報告
覚悟を決めました。
フローレンスはアーレイの腕を抱いた状態で寄り添う様にソファーに座っている。
コンコン、優しく扉をノックする音がする。
アーレイ)「どうぞ、空いていますよ」
カチャ、入ってきたのはなんと「アイシャ」だった。
「スッ」と入ってきたアイシャは立ち上がろうとする2人に「そのまま」と言い放ちアーレイ達の反対側に座る。
アイシャ)「人払を!」
厳しく短く言い放つアイシャ。
侍女)「はい」
ポコ)「ナノ?」
一緒に来たポコと侍女達は外で待たされていた。
アイシャ)「無事だったのね流石に心配しました。アーレイありがとう守ってくれて」
アーレイ)「いえ、私が原因なのでこちらこそすみません」
アイシャ)「いいのよ戦乱の中ですから。ところでフローレンスこのまま続けるの?」
フローレンス)「いえ、もう流石に周りの方がお亡くなりすぎるので、表には出ないようにします」
「そう、王族としての責務はどうするの?」
「はい、今そのことでアーレイ様とお話ししていました」
「!!」
アイシャは”恋人繋ぎ”をしている2人の手を見てすぐに察する。
アイシャ)「”婚姻”を発表しても狙われ続けるわよ」
フローレンス)「!?」
一瞬、目が大きく見開いたフローレンスは全てを悟ったかの様に、静かに喋りだす。
フローレンス)「苦渋の決断を今し方決めた所です。私は眠りに着きます星団統一の日まで」
アイシャ)「レン、今なんと?」
「私がアーレイ様と一緒にいる以上、犠牲者が増えるのは間違いありません。アーレイ様は軍人ですから身を隠せますが、王族の私は公務があるので引きこもる訳にもいかず、必ず表に顔を出さなければいけません。そこでまた犠牲者が出ます」
「どうするのよ?」
アーレイ)「私が説明します、発言を許してください」
アイシャ)「いいわよ」
「フローレンスは現代医療で治療不能の病気に罹患したと発表。未来の医療で治せる可能性があるので、その体を冷凍保存すると同時に発表します」
「ええ!」
「彼女には申し訳ないのですが、コールドスリープ状態にした姿を一般公開して、お別れの儀式を行います」
「そこまで徹底的にやると・・・」
「流石に病人を狙うと批判が巻き起こりますし、賞金なんて出せません。そこが狙いです。ですが彼女にはそのまま眠って貰います」
「それでいいのフローレンス」
フローレンス)「はい、私もこの方法が一番と考えました。暗殺対象になっているから身を隠すではデルタの威信に関わりますし、誘い出すために強硬な手段に出る可能性があります」
「確かに・・・」
「はい、寝て起きたら婚姻発表ですから、希望を胸に秘め寝て待っています」
「その見切りの良さ、貴方も誰かに似てきたわね」
「そうですか?けどこれが”最善手”だと確信しています。だって引き篭もったら批判されるだけでしょ」
「まあそうね。貴方が良ければそれでいいわ。アーレイは星団統一を本気で進めるの?」
アーレイ)「はい、その為に動いています。すでにカルネは裏で同盟を結んでいます」
アイシャ)「はぁ〜、貴方のその行動力には脱帽しますわ。陛下がカルネの事を中々喋らないから変だなとは思っていましたが、それがこの理由なのね」
アーレイ)「ええ、ジャクリーヌ大将軍を中心に話を進めておりました。アイシャ様もカルネのリゾートホテルに旅行に行きますか?良い所ですよ」
フローレンス)「それはいいですね。あそこの海鮮料理は美味しいですわよ、お母様」
アイシャ)「あなたも行ったの?」
「はい、ビーチが綺麗でしたわ。また行きたいです!」
「・・・・」
顔が引き攣り呆れ顔のアイシャ・・。
アーレイ)「女王、ちなみに短期間ですがディスティアも訪問してきました」
アイシャ)「何をしに行ったのよ?」
「捕虜交渉役の家族を保護しました」
「誘拐?」
「いえ、セオドールが汚い手を使うので事前に食い止める為と、ルドルフの身柄の安全の為です。既に家族はクーンに住んでいます。もちろんルドルフの同意を得てですよ」
