戦艦できた!
戦艦完成!
改稿しました。
<<時は流れ3ヶ月後>>
焼くだけなのでぽんぽん建造できるとは聞いていたが、気がつけばしれっと2隻完成していた。そりゃほとんどの部品が規格品で確かに簡単に取り付けられるけど、それにしても早い。
<<デルタ軍・司令本部>>
「アーレイ、船名はどうした」
「もう決めているよ」
アーレイは考えていた名前をクリスに教えることになり、タブレットに日本語とデルタ語の両方を表示する。「業火」一点突破タイプ「烈火」が拡散タイプで、それと「支援艦せせらぎ」だ。
「聞き慣れない言葉だな、だが星団外言語に登録してある」
「俺にも馴染みのない言葉だ」
途中からキースが加わり、日本語の火のイメージで付けた艦名は奇抜に見えるらしく、微妙な表情を浮かべていたよ。そんな事をしていると性能検査部から業火と烈火のテストデータが届いた。
「凄い、予想以上だ・・」
添付された映像を確認すると業火と烈火は戦闘機と編隊を組み隕石群の中を軽く流していた。流石に急旋回の軌道に追従することは出来ないが、無人機とのテスト中に遊んでいたらぶつかった向こうは大破してこっちは無傷だった。
「これは新しい戦い方できるぞアーレイ、だがやっぱ小さいな」
20万トン級の戦艦と並ぶとブースターにしか見えないが、この砲身から吐き出される素粒子はデルタの旗艦100万トン級デウォルトの主砲2門分と同等だ。
「アーレイ、この戦艦小さいけど主砲はえげつないくらい強力だぞ」
「そうだよ、この発想はなかったでしょ」
「最初はどうなるかと心配していたが、これは使えそうだな」
実証実験の結果を見てクリスは喜び、キースに「これはな突撃艦だぞ乗りたいだろ」と教えると強面の眉がピクリと動き、「嬉しいのか」と笑いながら言い放つと黙って肩を揉んできたよ・・。
「だがなアーレイ、他の司令官からは際物呼ばわりされているぞ」
「何だと!」
クリスの所に各司令官からカッコ悪いだの、ブースターだよね、文鎮だろ、など性能が公表されて無いので見た目で嫌味を言われたらしい。アーレイとしては実戦投入して結果を出すしかないと心に決めたそうだ・・。
ーー
「アーレイ、初陣だぞ」
「おお、行くか!」
基本的なテストが終わった数日後、急遽勃発した紛争地域に支援艦せせらぎに業火と烈火を搭載し、フォウルスターと共にトレミー星団のラインスラスト帝国に向かうことになった。
<<到着直前>>
「今回は商取引が発端の小競り合いだ。我々は仲裁役としてカルネ軍と接触し平和的解決を目指す」
今回のいざこざは輸送艦の消耗品の輸出量を巡り対応に不満を持ったカルネ共和国が交渉すると偽り、戦艦で乗り付け供給量を増やせと要求してきた。しかし先の輸出分の代金が未納でラインスラストは困り果てデルタに仲裁を頼んだのが経緯だ。
「艦長ゲートアウトします」
直径300m程もある宇宙ステーションのような巨大な金属製のリングは、長距離特殊移動装置「ゲート」と呼ばれている。なぜ特殊かというとジャンプとは違い、エナジーボールと転移魔法陣を用いるためだ。因みに友好国の間だけで運用されている。そして支援艦せせらぎとフォウルスターが輪の中から姿を現す。
「刺激しないように半速前進」
クリスの命令が下り首都上空へと向かうと、その先にはカルネ標準型戦艦1隻と12万トン級巡洋艦3隻が対地同期軌道上に鎮座しているのが見えた。
「あらら、あちらさん砲身を展開してるし」
「アーレイどうする、攻撃すれば首都に被害が及ぶぞ」
砲身を首都に向けてはいるものの、エネルギーは充填せず脅しているだけなので、アーレイは現在審議中の「シグナルチャンネルを使い様子見」と返すと「やってみる価値あるね」と副官に指示を出す。因みにシグナルとはデルタ王国が考案し、全ての国が集まる”星団会議”に働きかけ議論の最中で無く間もなく採択される新たな交戦協定のひとつだ。
「デルタ軍、探査艦フォウルスターは仲裁のために当空域に派遣された。返答を待つ」
「従うかな」
