決断
フローレンスと・・・。
病院に運び込まれたフローレンスはすぐに医者の診断を受け、身体に異常がないことを確認すると看護婦達が血飛沫を浴びた服を脱がせ、体を洗浄して院内用の服に着替えさせた。
フローレンス)「・・・・(沈」
意識はあるが朦朧としているフローレンス。アーレイの説明で現在の状態を理解し、診断した医者は・・・。
医者)「凄まじい惨状を目の当たりにし、その反動のショック症状が出ている」
フローレンス)「・・・(沈」
「これは精神崩壊を防ぐ為に自分から意識を遠ざけている状態だ」
そんなボロボロ状態のフローレンスは医師から鎮静剤を投与され、今はベッドの上で静かに寝ている。
医者は、「落ち着きを取り戻せれば症状は改善するが、心の傷が深いと”精神錯乱状態”に陥る」と言われ、対処方法を聞くと。とにかく休養が必要、同じような惨劇が続くと精神崩壊が進み、廃人化するか自殺する可能性もあると言われた。
ゴソゴソ、アーレイはフローレンスが装着していたシールド装置を使い、病院の窓に対無効化弾用シールドを張る準備をしていた。
ポコ)「ポコです」
アーレイ)「入っていいよ」
シューン、スライドドアが開き心配そうな顔したポコが入ってくる。
ポコ)「ベクスターは保管庫に入れたナノ!」
アーレイ)「ポコお疲れ!」
「姫は大丈夫ナノか?」
「今は鎮静剤を投与して寝ている、起きたら錯乱するかもしれない」
「相当酷いナノ?」
「ああ相当精神が参っているよ廃人寸前だ」
「可哀想ナノー」
「とりあえず陛下に報告するよ。シールドを張るから手伝ってくれ」
「ハイナノ」
軍病院は強固なシールドを張ってあるが、念の為に張る。
キュー、カチ、バインド用のワイヤーを数本取り出し、窓の中心に装置をぶら下げ動かないように四隅からワイヤーを張り固定する。
ポコ)「完成ナノ」
アーレイ)「ありがとう」
ピッピ、アーレイはモジュールを使い、シールドの範囲を設定する。
アーレイ)「これでもう安全だ」
ポコ)「フローレンスは大変ナノ」
「移動する時はベクスターで運ぶしかないな」
「ナノー」
ーー
狙撃手)「どこの部屋だ」
観測手)「最上階の左から2番目です」
「カーテンが邪魔で見えんな」
カチ、スナイパーはスコープを赤外線モードに切り替える。
狙撃手)「見えた。いま2人立っている」
観測手)「現在、目標は寝ている筈です」
「そうだよな、身長が違いすぎる」
赤外線モードだと分かり辛いが、高身長のアーレイと少し低めのポコなので流石に判断できたらしい。
観測手)「待ちますか・・・」
狙撃手)「ああ」
ーー
フローレンスの警護をポコに任せ、陛下が待つ王宮に報告に行くアーレイ。
アーレイ)「陛下、戻りました」
ジェフ)「フローレンスは大丈夫か?」
「今、病院で寝ています。襲撃は受けましたが怪我はありません」
「そうか、良かった・・・・」
アーレイの詳しい報告で安堵するジェフ・・。
アーレイ)「彼女は精神的に相当参っています。これ以上私と共に行動するのは控えた方が良いかと」
「そんなに危ないのか?」
「今日、複数のスナイパーに狙撃されました。事前に戻る情報が漏れています」
「そうなのか?」
「昨日、本部に帰投連絡を入れたのが原因と思われます。無人砲台は隠してあったと思いますが、ビルの上からの狙撃、”転送阻害”など入念に準備されています」
「君と離れても狙われるんだろ」
「そうです。シールド無効化弾用の新型シールドを使っているのでフローレンスは大丈夫ですが、周りの護衛が犠牲になります」
「新型シールドは量産できないのか?」
「まだ試作段階で2個だけです」
「その試作品は増やせないのか」