「あの”小狡い”セオドールの裏を描いたと」
「はい勿論です。私も痛い目を合いましたのでお返しです」
「もう好きにして頂戴。心配するのが馬鹿馬鹿しくなってきたわ」
「ありがとうございます。陛下の事は頼みますね」
「わかっています!!」
女王は話が済むと侍女とポコを部屋に入れ、フローレンスの世話を任せている間、別室でアーレイと2人で話をしていた。
アイシャ)「アーレイありがとう。フローレンスを娶ってくれて」
アーレイ)「陛下には内緒でお願いします」
「口止め?」
「まあ、フローレンスの身の安全の為です。少しでも情報は限られた者にしないと」
「わかりました。黙っておきます」
「すみません」
「いつから仲がよかったのよ、いつ決めたのよ!」
「仲は最初から良かったですよ。決定的なのはディスティアからカルネに戻った時です。彼女の”捨て身の攻撃”に負けました。ずっと押されっぱなしでしたから」
「ええ!あなたが押されるの?」
「ええ、好みの女性に押されて絶対に防ぐ自信はありません」
「あら、惚れてたの?」
「惚れていると言うか、性格も容姿も好みでしたからね」
「フローレンスも貴方のこと大好きだったから”相思相愛”ね!」
「・・・・」
コンコン、話を切る様にノック音が響く。
アイシャ)「はいどうぞ」
フローレンス)「お母様、着替えが終わりました」
アイシャ)「じゃ私はもう行くわね。それじゃあとは頼みましたよ」
アーレイ)「承知しました」
アイシャ)「フローレンス・・・」
部屋をでる間際、女王は彼女を優しく抱きしめる。
アイシャ)「あなたの決断はきっとアーレイの星団統一の役に立つと信じています。ですから少しの間だけお別れね」
フローレンス)「はい、お母様。心配かけてすみません。希望を胸の中に秘め待ち続けます」
「ありがとうフローレンス。あなたは私の自慢の娘よ」
「はい・・・・・」
ポコ)「ナ〜ノ〜」
横で見ていたポコは耳が垂れ悲しんでいた・・・・。
ーー
数時間後・・・作戦本部。
医師を呼び、偽の診断書と治療経過報告書を作り、更に補強する為に実際に難病と認定されている稀有な病気を探し、そのレポートも併せて全星団宛に送ったアーレイは、その電文を手に取って見ていた。
アーレイ)「後はセオドールが引いてくれればいいのだが」
ーー
ディスティア総統府。
秘書)「総統、デルタから重要報告書が送られてきました。」
セオドール)「読め」
「デルタ第二王女フローレンスは未知の病に侵され、治療不可能と診断される」
「なんだと、本当なのか?」
「医療技術が確立するまでの間コールドスリープを使用し、長期間の生命活動を停止するとの事。お別れの儀式は明後日正午より行う。以上です。あとは関連資料が添付されています」
「本当に王女が病に侵されているだと」
「はい、報告ではそのようになっております」
「何故わかった?」
「襲撃を受けた後、精密検査を実施し白血球値に異常が見つかり更に詳しく調べた結果、未知の病気と判明したとの事」
「その病名は?」
「まだ正式には明記されていませんが、ウィルス性神経破壊病(DNA由来)についての症状が添付されています」
「なんだそれは?」
「未知のウイルスXを暴露後、呼吸器官を経て血液中に入った場合、そのウィルスが放出する自分のDNAが脊椎に入り込み”クローン細胞”を生成、その細胞は徐々に全身の神経を侵す麻痺毒を放出。その後全身が麻痺、最後は脳の機能が停止する難病です」
「今の段階は?」
「血液中に未知のウィルスを感知。更に詳しい検査をしたところ脊椎に侵入しているDNAを発見、増殖はしておりますが神経はまだ侵されていないのでステージ2と言われています」
「薬が効かないのか?」
「はい、直接このウィルスの”DNA”に対して攻撃できる薬は存在しません」
「転送の際のフィルターは?」
「ウィルスは除去出来ますが、クローン細胞は本人由来の細胞ですから除去できません」
「それはまさに不治だな」
