覚悟
残されたもの達は覚悟を決めます。
島に残った15人は輸送艇に乗りレティシア収容所に移った。そこで改めてルドルフ達と対面する。
ルドルフ)「君たちはこれから、ここで生活してもらう」
元捕虜)「下士官達はもういないのですね」
人影が全く見えないレティシア収容所。
ルドルフ)「ああ、ここで規律正しい生活をして元気にディスティアに帰還したよ」
元捕虜)「そうですか・・」
「仕方がないんじゃないのか、君たちの行いが今の結果を導き出した」
「はい、そうですね。そう言われると反論すらできません」
「今から変わればいい、やり直すのに年齢は関係ない」
「はい・・」
現実を突きつけられ不安しかない未来に歩き出そうと覚悟を決めた士官達。
ルドルフ)「畑仕事したい奴は今までの畑を使用するのもよし、街に働きに行くのも自由だ」
元捕虜)「わかりました、ありがとうございますルドルフ准将」
「これは女王の餞別だと思ってくれ。施設利用料金は取らない方針だ」
そのレティシア収容所は規模を半分程に縮小し、快適に寝泊りできるよう改装していた。
元捕虜)「ありがとうございます。我々が働く場所はあるのでしょうか?」
「いくらでもあるよ、就職に関しては斡旋もできる。ただし獣人達と同じ環境で働くことになる」
「ちなみにルドルフ准将はどこで働くのでしょうか?」
「今回、クーンに来た乗務員は反抗的なメンバーだ。まとめて抹殺対象になったことでディスティアから完全に離脱することにしたよ」
「我々も国籍はクーンです」
「そうだよ、俺たちは進んでクーンの国籍をもらった。働く場所はクーン王国軍だ」
「なんと、デルタ陣営に加わるのですか?」
「そうだ、新しい艦隊の総指揮官だ。下士官は経験を生かした場所に配属される」
「私たちも軍に入れますか」
「それは君達の行いで変わるんじゃないかな。ディスティアを捨てる勇気があるかないかだ」
「・・・・・・」
「考え込む士官達」
「君達の国籍は総統閣下によって破棄されたので復帰すること不可能だ。しかし我々は自らクーンに加わったこの違いは大きいぞ」
「そうですね、士官の職はないですよね」
「ああ、いきなり士官は獣人達が許さない」
「信頼と言うか実力が無いと言う事ですか」
「はっきり言えばそうだ、デルタの情報を持ち出す危険性もあるしな」
「どうすれば良いのでしょう」
「家族を連れてくれば多少は信頼されると思うが」
「ルドルフ准将のご家族は?」
「勿論クーンに来ている。現在、女王の秘書をやっているよ」
「初めからディスティアを裏切るつもりだったのですか?」
「まさか違うよ。家族はアーレイ少佐が勝手に連れてきた」
「誘拐ですか?」
「結果的にはそうだね、それじゃ詳しく話そうか?」
「はいお願いします」
「俺は2回目の交渉に行く際、アーレイ少佐の暗殺の命令を総統から直接受けた。他の暗殺者と共に挑んだが結果失敗、そして帰国したら諜報部に尋問を受けたよ」
「准将を信頼していないのですか」
「疑い出したらキリがないだろ。あの総統だぞ」
「ええ、確かに」
「そして家族は全員失踪。総統は国内世論に配慮して君らの国籍を放棄。最後の交渉に私と反抗的な士官をを選び、帰りに抹殺するつもりだった」
「すごいバランスの上で全てが決まったのですね」
「そうだよ、アーレイ少佐が家族を誘拐しなかったら、私は何かしらの罰を受けるか、不敬罪を適用される可能性があったのだが、家族を誘拐して何の要求も無いのでアーレイ少佐の考えが読めず躊躇したんだと思う」
「うわぁ」
引き気味の元捕虜。
「結局、俺を利用して何か大きな事を計画していると邪推したんだろうな。それで反抗的な下士官と共に抹殺を考えたのだと思う」
「本当に凄いですね、けどディスティアで誘拐を行うアーレイ少佐って馬鹿ですか?」
「行動力には脱帽するよ、それも俺の為にわざわざ敵国に侵入するんだぞ」
