出会いは突然やってくる。
ラインスラスト編、メインヒロイン登場。
聞きたくもないブリットの喘ぎ声に精神を削られたキースは、これ以上は無駄だと判断し、宿に戻りアーレイに定時連絡をする。
キース)「おいアーレイ!あのお姉さんは商業連合エステンの不倫相手だったぞ」
アーレイ)「そりゃ悪かったな。もう一人の若い方を調べてくれ」
「えーマジ?他の仕事ないの?」
「今は無いな。と言うか出番は当分無い!」
「ちぇ!はっきり言いやがって」
「じゃ、俺が代わりにやろうか?」
「お前忙しいだろ」
「まぁ、身体がもう一つ欲しいね」
「分かったよ俺がやるよ。あとエステンとお姉さんは人間至上主義のメンバーだったよ」
「あら、意外な繋がりが分かったんだ。一応成果だねキース!」
「・・・・・フン!」
「そう拗ねるな、人間至上主義はここじゃ活動出来ない事になっている。まとめて逮捕するから」
「はぁ~、そうしてくれ」
ーー
管制管理棟内の喫茶店。
女の子)「はい、これです」
若い女の子が小さなメモリーカードを差し出すと、受け取った男はすぐさまケースに入れ胸ポケットに仕舞う。
男)「ルナ、いつも船舶情報ありがとう」
ルナの容姿は母親譲りの大きな青い目が特徴の可愛い顔立ち、髪はブラウンのショートカットのそれがスレンダーボディーと良く似合っているボーイッシュな女の子だ。
ルナ)「いえ、色々助けて頂いていますので、ドナート中尉」
ルナの相手をしているドナートは諜報部に勤務する普通のオッサン。歳は40前、顔はブサイクなわけでもなくイケメンでもない。一目見ても捉え処の無い顔は諜報部員に最適だ。勿論身長も175㎝位で体形も至って普通。
ドナート)「助かるよ、希少金属を運んでいる船の詳細は諜報部でも、上層部の許可が無いと見れないんだ」
ルナ)「そうなのですね、私には良く分かりません」
「それで、この前話した件は承諾してくれるか?」
「その事は前回お断りした筈です!」
「月に10万じゃ不足なのか?」
「金額の問題ではありません!」
怒り口調のルナはあからさまに嫌な表情をしている。
ドナート)「そう怒るなよ」
ルナ)「私は弟達の面倒を見るので無理です。それと”愛人”には抵抗があるとお伝えしました」
「この仕事を誰が世話したと思っているんだ」
「それはそうですが、身体を売るようなことは出来ません」
「強情だな、来月から仕事がなくなっても良いのか?」
「それは困ります」
「なら、愛人になれよ」
「・・・・・・少し考えさせてください」
「良い返事を待っているよ。君は機密情報を俺に渡したんだ、ここを辞めたらどうなるかわかってるよな」
「脅迫ですか?」
「まさか、提案だよ」
「・・・・・」
「毎週相手しろとは言わない」
「そんな問題ではありません!もうこれ以上お話しすることが無いなので失礼します!!」
あからさまに不機嫌な顔をするルナはその場から逃げ出したいのか、そそくさに立ち去る。そのルナの後姿を不敵な笑顔で見送るドナートは・・・。
ドナート)「強情な娘だ・・だがもう一押しで落ちるかな」
ーー
少し訳ありな二人の関係は・・・。
ルナは、父親が戦争で亡くなり葬儀が済むとすぐに母親は浮気相手の男と蒸発。見かねた親戚がルナたちを引き取り数年間一緒に暮らしていたが、彼女が15歳になると弟2人を連れ自立、バイトなどで食いつなぎながら彼女一人で養っていた。
父親の友人だったドナートは、仕事が見つからず困っているルナの事を聞き今の職場を斡旋した。真面目で仕事熱心な彼女はドナートに情報を漏らしていることに疑問を抱いていた。だが世話になっている手前深く聞くことはできず、更に愛人になれと言われ悩んでいた。
ーー