「正式に採用されてないから、どうなるかわからん」
シグナルを発砲するとレーダーと作戦用モニターに映る艦船名の表示が色で示され、戦う意志があるか一目同然だ。グリーンは交戦の意思無し、ブルーは戦闘態勢、レッドは交戦の意志ありとされ、但し許可なく侵入した場合、支配地域はブルー、恒星圏内はレッドとみなされる。
「カルネ艦船シグナル発砲せず、コンタクト無し」
「うーんダンマリか、だが発砲はしない筈だ」
力関係で優越を決める獣人らしく艦船数を力に置き換え、自分達が勝ると判断したのか無視してくる。とは言え放置は出来ないので粘り強くコンタクトを取る指示をだした。
「調べたけど、ここまで強硬な手段に出た記録は無いな」
「推測だけどアデール女王の死期が迫っていることと関係あるだろうな」
アデール女王の寿命は残り20年を切っていると噂が流れ、自身もそう話したので本当なのだろう。しかし今だ次期女王は姿を見せず王は数百年不在だ。となると欲深い者は成果を手土産に我こそはと名乗りを上げたくて今回の騒動を起こした可能性が強かった。
「艦長、砲身に動きあり!」
コンタクトを取り続けているとウザく感じたのか敵意を向けて来る。即座にクリスが反応して警告を出すものの無視され、返答の替わりに素粒子砲が火を吹いてしまう。
「はぁ〜バカかな(呆」
一筋のビームがフォーレストの遥か上空をビューンと通過していく。コンタクトを取らずに警告射撃などありえないし即座に頭を抱え込む。
「アーレイ、あいつら馬鹿じゃ無くて、イカれているのか?」
「自分たちの方が強いと思っているな」
「見た目の戦力は弱くみえるからね、獣人らしいな」
アーレイは状況を打破するために「あの黒い奴の力を試す良い機会だ」と話すと「戦火を交えたければいいよ」と言われ早速転送室へと向かう。
「カルネ軍司令官に告ぐ、こちらデルタ軍クリス少佐だ返答されたし」
再度連絡を入れ会話のチャンスを作ろうとするが無視されてしまい。クリスは業火と烈火を出すタイミングを計っていた。だがここで意外な助っ人が現れる。
<こちらラインスラスト防衛艦隊ルーラ艦長だ、カルネ軍に次ぐこれ以上の発砲を行うなら攻撃を開始する>
事態が動き首都を向いていた主砲が外れ勝機を逃がすなと言わんばかりに、惑星の影に隠れていた防衛艦隊が姿を現しシグナルレッドで突っ込んでくる。画面に映るルーラは黄色味が強い金髪で燃えるような赤い瞳を持つ女性士官だ。超不機嫌なのか眼光鋭くクリスは関係ないのに睨まれていると感じてしまう。
<こちらはカルネ軍ワルテ艦長だ。デルタのクリスと話がしたい>
そして仲裁役のデルタにコンタクトを取るワルテが映し出されると、でっぷりと脂肪を蓄えたトラ族のおっちゃんだった。
「今更コンタクトを取りやがってクッソ繋げ!」
仲裁役との交渉に入りさえすれば攻撃は出来ないと考えたらしく、その証拠にニヤニヤとした下品な笑顔を浮かべていた。下心が丸わかりなクリスは腹立たしいが規則に則り交渉に入らなければならず襟を正すと「このボケさっさと帰りやがれ」と一蹴する。
<<転送室>>
アーレイは転送室に向かいながらブラッドと話していた。もちろん力の使い方に関してだ。
「なぁ、ブラッド力はどうやって使うんだ」
「君が相手を凝視し、何をしたいか考えればあとは俺が引き受けるので任せろ!」
初めて能力を使うのでブラッドはそれが余程嬉しいのか声のトーンが上がっていたよ。
「大丈夫かな・・」
一抹の不安が残る中、アーレイは「準備できた」と連絡すると、待ってましたと言わんばかりに光の粒子に変化してカルネの戦艦に送り込まれた。
<<少し前のフォウルスター・艦橋>>
「何故、俺と直接会わなければ駄目なんだ」
<交渉事は面と向かってやるもんだろ>
「そうか、それじゃ特使を送り込んでやるからそいつと話せ!」
交渉と言いながら船に乗り移れば身柄を拘束して要求を上げるのは見え見えだ。なのでクリスはカルネの戦艦にできる限り近づきアーレイの連絡を待っていた・・。
<準備できた>