「そうですよね、普通そこまでは考えませんよね」
「だがな、アーレイ少佐の立場から見たら実は全然違っていたんだよ」
「なあ、アーレイ少佐」
アーレイ)「そうだよ、俺はルドルフを助けたくて家族を説得して連れてきただけなんだ」
元捕虜)「はぁ?敵国の将校をですか?何のために?」
「それはね、殺すには惜しい男だから」
「へっ」
「家族を俺が誘拐すれば総統は躊躇すると考えた。要求さえしなきゃ考えが読めないからね」
「・・・・・アーレイ少佐、何を考えているのですか?」
「星団統一」
「・・・・・・」
「だからー、有能な指揮官は死なせたくなかったの。敵味方関係ないんだよ俺にとっては!わかった?」
「いえ、全くわかりません。意味不明です!!」
「現にルドルフはクーンの指揮官になった」
「そう言われたらそうですね」
「フローレンス、中々理解してくれないよ、どうしたらいい?」
フローレンス)「はい、当然の反応だと思いますが」
アーレイ)「ふん!」
ルドルフ)「なあアーレイ少佐どうするんだ彼等は?」
「自分達で決めるだろ、ここから先は知らん」
「そうだな・・・で、君たちはどうするのだ?」
元捕虜)「少し、考えたいです」
ルドルフ)「家族はいるのか?」
「いますが、私は嫌われていますのでクーンには来ないと思います」
「そうか、他の連中は?」
「独身ばかりです」
「私の家族もクーンには来ません。獣人を嫌っていますから」
「そうか、それならゆっくり考えろ」
「アーレイ少佐、金はどうする」
アーレイ)「士官の身代金900億はクーンが貰い受けたい、残りは君たちで考えて使ってくれ」
ルドルフ)「わかった、それでいい。アーレイ少佐、本当に色々ありがとう」
「それじゃ城に戻るとするか、ルドルフ乗っていくだろ」
「ああ頼むよ」
「じゃ行こう」
城に戻りアデールとお茶をする4人。
アデール)「アーレイ様お疲れ様でした」
アーレイ)「うん、やっと全て済んだよ。当分の間ラーには引き続き監視はしてもらうけどね」
「ラーは働き詰めなので、適当に交代要員を出します」
「それと、士官の身代金900億はクーンのために使ってね」
「えっ良いのですか?」
「デルタには国籍取得とその後の運転資金に必要だから渡したと報告するよ」
「ありがとうございます」
「それなりに迷惑をかけているから、ラー達には臨時ボーナスでも出してあげてね」
「はい、そうします。それと休暇も出そうかと考えております」
「そうね、そのくらい手厚くしても良いと思うよ」
「ルドルフも資金が必要ならアデールと相談してね」
ルドルフ)「おう、良いのか」
アーレン)「無駄に増強しなきゃ大丈夫だよ」
ルドルフ)「そんなことせんわ」
フローレンス)「ルドルフ指令はアーレイ様と違って慎重ですからね、色々と大胆なのです」
アーレイ)「フローレンス、俺は無謀なのか、なんか君に言われたくないわ」
「どう意味ですか!」
「さあ、デルタに帰ろう」
「もう馬鹿!」
「・・・・・・」
アデール)「相変わらず仲がいいわね」
ルドルフ)「この二人は1ミリも進化していないな」
アーレイ)「こら!ルドルフ」
「事実だ」
「・・・・・」
「ほらもう行くんだろ」
「・・・・そうだな」
駐機場に移動して見送りに来たルドルフに、アーレイは手をヒラヒラさせている。
アーレイ)「クーンを頼むよ」
ルドルフ)「わかった」
アーレイ)「じゃ、俺はもう行くよ、さあ行こうフローレンス」
フローレンス)「はい!」
ベクスターに2人が乗り込むと、エンジンがスタート。キーンと甲高い音が響く。
ポコ)「発進するナノ!」
アーレイ)「よろしくねポコ」
「ナノ!」
エンジン音が高まる中、リビングルームの椅子にゆったり座っているアーレイとフローレンス。
アーレイ)「君がクーンに行っている間に、不治の病のニュースが流れている筈だ」
