此れにて散開」
「失礼しまーす」
当初の予想通りフローレンス王女とお茶することが決まってしまう。まぁこれも日頃の行いの成果?だろうな・・。
<<謁見後・廊下>>
「ギャハハ、お前マジで頼むよ~(笑」
「なんかしたっけ?」
謁見の間を出た途端、隣で控えていたクリスが腹を抱えて笑っている。今回のやり取りは特に面白過ぎたらしい。
「だって陛下に文句言う奴はお前くらいだぞ、ほんとストレートだな」
「畏まると伝わらないじゃん、想いとかさ」
「まぁそうだが、お前との謁見の時は毎回、可笑しくて吹き出しそうになるんだぞ」
ジェフの威厳を無視しつつ、それでいて不機嫌に成らないように言いたいことを言い放つアーレイを少し羨ましく思っているのか、クリスはジト目になっていたけど内心では器の大きさを感じていた。
「笑えば?」
「陛下に殺される」
「ふーん、そんなもんか」
「ほらアーレイここだ、俺は先に戻っているから」
「放置かよ」
フローレンスが待つ客室の前まで来る頃にはクリスは少しニヤけていた。きっとジェフから内々で言われていたのだろう。アーレイは「お前も大変だな」と声を掛けると「ジェフの頼みは断れない」と言い返してきたよ。
「そんな時は教えてくれてもいいぞ」
「次はそうするよ」
最近は友達のような喋り方をしても上官であるクリスは文句を言うこと無く、笑いながら去っていく。それだけ親密になってきたのだろう。そしてアーレイは少し緊張したのか深呼吸をする・・。
<<王宮内・客間>>
「どうぞ、おはいりになって」
「失礼します」
ノックして返答を待つと可愛らしい若い女性の声が帰って来る。緊張した面持ちで扉を開けるとにこやかな笑顔のフローレンス王女が出迎えてくれた。
「初めましてフローレンス王女様、私アーレイと申します」
「初めまして第2王女フローレンスと申しますアーレイ様」
頭の上に本を乗せても落ちないような綺麗な立ち姿のカーテシーを決めているフローレンスは、姉のコーネリア同様に凄い美顔の持ち主だ。薄茶色の長い髪、大きなブルーの瞳、ファット系のドレスを纏っているのでボディーラインはわからないが、線の細さを考えるとスレンダー系でそこそこ双丘は盛り上がっていると予想する。
「様付けはやめてください、呼び捨てでいいですよ」
「そんな初対面で呼び捨てなど、それではアーレイ中尉でよろしいですか」
「まぁ、適当にお願いします」
「ぷっ、陛下とのやりとりと変わりませんね(笑」
フローレンス曰く王女の立場だと誰しも敬語を使い、気さくに話してくれる御仁は無比だそうだ。当たり前といえばそれまでだけど、アーレイの喋りが新鮮に感じ素直な心情が読めてそれが心地よいと言われてしまう。
「気分を害され申し訳ございませんフローレンス王女様。今までの非礼どうぞお許しください。わたくしは一介の下級軍人で御座いまして礼儀作法には疎いのでございます」
「キャハハ」
一応、敬語を試してみるものの既にフランクでざっくばらんなイメージを持っているらしく、お腹を抱え笑うフローレンスは凄く屈託のない笑顔を見せてくれる。
「そこ笑う所じゃないでしょ」
「だって、敬語を使っているアーレイ中尉が変なんだもん、ですが王族貴族のトークは本当に疲れますわよ」
「あー、丁寧語で腹の探り合いとかですかね、まぁ面倒ですよねー」
「そうそう、それ、もう能面みたいに無表情で喋らないと表情で判断されますのよ」
「王族貴族にはあまり関わりたくないな、俺は無理かも」
「常識が違いますからね!とはいえ私も王族ですのよ(笑」
普段言葉がちょくちょく出始めたフローレンスは本当に楽しそうだ。目がキラキラと輝き、優しそうな表情へと変化していく様はきっとそれが素顔なのだろう。コーネリア同様に性格も良さそうだ。
「姫様、そろそろお時間でございます」
「あらやだ次の公務が控えていましてこの辺りで失礼致します。次回はお仕事の話聞かせてください」
「もちろん敬語は使いませんよ」
「ええ、もちろん構いません。それでは失礼致します」
フローレンスは立ち上がり軽く会釈をすると、踵を返し数名のSPと侍女を引き連れ颯爽と部屋から退出していく。
「はぁ、少し緊張したわ」
>
「基本データー知っていますか」
「いや、興味ないからどうでもいいわ」
「せっかく教えようと思ったのに」
「あとでな、疲れた帰るわ」
「はーい」
「ん?」
「真似してみました」
「・・・」
>
会話の途中に割り込んできたらOFFだと考えたのが伝わったのか、突っ込むことはなかったが、変な風に育ち始めているのではと思わずにはいられなかった・・。
<<デルタ市街・シャトル内>>
公務のためシャトルに乗り込み王宮の門を潜った瞬間、侍女頭のグリゼルがフローレンスと向き合う。きっと小言を言われる筈だ。
「姫様、先ほど話し言葉が混じっておりましたね(笑」
終始嬉しそうな表情を浮かべ男性と話すフローレンスをみて何か感じたのか、指南役のグリゼルは探りを入れて来る。小さな変化でも女王に報告する義務があるので致し方ないが、今の気持ちはどちらかと言えば母親的な心情で聞いたのだろう。
「ええ、つい普段使いの言葉が出てしまいました。アーレイ様はそうさせる雰囲気があるのですね(笑」
フランクな会話から入った事で初対面にも関わらず打ち解け合い、フローレンスは知らず知らずのうちに芽生えた好意が普段使いの言葉に出ていた。まあそれだけ距離感が縮んだという事だろう。しかしその先にある”心の置き場”に迷い込んだ自覚はまだない・・。
霧さん<うふふ、アーレイと出会った貴女は激動の人生を送ることになるのよ>
フローレンスを見守るように見えない透明な霧が、意味深な言葉を残し霧散して消えてゆく。
宜しければ、ブクマ、評価お願いします。




