試してみました!
カルネ軍の艦隊を引き退らせたアーレイ達は次の紛争地帯に向かいます。
ゲートを使いデルタ宇宙港に向かう道中、孫僕を深める為に天体観測室に入った2人は星空を見ながら先ほどの振り返りを行っていた。
<<フォウルスター・観測室>>
「初陣だと思ったが出せなくて残念だったな。戦争自体が下火だし仕方ないか」
3星団の覇権争いは軍事力が拮抗したことで、最近は大規模戦闘に発展することが少なく局地戦が多い。カルネの件は”黒”のお陰で事なきを得てそれはそれで良いことなのだが、アーレイとしては業火の性能を試すチャンスが無くなり「早く試したい」と言い少し不満そうだ。
「クリスはなぜフォウルスターに乗っているんだ。戦艦の艦長だよね?」
「俺の戦艦はドッグに入っているしこれが好きなんだ」
クリス曰く小回りも効くし何よりこの船の特徴を活かし先程のようなルーラの通信妨害などが簡単に行え、それに観測船は攻撃しないという暗黙のルールがあるのも使う理由の一つだと教えてくれる。
「初めて乗った船だし俺も好きだぞ」
「ありがとう、これ俺が設計したんだ」
文系と聞いていたがここの世界では発想力とプレゼン能力さえあれば割と簡単に船を作れるらしい。作った経緯を聞いて関心していると副長が慌てて連絡を入れてきた。
<クリス艦長、商業連合同士で小競り合いが始まり救援要請が入りました>
クロウ星団の中立地帯付近に商業連合の原理主義派が改革派の輸送船団を襲ったらしい。
「これはチャンスだな、回頭すれば俺達が一番乗りだ。さあ救援に向かおう」
「そだねー」
急遽救助に向かうことになり、フォーレストとせせらぎは船体を傾けながらUターンすると、全速力でジャンプ阻害エリアを通り抜け、小競り合いが起きているクロウ星団を目指す。
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<中立地帯とは>
3星団に各2箇所ほど中立地帯が設けられ一旦入れば攻撃は出来ない。各国の動きを偵察出来るメリットもあり、あの宿敵ディスティア帝国さえ守っていたりする。
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<<クロウ星団・中立地帯近く>>
漆黒の海から突如フォーレストとせせらぎが姿を現すと同時に、強力な探査レーダーを発砲して戦況の分析に入る。
「あらら、完全に睨み合いだね」
「逃げたくても逃げられないのか」
レーダーに映し出された2つの艦隊は、広大な広さの隕石群の内部の更に密集した危険な箇所で睨み合いを続けジャンプでは逃げれない状態だ。それに隕石の陰に入り砲撃戦に至らず艦載機やシャトルを出し牽制し合っていた。
「それにしても戦力差が激しいな、これじゃどうしようも無いわけだ」
「10隻の輸送船にしては戦艦が多すぎる」
革新派は40隻の輸送船と護衛の戦艦2隻で構成され、一方は戦艦2隻、巡洋艦5隻、輸送船10隻と、明らかにバランスがおかしく、どちらかといえば海賊船団と表現するほうが正解だろう。刺激しないようにゆっくりと隕石群に接近していくと救助要請を出した艦長がモニターに映し出された。
<艦長のクリストフェルと申します。救援感謝する次第です>
「来たからには安心してくれ、あと状況を教えてくれないか」
詳細を聞くとラインスラスト製の《《燃料装置》》を積み込みフェデラリーに向かう途中、ジャンプを阻害され足止めを喰らう。そして航路上に戦艦を見つけ海賊と判断するなり全速力で近くの隕石群に逃げ込んだと説明した。
<ジャンプが出来ずに膠着状態に陥りました>
「敵も動くに動けないのか、これから仲裁に入る」
仲裁に入ると啖呵を切ったものの、商魂逞しい連中との交渉は難航が予想され、クリスは厳しい表情に変化した。
「こちらデルタ宇宙軍クリス少佐だ、君らが行っている行為は星団法違反だ、直ちに離脱せよ」
<こちらコンドラトだ。積荷を放棄して立ち去れよ従えば攻撃はしない>
もう笑うしか無いほど傲慢な回答でアーレイは思わず「ありゃ海賊だな」と言い放ち、クリスは苦笑いをしつつ同様に「認められない」と言い返すが全く取り合おうとはせず「高性能な装置を売ること自体が駄目だと」返してきた。
「商業連合がよくそんな事言えるな、売り買いは自由だろう」
<だから私が独断でやっているのだよ>
とまあ会頭の立場を利用して開き直り、仕舞には「探査船に輸送艦かよ笑わせるな」と悪態までつくおまけ付きだった。となれば宣戦布告さえいただければ業火を出すチャンスということだ。
「なあクリス、これって殲滅案件でいいよな」
「俺も流石に腹が立ってきた。だが宣戦布告を敷いてからになるぞ」