「同じような症状は何例か確認されていますが、ある程度進行すると急速に悪化するらしく今の技術では完治不可能との事です。それと今回の治療情報は全星団に配布。難病治療に役立ててほしいと、王女からの提案だそうです」
「流石に自分の治療履歴を公表するような病人を暗殺すわけにはいかないよな・・・」
「ええ、これを見る限り詳しい治療内容を公表しています。敵味方関係なく人道的理由からの公表ですのでこれは流石に」
「そうか・・」
「閣下、暗殺命令は全星団中に出していますので各国首脳とも掌握済みと思われます。暗殺を実行すれば問題になりますし、星団会議でも確実に議題に上がります」
「それはまずいな・・」
「はい、流石に敵国とは言え、成人したばかりの若い王女ですから、殺せば国内世論にも、星団全てに響きそうです」
「仕方がない、暗殺命令は取り下げろ」
「はい、それが最善手だと思います」
「だがアーレイ暗殺は引き続き続行しろ」
「はい」
ーー
再び作戦室内。
クリス)「アーレイ、明日ルドルフが来るぞ」
アーレイ)「わかった、向こうから詳細はきたか?」
「士官の取り扱いについてと、身代金は用意していると連絡が入った」
「そうかわかった」
自室に戻ったアーレイ。
アーレイ)「フローレンス、陛下の所に行かなくていいのか?」
フローレンス)「先ほど病気の発表の前に経過報告をしましたので、今日はもう行きません」
「あのー、このままずっとくっ付いているのでしょうか?」
「お嫌ですか?」
「嫌というか何もできないよ〜」
「私は〜離れると〜不安に〜なるので〜くっ付きます!!」
「・・・・・・はい、もう好きにしてください」
「よろしい!」
「ピット!!むにゅむにゅ」
「あのー、ふれていると言うか、押しつけていませんか?」
「今日は良いのですよたっぷり堪能してください。張りが違いますよ!!」
「もしかしてだけど誰と比べているのかな?」
「古女房(小声」
「なんだって?」
「熟女!」
「ゴラァ!」
「キャー ”襲ってー” アーレイサマー」
「なにをいっているのかな〜」
結局その後は・・・食事は”出前”、シャワーだけは別だったが、寝るときは”抱き枕”にされるのだった・・。
ーー
ディスティア軍港内、捕虜解放使節団、出発前のミーティングルーム
ルドルフ)「もう出発時間じゃないか、なんで整備士に機体のチェックをさせないんだ。クッソ」
士官)「准将お時間です」
「機体の確認が済んでいない!」
「ああ、それなら大丈夫と作戦本部から連絡がありました。まとめて整備したそうです」
「・・・・・なんだそれは」
怪訝な顔をするルドルフ、しかし上層部から整備したと言われ、中止命令を出すわけも行かずそのまま乗り込んだ・・・。
ーー
輸送艇、機内。
ゴー、輸送艇はディスティア軍港を飛び立ち、徐々に高度を上げ成層圏を抜ける頃、飛行が安定したタイミングでルドルフが今回の同行者に挨拶を始める。
ルドルフ)「挨拶すら碌に出来なくすまない。私が今回の責任者のルドルフだ」
同行者)「はい、みんな分かっています」
「それはよかった」
「准将、今回のメンバー見て何かお気づきの点はありますか?」
「ああ、分かっている士官に反抗的な人選だろ」
「そうですが、ルドルフ准将の所に転属願を出しているのも共通しています」
「そうなの?」
「はい、士官の差別に対して反抗的なメンバーです」
「もちろん、ルドルフ准将は逆の評価ですけどね」
「全員か?」
「そうです」
「君らは機体のチェックは出来たか?」
「いえ、飛び立つ前の簡易チェックだけです。時間がないので重要整備区画には入っていません」
「うーん・・・」
「どうかしましたか?」
「いや、なんでもない」
機長)「ルドルフ准将、それではデルタに向けジャンプします」
ルドルフ)「ああ、頼むよ」
シュバ!、ルドルフたちを乗せた輸送機はデルタに向けジャンプしていく。
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