そんな嫌な事があった今日は、いつもより重い足取りで歩く彼女をキースは尾行していた。既に3日も後姿を見ているキースは彼女の変化に気が付いていた。
キース)「。。。(あれ?いつもと違うな。足取りが遅い・・・」
ルナは少し俯き、考え事をしているのかゆっくり歩いていた。そんな彼女は交差点に差し掛かると信号も見ずに横断歩道を歩いている。
キース)「。。。(いつもの彼女は事務棟を出ると、急ぎ足でスーパーに向かうのだが・・・」
ルナ)「ボー。。。」
歩行者信号は”赤”だ!シャトルが彼女に猛スピードで近づいて来ていた。
キース)「ヤ、ヤバい!!」
ザッ!、バシュー!50m後ろから尾行をしていたキースはステルスを解除、ブーツをスピードモードに変え、彼女に向かって猛ダッシュ!する。
キース)「間に合え!」
バッ!キャ!チチッーチッー!後ろから腰に手を回し、体を捩りなが背中を下に押し倒すと、間髪入れずに頭上をシャトルが通過する。キースのシールドが反応して「ブルーの光」が2人を包み車体と擦れる音がする。
ルナ)「わわわ・・」
目の前に見えるのはシャトルの底面だ。
キース)「ギリギリだ」
ブーン、シャトルはそのまま走り去り横断歩道には倒れた二人がいた。彼女は一瞬の出来事で何が起きたの理解できないのか、呆然と目を大きく開き起き上がるキースを見ていた。
ルナ)「。。。。(呆然」
そのキースは周りを確認すると素早く彼女を抱きかかえ歩道に戻る。
ルナ)「ひゃ!」
ルナは可愛い悲鳴をあげ、なすがまま抱っこされている。
キース)「怪我は無いようだな」
ピッピ、ルナを立たせ、怪我の確認のためにメディカルスキャンをする。
ルナ)「あ、あ、あの、私・・・」
キース)「君が赤信号を無視してシャトルとぶつかると思ったから、咄嗟に守っただけだ」
「す、すみません考え事をしていたら・・・」
「いいよ怪我が無ければそれでいいmもう大丈夫だよね」
「は、はい」
「じゃ、俺はもう行くよ」
「駄目です待ってください。守って貰ったお礼も済んでいません」
「気にするな」
「せめてお名前だけでも」
キース)「・・・・(あーあ、監視対象者を救っちまった!どうする?アーレイなら上手く仲良くなって情報を引き出すよな・・・」
ルナ)「あのー」
「・・・・キースだ」
「その恰好とあのシールドは軍人さんですよね」
「そうだ、デルタ軍所属だ」
「父も軍人だったんです。これも何かの縁ですね、本当に有難うございます」
「いや、当然の事をしただけです」
「ここじゃなんですから、お時間があるのでしたらお礼にお茶でもいかがですか?」
「・・・・君は大丈夫なの?」
「はい、少しくらいなら」
「それじゃ、お言葉に甘えて」
「はい、是非そうしてください」
キースは瞬時に考えた結果、対象者の背後関係を調べる為、彼女の提案に乗ったのだった。そして、近くのカフェに入る2人。注文したコーヒーを一口飲むと、ルナから切り出してきた。
ルナ)「私はルナと申します。キースさん本当にありがとうございました」
キース)「何か考え事でもしていたのですか?」
「ええ、今日少し嫌な事が有りまして、いろいろ考えていてボーとしていました」
「良かったですね近くに私がいて」
「そうですね、あのまま死んでいたら弟たちが路頭に迷う所でした」
「失礼ですが、両親が不在なのですか?」
「はい、父は戦死、母はいなくなりました」
「それは大変ですね、早く帰らないと弟さん達がお腹空かせて待っていますよ」
「そうですが・・助けて貰ってお礼をしないのは流石に心苦しいのです」
「まあ、そうですね・・」
「所でキースさんは何故この様な場所にいたのですか?」
「実は任務中でして・・詳細は言えませんが調べ物をしていました(言えね〜、絶対言えね〜」