フローレンス)「わかりました。冷凍睡眠は明日ですか?」
「いや明後日だ。準備が必要だからね」
「それじゃ最後まで2人きりで過ごしましょう」
「そうだね、そうしよう」
「はい!」
デルタに到着、早速、陛下に報告の為に直接向かう。
アーレイ)「陛下戻りました」
ジェフ)「ご苦労だったアーレイ。ところでフローレンスの事だが本当なのか」
「はい、私より医者の見立てが正しいかと」
「そうだな」
「医療技術が上がるまでの我慢です」
「わかっておる」
「報告があります、20隻の古い戦艦の処分についてです」
「なんだ、古い船をどうするのだ」
「クーンが貰い受けます」
「なんと、アデールが戦力を持つと、増強すると」
ものすごく驚くジェフ。
アーレイ)「はい、決心しました」
ジェフ)「今まで戦力増強に否定的だったのにどうしてだ」
「捕虜事件で士官を引き取ることで莫大な身代金が入った事と、獣人たちが戦力増強を望んだ結果です」
「何で急に望むようになったんだ?」
「私がスカウトしたことで刺激を受け、軍関係に働くことを希望する獣人が増え、自分たちの国は自分たちで守ると言う風潮が生まれたそうです」
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フェアリー)「上手いなー、真実に嘘を混ぜると信じるのですね・・・・・」
アーレイ)「何か言ったか?」
フェアリー)「・・・・・・」
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ジェフ)「だが上位の士官を送るほど余裕は無いぞ」
アーレイ)「はい問題ありません、人間の総指揮官はもう決まっています、既に活動を開始しました。もちろん有能な士官です」
「おい、この展開は悪い予感しかしないのだが、誰だそんな有能な奴はクーンにはいないだろ」
「そうですか?陛下も会いましたよ。”陛下の苦労”が分かったって言ってました」
「まさか・・(汗」
「はい、そのまさかのルドルフです?」
「おい、敵国の将校だぞ」
「ええ、それは昨日迄の話です。いまはクーンで家族と暮らしてやる気十分です」
「詳しく聞きたく無い!」
「あら珍しいですね、それなら要約して話しますね」
「そうしてくれ、心臓にわるいわ」
流石に顔色が悪くなるジェフ。
アーレイ)「はい、簡単に言えばディスティアに裏切られ葛藤の末、クーンの指揮官になりました」
ジェフ)「もういいよ分かったから、お腹いっぱい!」
「付け加えますと一緒に来た下士官もクーン王国軍に加わりました。以上です」
「どんだけ斜め上なんだよ・・・・マジでもういいや、フローレンスここに」
フローレンス)「陛下、只今戻りました」
ジェフ)「フローレンス・・・・・・」
病気の報告を聞いてとても悲しい顔をするジェフ陛下。
フローレンス)「そう悲観しないでください」
ジェフ)「其方の元気な姿を見ていると、本当に病気なのかと思ってしまう・・・」
「すみません、心配をおかけしまして」
「お前が悪いわけではない、病気が憎い」
「私は大丈夫です。また会えます少しの辛抱です陛下」
「わかったよフローレンス・・・強くなったの・・・・」
「はい、アーレイ様のお陰です。病気に対しても前向きに考えられるようになりました」
「そうか。少し1人にさせてくれ」
「わかりました、これにて失礼します」
「ああ」
ジェフはアーレイを好きなフローレンスに対し、行き場のないやるせない気持ちになっていた。病気だから仕方ないと自分に言い聞かせ納得するしか無かった。そんなフローレンスもまた陛下のことを思い嘘をつく自分に対し、やるせない気持ちになっていた。
フローレンス)「。。。。(ごめんなさいお父様」
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