連絡が入ると無言で転送許可のスイッチを押すのだった・・。
<<カルネの戦艦・艦橋>>
「デルタ軍アーレイ少尉だぞ(笑」
「・・・(ジト目」
突然、艦橋の真ん中あたりに光の粒子が出現すると、腰に手を当て斜めに立つアーレイが現れ、その太々しい態度をみてジト目になっていたのは予想通りです。
「おい、お前ら平伏せ!」
アーレイは頭の中で土下座でいいかなと考えると、その場にいる全員は頭や腹を殴られたようなズンと重たい衝撃が伝わると共に、黒の王の威圧が解き放たれ皆一様に顔面蒼白に早変わり。
ワルテ「グヘェ・・こ、これは」
乗組員「わわわ、黒の精霊様どうか鎮まりください」
口角が上がりきってしまうほどの壮観な風景としか言いようがない。そりゃ全員が頭を床にこすりつけてひれ伏しているのだから。それにアーレイが凝視するだけでガクガクと体が震え間違いなく直進性の強い威圧に晒され肝を冷やしているのが手に取るようにわかり、これはこれで面白いなと思ったのは内緒よ・・。
「己らは忠告を無視したな、そんなに死にたいのか?」
「いえ滅相もございません黒の精霊様」
さっきまで太々しい態度を取っていたワルテも同じく威圧に晒され顔面は真っ青でフルフルと震え、アーレイが何故無視したと問うが黙り答えようとはしなかった。次に「アデールの死期を悟っての行動なら貴様は死ね」と断罪すると本心を見抜かれたのか、表情が曇ると同時に微妙な殺気が漏れ始めゆっくりとホルスターに手が伸び始めていた。
「そうか、そんなに死にたいのだな」
「ふん、貴様が黒の精霊などではないわ・・・ガハッ」
亡き者にするため銃を抜いたワルテはいきなり吐血してその場に蹲るように倒れ絶命してしまう。危険を感じたブラッドが勝手に魂を消し去ってしまったらしく、アーレイは心の中で「チートやチート、チート過ぎるわ〜」と叫びつつ「ダメこれ絶対」と思わずにはいられなかった・・。
「黒の精霊様どうかご容赦お願いします、即座に全軍撤退いたします」
「そうか貴様は賢いな、ならばここで起きたことは全て忘れ記録映像も消せ!」
「承知しました!」
一連のやり取りを横目で見ていた他の者達は逆らう気など微塵も無く、副司令官らしき猿族の男が撤退命令を出すとすたこらさっさと尻尾を巻いて逃げていった。
<<フォウルスター・艦橋>>
「あはは、凄い力だなアーレイ」
「連絡前に転送するということは全て見てたな」
策士クリスはアーレイを送り込むとルーラとの通信を妨害して、飲み物片手に自席のモニターだけで一部始終みていたらしい。なので撤退命令が出ると同時にアーレイをフォウルスターに転送していた。
「簡単だったがこれはヤバいよ」
「俺は陛下には報告しないから安心しろ」
黒の精霊の力を持ってすれば星団征服など容易い事だと知ってしまった2人は、言葉には出さないが絶対に知られてはいけない秘密だと思い、互いに目を合わせ心のなかで確認する。そして用事も済んだし帰ろうと思った瞬間、ピンと電文が送られてきたことを知らせる音が響く。
「コーネリア様から電文が届きました」
<<問題解決ありがとうございます是非ともお立ち寄りください。コーネリア>>
「早速コーネリア様からお礼状が届いたぞ、こりゃ行くしかないな」
「この前、殆どお話し出来なかったから行こう」
コーネリアにお呼ばれした2人はシャトルに乗り込み、一路ラインスラスト帝国の総統府に向かうことになってしまう。
ーー
<<ラインスラスト帝国>>
ラインスラスト帝国は長らくアルナダ家が支配していたが中立戦争の責任を取り退任、当時人気絶頂だったヴェルツル家がその後を継ぎリュック総統は2代目として活躍中だ。
<<ラインスラスト総統府>>
「ありがとうございます。おふたりのお力添えがなければ大変なことになっていました」
「仲裁役ですのでお気になさらず」
「さあ、ここではなんですから中に入りましょう」
総統府の駐機場に降り立つとコーネリアが直々に出迎えてくれる。そして相変わらずの美貌を振りまき目のやり場に困るアーレイは、実はこの小顔で品が良い顔立ちが好みだとは口が裂けてもいえません。