「ディスティア製の”将校専用シールド”を使いそれを更に弄って作ったので、作れても2,3個です」
「そうか・・・物が手に入らなければ作れないな」
「今、急がせていますがペインキャンセラーがまだ実験中で当分無理かと」
「試作品のシールドは大丈夫なのか?」
「2個ともペインキャンセラーが無いので衝撃がモロに伝わります」
「うーん、わかった暫く病気療養中で誤魔化す」
「お願いします。今からフローレンスの所に戻ります」
「そうしてくれ、君がいないと彼女も不安になる」
「はい」
ーー
フローレンス)「アーレイどこ? アーレイ!」
鎮静剤が切れ目覚め起き上がり、アーレイを探すフローレンスは今にも泣きそうだ。
ポコ)「少佐は陛下に報告に上がったナノ、もうすぐ戻ってくるナノ」
フローレンス)「そう・・・・」
フローレンスは起き上がり返事はしたが、俯き生気が全く感じられない。
ポコ)「フ・・」
心配になったポコは声を掛けようとしたがその表情を見てやめる。目には光がなく顔は窶れ、目にはくまができ、死にそうな病人の様な顔をしているからだ・・。
フローレンス)「・・・・(暗」
ガチャと扉が開く音がするとフローレンスの身体がビクッと体が反応し入って来た人物の顔を見て安堵する
フローレンス)「ア・・アーレイ」
アーレイ)「起きたかフローレンス」
フローレンス)「はい。ご心配をおかけしました」
「君はゆっくり休め、今しがた陛下に会ってきた、暫く病気療養中にして表に出さないようにと話をしてきた」
「ありがとうございます、喉が乾きましたお水を貰えますか?」
「少し待って」
「うん」
コポコポ、隣に置いてあった水差しからコップに水を注ぐが途中でやめる。
アーレイ)「ちょっと待っててこれ飲まないで」
フローレンス)「えっ?」
部屋を出るアーレイ、戻ってくると自動販売機で買った水を差し出す。
フローレンス)「警戒しているのですね」
アーレイ)「そうだよ、狙撃だけが暗殺じゃ無いからね」
アーレイはポコに合図して水差しを下げる。
ポコ)「ナノナノ!」
ピッピ、水をスキャンして成分を調べるが、毒は入っていなかった。流石にこの展開は考えていなかったのだろう戻ってきたポコは横に首を振る。
ポコ)「・・・ナノ」
アーレイが隣に座り、コクコクと水を飲んで落ち着いたのか少しずつ顔色が良くなって来た。
フローレンス)「アーレイ様、報告は延期ですね・・・・」
アーレイ)「そうだね、報告して公表しても更に狙われるだけだね」
「私が、カゴの中の鳥になってしまいました」
「大丈夫、放たれた猛獣が守っているから」
「ふふふ、ありがとう。背伸びをしたいので起きますね」
「ああ、少し体を動かすのがいいよ」
「はい」
フローレンスは起き上がり、伸びをする。
フローレンス)「んんっ、はぁ〜、少し楽になりました」
シャー、そのまま窓際に行きカーテンを開け外を眺める。
アーレイ)「フローレンス窓際は危ないから戻って!」
アーレイが注意するとほぼ同時に「バンバンバン!」「ガガガン!」と衝撃音がする。病院のシールドを通過しアーレイが張ったシールドが作動したのがわかる。彼女が返事をしようとした瞬間、瞳のギリギリのところに一発の銃弾が止まっていた。
フローレンス)「・・・」
カン!カラン、カラーン、無効化弾がシールドで威力をなくし数発の銃弾が床に落ちる。いきなりのことで混乱した彼女はそのまま、力無くしゃがみ込みガタガタと身体が震えていた。
フローレンス)「い、いや」
アーレイ)「フローレンス!!」
アーレイは近づき抱きしめる。
フローレンス)「ア、ア、ア・・・・・・」
アーレイ)「しっかりしろフローレンス」
「ア、アーレイ様、私、私もうダメです・・・・もう無理・・・」