アーレイは面白くなって来たのか親指を立てながらせせらぎに乗るべく転送室へと走り、クリスは手順に従い「そちらが手を引かぬなら宣戦布告と見なす」と宣言する。コンドラトは「君尻尾を巻いて逃げないと宇宙のゴミにしてやる」と返答を頂いたので、完全中立国家であろうが交戦が可能になった。
「宣戦布告を受理した」
戦いの準備が整い、待ちに待った業火の性能を試す機会が訪れようとしていた・・。
<<業火・艦橋内>>
「アーレイ艦長いつでも発進可能です」
「アラン、気合いを入れて行こう」
せせらぎに転送されたアーレイは業火の第2艦橋に乗り込むと、乗組員は既に発艦準備を済ませていた。アランは開発科パイロットだが、試験した業火に惚れ込み異動届を出している最中だったりする。
<アーレイあとは頼んだ、あれだろ隕石群を突っ切るつもりだろ>
「そうだよ、一番最初に思いついたよ」
機動性を理解しているクリスは隕石群をすり抜け強襲すると読み、それはアーレイも同じだ。しかし敵艦隊は背後に回り込むと思い込んでいるのか、砲身が外側に向き始めた。
「それでは諸君!初陣だ派手に行こう」
アーレイが命令を下すとせせらぎの後部開口部が上下左右に開き、エンジン噴射口が姿を現しアイドル状態なので赤い火が灯っていた。
「業火、烈火、離脱開始」
舫いを結ぶフックすら存在しない新型艦の外殻は磁性体ではないので代わりに吸着式のロックシステムで固定されている。取り敢えず既存の電磁舫装置を流用したのでジーと耳障りな高圧電流の音が止むと同時に、ぺコンペコンと間抜けな音が響き業火と烈火はゆっくりと宙を浮く。
「微速後進」
スラスターを噴射させるとスーと滑るように艦外に射出された2隻は、舳先をコンドラトの艦隊に向け出発の時を待つ。
「火器管制レーダーオンライン、ジャンプコア起動、耐衝撃ジェル充填開始」
「敵、観測用シーカー向かってきます」
敵はせせらぎから小型戦艦が射出されたのを確認したのか観測用シーカーを飛ばしてくる。艦船認証が不要なこの船の存在をそう易易と広める訳にはいかないと考えるアーレイは、対抗策としてキラーシーカーを飛ばす指示を出し「輸送船団に伝令これより戦闘中の録画は禁止」と命令を飛ばす。
「艦長号令をどうぞ」
「突入開始!!エンジン出力最大全速前進、業火、烈火発進!」
アーレイの掛け声に一瞬遅れて噴射口からズバーンと勢いよく炎が吐き出されると、数秒後強烈なGが生み出され艦橋内はミシミシと音が響き渡る。
「おほほ、これは凄い加速感だ・・」
強烈なGはキャプテンシートに身体を縛り付け、想像以上の加速感を味わうアーレイは思わず口角が上がり、数百キロの距離があるにも関わらず隕石群がもうそこまで迫ってきた。
「敵戦闘機と間もなく会敵」
「パネル砲展開、落せ!」
隕石群に突入した業火と烈火は小隕石などものともせず、時折ゴン、ガンと衝突音を響かせながら大きな塊を避け爆進中だ。そして敵戦闘機が後方に張り付き攻撃態勢にはいるものの、パネル型対空砲から繰り出される無数のビームが無惨にも突き刺さり火ダルマになって消えてゆく。
「キース隊長、機甲歩兵の準備は良いか」
<いつでも良いぞ、待ちくたびれて耐衝撃ジェルの中で泳いでいるぞ>
強烈なGに晒され思うように動けないはずなのに、モニターに映る機甲歩兵の猛者共はジェルの中でふざけ合っていた。アーレイはその姿を見て矢張り陸軍はどこの世界でも脳筋なのだと再認識したのは秘密です。
「敵艦、砲撃開始!」
高速移動する2隻は右に左に進路を変え、照準が甘い攻撃など恐るに足らない。もちろんこれがアーレイの描いた高機動戦艦の姿だ。きっとフォウルスターの艦橋でクリスは笑っているはずだ。そしてそろそろ隕石群を抜け、あの主砲を試すチャンスが訪れようとしていた。
「アーレイ艦長、会敵まで残り280キロまもなく隕石群を出ます」
「トリガーは任す旗艦以外に対し撃ち方始め!」
火薬を使わないとはいえ大口径の砲身が赤いビームを吐き出すと、グンと軽い違和感が伝わり、敵船に向かってビーム砲が一直線に伸びてゆく。
「着弾いま」
機関部を赤い閃光が貫くと同時に船体後部が膨れ爆散してしまい、その桁違いな破壊力に思わずアーレイの口角が上がる。
「拡散しても威力が凄いな」
烈火が放つ5本の拡散型ビームは巡洋艦のシールドを物ともせず、艦橋を貫くと灯が消えコントロールを失い漂流を始める。
「おーいコンドラトくんはまだ生きているか(笑」
<ま、ま待ってくれ、攻撃しないでくれ(汗>
奴の位置は掌握済みなので敢えてその戦艦だけは狙わず連絡を入れると、血相を変えたコンドラトが映し出される。たった2隻の小型戦艦で艦隊が全滅したことが信じられないようだ。