「そうなのですね。デルタの軍人さんは大変ですね!ラインまで来て調べものですか〜」
「はは確かにそうです。アーレイは人使いが荒いからな」
「アーレイ?」
「ああ、同じ仲間です、頼もしくて面白いやつですよ」
「軍の仕事と言っても楽しそうですね」
「ええ、奴が来てからとても充実しています」
「そうなんだ、私なんか書類を見て渡すだけですから、凄く単調で面白味が全く無いですよ」
「それも仕事ですからしょうがないです。稼がないと生きていけません」
「私の仕事は簡単な事務処理ですから成果が出なくて中々昇給しません」
「それならいっその事、デルタ軍で働きますか?面白い部署紹介しますよ」
「あら、勧誘ですか?」
「はい、真面目な方はいつでも歓迎します。ルナさんみたいに頑張っている方はすぐに昇進しますよ」
「そうですね・・・できれば転職したいです・・弟達がいなければデルタに行ってみたいな〜」
彼女は現状から逃げ出したいのかルナは”本音”をつぶやいていた。そして少し暗い顔になりそれを読み取ったキースは即座に・・。
キース)「それじゃ、連絡先教えますね!いまモジュールに送ります」
ルナ)「は、はい!」
意表を付かれたルナだが、無意識に助けを求めていたのか快諾する。
そしてキースはルナと検索すると中空画面に <Luna> 表示され、自分の連絡先を送る。
ルナのモジュールに<Keith / contact information>と表示され <receive YES/NO” >の表示が出たので <YES”>を選択。
ピッピ、完了を知らせる電子音が響く。
ルナ)「はい、受け取りました!」
キース)「まだラインにいますので何かあれば連絡下さい。もちろん転職願いでもいいですよ」
「わかりました、わたし友達少ないからすぐ連絡しちゃいますよ」
「良いですよ、私もラインには友達いませんから」
「キャハ、私が最初ですわね」
「そうですね。出会いは突然ですか?」
「ロマンチックですね〜、事故寸前に救った女の子と友達になるって恋愛小説みたい!」
「はは、それは若いイケメンが前提ですよ」
「あら、キースさんは精悍で顔に傷もあってカッコいいですよ」
「そうですか?みんなに怖い顔って言われます」
「父が軍人でしたからわたし免疫があるのですかね?人間見た目じゃわかりませんよ〜」
「そう言ってもらえた事は無いですよ、ハハ」
「あの、わたし、さっき・・・・・重くなかったですか?」
少し恥ずかしそうに聞いてきたルナ。
キース)「ルナさん軽いですよ」
ルナ)「良かった。初めて父以外に抱っこされました。もう恥ずかしい!」
「緊急事態ですからカウントしなくていいと思います(?何故だルナの目が輝いているぞ・・・」
「初めてがアレですから一生忘れないです。フフフ」
「そりゃ衝撃的ですからね」
「あー、久しぶりに仕事以外の会話が出来ました。ありがとうございます。もうそろそろ行かないと」
「そうですね、弟達が待っていますよ」
「キースさん、それでは失礼します。本当にありがとうございました」
彼女は深々とキースに向かって頭を下げる。
キース)「ちゃんと前向いて歩いて下さいね」
ルナ)「はい!」
カフェを出でる2人。別れ際の彼女は「ニコニコ」していた。さっきの暗い表情はどこかに置いてきたようだ。
ルナ)「さよなら〜」
キースは名残惜しそうに彼女の背中を見送る。
キース)「もう今日はもういいかな・・」
そして彼女が見えなくなると踵を返し歩き出す。
キース)「可愛い子だったなー」
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