ドナート
はい、悪人出てきますよ〜。
楽しそうな4人をじっと防犯カメラのレンズが見つめている。そう、彼女を監視していたのはキースだけではなかった・・・・。
1時間程前・・。
ドナート)「おや?ルナのやつ珍しいな、こんな時間に繁華街に出歩いて何してんだろう」
監視していたのはドナート、彼は常に監視しているわけでは無く、時折り所在を確認する程度だったが。
ドナート)「よし、反応がある近くの監視カメラはこのあたりかな、この交差点の監視カメラを動かしてっと」
ルナ達は既に1時間ほど前に店に入っていた。
ドナート)「あれ、いないな~、まだ店の中か・・・」
1時間後。
ピピ、追跡していたモジュールが動きアラームが鳴った。
ドナート)「お!動いた動いた!」
レンズをズームし反応のある所を探すと、店の前で楽しそうに話している4人を見つける。
ドナート)「ん?なんだルナの兄弟達か・・誰だ!あいつは誰だ!それもデルタの軍服じゃないか!」
デルタの軍服を見て驚愕の表情になっているドナート。
ドナート)「見たことない男だな、ルナはなぜ兄弟達とこんな所で会っているんだ・・・・それにしてもルナは楽しそうだな、あんな笑顔見たことないぞ!彼氏か?それとも・・・・スパイ・・いや制服でスパイはないだろ」
疑心暗鬼、思惑、疑惑が脳内を駆け巡るドナート。
ドナート)「デルタ軍は今から確認すればいいとして、ルナは出勤途中捕まえればいいか・・」
諜報部特有の猜疑心で自分の行動を考えていたドナートだった。
ーー
キースと別れ、家に戻ったルナ達。
セナ)「ねーちゃんいい男だったね」
ルナ)「でしょー」
満面の笑みのルナ。
セナ)「それでー、進展はあったの」
ルナ)「そんな、すぐにある訳ないでしょ!知り合ったばかりよ。それに・・・」
「ねーちゃん、俺たちのこと気にせず出かけて良いんだよ。飯とか適当に作れるから」
「だって、洗濯とか色々あるから無理よ」
「そう?洗濯も掃除もできるよ」
「なんでいきなりそんなこと言うのよ、日頃やらないくせに」
「だって、キースさんと知り合ってから、ねーちゃんすっごく明るくなったもん」
「・・・・・・・」
虚を突かれたようにポカンとしているルナ。
セナ)「だから、俺たちのことは程々で良いから」
ルナ)「・・・ンンン」
弟の言葉で今まで抑えていた涙が溢れてくる。
セナ)「泣くなよねーちゃん」
ルナ)「だって、だって、あんた達の事を・・・・」
「まだ子供だけどねーちゃんが働き始めた歳なんだよ、だから大丈夫だからキースさんともっと会って良いんだよ」
「なんで、なんで、あんた達に背中を押されなきゃなんないのよ!子供のくせに!」
「だって見てらんないもん」
「もう!」
彼女は弟達が思いのほか大人になっていた事に初めて気がつき、自分の事を心配され動揺していた・・・・。
セナ)「ねーちゃん、ねーちゃん」
ルナ)「なによ!」
「背中を押されるって、やっと白状したね」
「・・・・何よそれ」
「好きになった事を認めるって事でしょ!」
「・・・・」
「ねえーちゃん!」
「そうよ!私はキースさんの事が好きなのよ!」
「やっぱそーだったんだ!」
「もう!もう!このマセガキ!!」
「うわ、白状して逆ギレしたよ」
「ウエーン!!」
「ほら、ねーちゃんこれ使って」
「・・・ありがとう」
チーン!弟にティッシュを渡される。
セナ)「いつも面倒見てくれてありがとう、ねーちゃん」
ルナ)「もう・・・・ばか!」
客観的に見ている弟達に、自分の思いを見透かされていたルナちゃんだった!