「ありがとうクリス、アーレイ」
「お久しぶりです総統、アーレイが問題解決しました」
「初めましてリュック総統閣下、アーレイ・ウェブスター少尉と申します」
挨拶もそこそこ客間に案内されるとリュック総統直々の出迎えを受け、昼過ぎだったこともあり昼食の準備が整えられていた。彼は身長も高くイケメンでブラウンの少し長めの髪が特徴だ。最近髭を蓄えベテラン為政者の雰囲気が漂っている。
「アーレイ、礼を言う」
「リュック総統、友好国として当然の事をしたまでです」
「そう言うな、心ばかりの礼だ飯でも食っていってくれ、君らの船にも名物料理を届けたところだ」
初めての面会は食事をしながらになり、これは異例な事だとクリスに言われ、それだけこの国の窮地を救ったということだろう。それに終始コーネリアがニコニコとリュックを見守っていると言うことは、間違いなく彼女が主導権を握っているとアーレイは直感で感じていた。
「それでは一旦席を外すよ」
リュックには小競り合いよりあの装置の事を中心に聞かれ、秘密を隠しつつ説明を行い食事が済むと政務の為に席を外し少し緊張が解けるとコーネリアが「コホン」咳払いをする。
「お恥ずかしい話し中立国の手前、商行為が発端ですので武力行使が出来ず困っておりました。本当に助かりました」
「コーネリア様、この前のお礼も兼ねてと思って頂けたら幸いです」
本題に入るということはコーネリアが通商に関する総括責任者なのだろう。最後に軽く頭を下げ感謝の意を伝えて来る。
「あのような些細なことに比べたらとても足りません。ですがそういていただけると助かります(笑」
「困った時はお互い様です。お困りごとがあれば何なりと仰ってください(笑」
初めてあった時に見せた雰囲気や言動から育ちが良く良識がありこの人は信頼に値すると感じていた。それはコーネリアも同じらしく何かを期待するような目線でアーレイを見ていた・・。
「アーレイ様、私の妹のフローレンスは元気ですか、とても綺麗な子でしょ」
「陛下の後ろに控えている王女様ですよね・・」
時折、アイシャ女王の代理として後ろに控えているフローレンスの事を思い出そうとするが、ジェフとのやり取りで眼中に無く今を思えば確かに可愛らしい女性が立っていたような気がしていた。とは言え30歳ほど年下だよねと一瞬計算するが「ああ俺設定が24くらいだからか」と思い直す。
「うふふ、あのね貴方の話が出たのよ陛下とのやり取りが面白いですって」
「え゛何でわたし?まー確かし遠慮せずに喋っていますからね」
ここに来て歯に着せぬ物言いが1人の王女の気を引いたらしい。そしてクリスは「ほらみたことか」という顔をしていたよ。
「アーレイは全く遠慮せず喋るので、毎回ヒヤヒヤしています」
「ウフフ、それが良いらしいのよ、アーレイ様、一度《《お茶》》してあげてね」
「フローレンス様の事はよく知りませんし、私の情報は不要だと思いますよ」
この時クリスは内心ギョッとしていた。それはコーネリアが”妹推し”と取れる発言を述べた事だ。王族の《《お茶に誘え》》の意味は取り敢えず《《縁を結ぶ》》と同義語なので肝を冷やしていたが、当人の本人は興味が無いのか謙遜していたので高まった動悸が鳴りやみホッとする。
「彼女も成人したから未来を考えているのよ、うふふ無理にとは言わないわ」
意味深な笑顔を浮かべるコーネリアは嬉しそうに語り、姉として直感が働いたそれはアーレイが既に意中の人のような言いぶりだ。言われた本人は次回の謁見のときに嫌でも意識することだろう。そしてそろそろデルタに戻る時間を迎える・・。
「ジェフ陛下に宜しくと伝えてくれ」
お話も終わりそろそろ御暇しようとする頃を見計らいリュックが現れ、お土産に新型の燃料制御装置を持っていけと言われてしまう。断る事も出来ず2人はそのままフォウルスターに戻っていくのだった・・。
宜しければブクマお願いします!