「敵船ジャンプコアにエネルギー充填確認!」
「行動不能にする程度に攻撃を開始、そのまま艦橋に突撃だ」
「トリム3度修正、発射!」
コンドラトが乗る戦艦の後方を赤いビームが貫くとリアクターに命中したのだろうか、噴射口が爆発を起こしエンジンの火が消え去ってゆく。
「各位、衝撃に注意!機甲歩兵出番だ会頭の身柄を確保せよ」
業火は速度を落としつつコンドラトが存在するであろう艦橋目掛けて突撃を敢行すると、バキバキと嫌な音をたて艦首が突き刺さり両脇のハッチが勢いよく開く。
<<コンドラトが乗る戦艦・艦橋内>>
「野郎ども突っ込むぜ」
耐衝撃ジェルがドバっと流れ出ると共に機甲歩兵が銃を構え、一騎、また一騎と飛び出してくる。
「わ、我々は降伏します」
「いいね、言わなくても要件はわかっているのだろう」
フォウルスターが突撃直後にハッキングを行いコントロールを乗っ取った事で救命艇が動かなくなりコンドラトは艦長室に逃げ込んだらしい。乗組員達は1人だけ逃げ出そうとしたのが癪に障ったのか一斉に指を指し「隠し部屋に入ってます」と教えてくれる。
「コンドラト、出てこないと艦長室ごと吹き飛ばしてやる」
キースは壁伝導スピーカーを使い降伏宣言を行うと諦めたのか、がっくりと肩を落としたコンドラトが姿を現すのだった・・。
<<業火・艦橋内>>
「クリス、業火と烈火は出来る限り極秘にした方が良いと思うのだが」
<ああそうれがいいな、尋問をするから戻ってきてくれ>
コンドラトはそのまませせらぎに転送され、破壊された戦艦と駆逐艦の生存者を輸送艦に送り残るのは証拠隠滅だ。フォウルスターの精密探査装置でカメラを特定した後はハッキングして消去すれば良いだけだ。
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アーレイ「全ての映像記録機器を探索、フォウルスターのレーダーを使え」
フェアリー「承知しました。コンピューターにハッキング後、消去作業を始めます」
「おう、どんどんやってくれ」
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1360台ものカメラが発見され消去作業の指示を出したアーレイはせせらぎに乗り移り、コンドラトVSクリスの様子を伺う事になる。
<<支援艦せせらぎ・応接室>>
「仲裁役の立場としては今回の損害保障契約を済ませれば開放してやる」
「なんだと、それだけでいいのか」
仲裁役として乗り込んだ以上、処罰に関しては商業連合側で執り行うのが筋だろうと考え、損害賠償の約束さえ結べば後を任せるつもりだ。コンドラトは拍子抜けをしたのか間抜けな顔をするが、クリスは眼光鋭くなり「次に同じことを行えば殲滅戦になるぞ」と脅しをかける。
「・・・・」
「なんだ不満か?俺は海賊じゃないぞ」
嫌味を言われ苦虫を噛み潰すような表情をするコンドラトだったが、これ以上文句を言い放つと状況が悪くなると踏んだのか、クリスの条件を飲むことになり正式な契約書にサインをするとそのまま輸送艦へ送り届けられ、今回の件はこれで一件落着することになった。
「アーレイ、予想以上の性能だな」
「そうだな、これでもまだ限界じゃないぞ(笑」
アーレイが考えついたこの高機動戦艦は3星団の常識をひっくり返し、長らく動かなかった戦いの歴史を動かす事になるとは今のところ誰も知る由もない。
ーー
<<機甲歩兵用・待機場所>>
「アーレイ指令入りまーす」
身柄確保を短時間で済ませたキースを労う為にアーレイは部隊が待機している部屋の中に入ると、ラングレーがビッシと敬礼して出迎えてくれた。
「みんなお疲れさん、キース隊長どうだった」
「ジェルはママに抱かれているみたいで、凄く気持ちよかったぞ」
キースが冗談を飛ばすと皆一斉にガハハと大笑いをする姿を見ると耐衝撃ジェルは好評だったようだ。
「補助バーが欲しいな、ムサイ男同士で絡み合いはもう勘弁だ」
「ギャハハ、そりゃそうだチェスターお前、滑って俺の股間に入り込んでいたもんな、危ないプレーかと思ったよ」
「なんだと!ラングレー、お前だって滑って転んだじゃねーか」
衝突の衝撃で絡み合っていた2人をモニター越しで目視してはいたものの、笑う余裕が無かったアーレイはここに来てその様子を思い出し吹き出しそうになったのは内緒です。
「アーレイ、今回の戦い方は斬新だった。戻ったら飲みに行こう色々話したいことがある」
「俺も突入の詳細を聞きたいから行こう」
こうしてアーレイとキースは杯を交わすことでより親密な関係に発展していくのだった・・。
宜しければブクマ、評価お願いします。