ーー
諜報部内、残業中のドナート。
ドナート)「いまデルタから来て、入国管理を通過した軍人はどのくらい滞在している?」
部下)「はい、整備士も含めますか?」
「いや、整備関係は抜いてくれ」
カチャカチャ、検索を開始するとすぐに判明した。
部下)「そうですね、整備士を抜くと・・いませんね」
ドナート)「本当か?」
「はい、整備士も燃料制御装置の研究のために来日していて、5人全員ホテルにいます」
「そうか・・・それなら総統府の要人出入りリストは?」
「はい、デルタ第9艦隊所属の船が入港しています。下士官2名と士官2名の合計4名です」
「なんだと、第9艦隊だと名前はわかるか?」
第9艦隊と聞いて驚くドナート。
部下)「秘密なのか、船名すら伏せてあります」
ドナート)「うーん、閣下に直接会いに来たのか・・・」
「これ以上の情報は閲覧制限されていますね」
「閲覧制限って完全にお忍びだよな?まさかアーレイじゃ無いよな・・・乗ってきた船の画像は見れるか?」
「ええ、遠目でしか確認できませんが、少しお待ちください」
カメラを操作し、パッと画面に映るのはベクスターが映し出された。
部下)「これです」
ドナート)「なんじゃこりゃ?」
そう、機体整備が済んでもピンキー画伯の落書きはそのままだ。
部下)「これ軍用機ですか?」
ドナート)「わからん」
「個性的ですね」
「画像検索で機種は判明できるか」
「うーん、軍登録機でしたら判明しますが」
「個人所有?」
「わかりませんが、可能性としては個人でしょうね」
「調べてみてくれるか」
「カチャカチャ、軍登録はしていませんが、第9艦隊に仮登録されているようです。えーと機種名はベクスターですね」
「仮登録?」
「はい、レンタルというか名義が個人だと思います、それではマニアのサイトを検索しますね。カチャカチャ、出ました」
「わかったのか?」
「はい、マニア間では結構有名な機体のようです」
「そうなのか」
「はい、元々王族専用のプライベートジェットで、払い下げられた機体だそうです」
「なんでこんな所にいるんだ?持ち主は?」
「それが、詳細な情報が少ないようです、船籍はクーン精霊王国の登録がされていますね」
「クーン・・謎だな」
「ええ、スペックも秘密らしく、詳しい人が解説していますがエンジンは戦闘機用らしいですよ」
「と、言うことは極秘任務なのか・・」
「どうします?もっと調べますか。期待はできませんけど」
「ああ、もういいよ。ありがとう」
「はい」
ーー
翌朝、ルナは出勤途中に止めてあったシャトルから声を掛けられ呼び止められる。
ドナート)「ルナ!乗れ」
ルナ)「エッ?ドナート中尉」
「早く乗れ管制塔まで送る」
「は、はい」
ドアが開き乗り込むルナ。
ルナ)「おはようございます、どうしたのですかこんな朝早くから」
ドナート)「少し聞きたいことがある」
「なんでしょう」
「昨日、繁華街でデルタの軍人と会っていただろ」
「えっ?、何で知っているの」
昨日の事を知っているドナートの言葉に驚くルナ。
ドナート)「彼氏か?だから愛人を断るのか!」
ルナ)「何故知っているのでしょうか」
「それはいいから、彼氏か?」
「いえ、まさか。以前シャトルに轢かれそうになった所を助けてもらって、時間が出来たのでお礼の食事に招待しただけです」
「嘘をつくなよ」
「嘘はつきません、なぜ知っているのですか?」
「不審者を探していたらヒットしたんだよ」
「不審者?」
「入国記録が無い軍人を探していたんだ、それで名前は?」
「なぜ言わなければならないのですか?個人的な付き合いですので、私の口からは言えません」
「諜報部で働いている俺に言えないだと」
「ですから中尉には教えません、それを調べるのがお仕事ですよね」
「・・・・・ふん!可愛くない女だ」
「愛人を強要しようとしている貴方には言われたくないです!」
「なんだと、提案と言ってくれ」
「そんな提案には乗りません、あの話をまた蒸し返すのでしたら次は情報は持ってきませんよ」
「・・・・・まあいい。到着したぞ」
嫌な表情のドナート。
ルナ)「ありがとうございました!!」
嫌な雰囲気のまま車を降りるルナ。走り去るシャトルに向かって”あっかんべー”をしていた。
ルナ)「あー、朝から不愉快だわ。ふん!けどキースさんに迷惑がかからなければいいんだけど・・・」
ーー
ドナート)「おはようございます総統閣下、付かぬことをお聞きしますがデルタの軍人が来ていませんか?」
リュック総統の所に出向くドナート。
リュック)「それがどうした」
ドナート)「いえ、街中で不審な動きをしていたので諜報部として報告に来たのです」
「不審?」
「はい、管制管理部の女性事務員と昨日会っていた所を発見したので」
「君たちには知らせていないけど、重要な任務で来日しているので気にするな」
「そう言われましても」
「この私が保証すると言っているのだよ、不満なのか?」
「いえ、その様なことはございません」
「彼らは有能だから大丈夫だよドナート中尉」
「わかりました、失礼します」
諜報部に戻る途中のドナート・・・。
ドナート)「流石に総統は名前を口にしなかったな・・・・多分アーレイだ間違いない何か企んでいる。そうか・・と、なると昨日の軍人は直属の部下だよな。アーレイとクリスの顔は検索すればヒットするから他のやつか、諜報部に戻って調べるか・・・」
ーー
昼休み。
ルナはキースに連絡をしようと考えスマホを弄っていた。
ルナ)「あっ!朝の言葉を思い出す」
<<不審者を探していたらヒットしたんだよ>>
ルナ)「私、ドナートに監視されるかな?それならモジュールもスマホも使っちゃだめだよね・・・・・嗚呼、どうしよう。なんとかしてキースさんに連絡しなきゃ・・・」
昼ご飯もそこそこに済ませ悩んでいるルナ。
ルナ)「あっ!そうか家のタブレットをリモート操作して、違うアドレスから連絡すれば大丈夫よ!弟が使う時間帯ならさらに大丈夫!流石にそこまで調べないよね・・・よし夕方連絡しよう!!」
あの手この手を考え最善手を導き出したルナ。父親譲りの頭脳をフル回転させていた・・・。
ルナ)「よし!私やればできる子!!」
ーー
諜報部・・。
ドナート)「おい、第9艦隊でアーレイと一緒に行動する兵士はわかるか?」
部下)「はい、有名な所でキース中尉とコロン少尉ですね」
「この映像と顔認識ソフトで検索してくれ」
「はい、カチャ、カチ、ピピ!キース中尉ですね」
「アーレイとクリスはどうなんだ」
「認識阻害を使用しているのか、ヒットしませんね」
「わかった、ありがとう」
「いえ」
自分のデスクに戻り、集めた情報を整理し考えるドナート。
ドナート)「総統が秘密裏に何かをデルタに頼んだとかんがえると・・」
メモ用紙にこれまでの情報をかき出す。
<第9艦隊所属の元王族専用の不明機>
<士官2名に、キース、ルナ>
ドナート)「キースが来ているって事は、間違いなくアーレイ、もう一人の士官はクリス、間違いない、クリスとアーレイが来ている。秘密裏に捜査してルナと接触しているキースか!」
思考を再整理しアーレイ達の行動を予測する。
ドナート)「マズいぞマズいぞ!あいつら絶対スパイを探している。ん?でもなんでルナの事が分かったんだ?それとも手あたり次第に接触しているのか。うーん、そこがわからん」
軍服姿のキースと親密なルナの姿を思い出し悩むドナート。
ドナート)「???何故親密なんだ・・弟たちも一緒にだ、それも軍服のまま・・・目的がわからん、取敢えずルナとキースを監視を強化するか・・・」
腕を組み深く考え込む。
ドナート)「だがキースはどうする、総統に手出し無用と言われている手前何もできんぞ、そうだ、2人がまた会ったらキースをスパイ容疑で逮捕、ルナも協力者として逮捕?いや彼女が俺の事喋る前に・・」
とんでもない事を考え付くドナート。
ドナート)「おい、管制部にいるルナって女をいつもより重点的に監視しろ」
部下)「24時間張り付きますか」
「ああ、頼む」
「わかりました」
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