彼女は泣くことより怯えの方が強く、アーレイを強く抱きしめ安らぎを求めていた。
ポコ)「警備室!」
警備員)「どうぞ」
「狙撃されたナノ、位置を割り出すナノ」
「は、はい」
ポコは素早く連絡を入れ、狙撃ポイントを割り出し警備兵に指示を出していた。
ポコ)「ベクスターを持ってくるナノ」
アーレイ)「頼む」
「ナノ!」
ガシャガシャ、ダダダ、窓のシャッターを降ろし飛び出していくポコ。
アーレイ)「ほら、もう安全だよ」
彼女の顔を見ると少し落ち着いたが、無表情になっていた。
フローレンス)「 」
アーレイは彼女を安心させる為に短いキスをする。
フローレンス)「ンン!・・・・ありがとう」
力なく小さな声で返事をするフローレンス。目には涙があふれ、今にもこぼれ落ちそうだった。
アーレイ)「我慢しなくていいよ」
フローレンス)「ンンっ!ウグ、ウヒ」
彼女は黙ってアーレイに抱きしめられ、声にならない”嗚咽”を出し泣いていた。そして散々泣いた後、少し持ち直したフローレンスは時折キスをせがみ。ずっとアーレイを離さなかった・・・・。
ポコ)「到着したナノ」
アーレイ)「ポコ頼む」
「はいナノ」
彼女を抱きしめたままリビングモードの床に転送された。もちろんポコには見えていない。
アーレイ)「ポコ、作戦本部に行ってくれ」
ポコ)「はい、ナノ」
アーレイ)「フローレンスすぐに到着するよ」
フローレンス)「いや」
「僕の部屋まで我慢して」
「いや!」
「お姫様抱っこで行く事になるが耐えれるか」
「・・・・・いや」
小さく首を横に振るフローレンス。
グン!軽い衝撃で到着したことがわかる。プシュー、ポコが扉を開ける頃には2人とも普通に立っていた。
アーレイ)「ありがとうポコ」
ポコ)「ナノ!」
フローレンス)「・・・・・」
屋上から作戦本部に行くが、「報告は後で」と言ってそのまま3人はアーレイの自室に入る。
アーレイ)「ポコ、王宮に連絡してフローレンスはここにいる事を伝えて欲しいんだ」
ポコ)「はいナノ」
「侍女と着替えを頼む」
「わかったナノ」
ダッシュで部屋を出ていくポコ。
アーレイ)「フローレンス落ち着いた?」
フローレンス)「抱きしめて!キスして!」
「わかったよ」
軽く抱きしめ、彼女にキスをするアーレイ・・・。
フローレンス)「優しいねアーレイ」
アーレイ)「君のことが心配だ」
「貴方がいなかったら私は死んでいた。ありがとうアーレイ」
「さあ座ろう、そしてお話をしよう」
「うん」
ギュ!、密着したままソファーに座り、彼女はアーレイの手を恋人繋ぎで握りしめる。
アーレイ)「ねえ、フローレンス」
フローレンス)「ん?」
「この先のことを考えられる?」
「・・・・・」
力なく彼女は首を横に振る。
アーレイ)「今は無理だよね」
フローレンス)「うん」
「多分、このままで行くとまた狙われる」
「うん」
「君は死なないが、周りの人々が傷つく」
「うん」
「少しの間、眠らないか?」
「どのくらい?」
「数年かな。星団を統一が完了したら1番最初に起こすよ」
「もしかしたら十数年経ってて起きたら、”おばあちゃん”になっているかもね」
「君は美しいままで、僕がおじいちゃんだよ。腰が曲がった僕に起こされてもいいの?」
「それはイヤ」
「早く終わるように頑張るよ、ごめんね僕のせいだね」
「んん、いいの、うんアーレイを信じている・・・起きたらお嫁さんになるんだから、寝て待っている!」
「ありがとう、フローレンス」
彼女の表情を見れば相当無理をしているのが良く分かるが、必死に耐えている。
フローレンス)「けど、けど」
アーレイ)「フローレンス」
「あなたと離れたくないよ、貴方がここにいるのにもう寂しくなってくるよ」
「・・・・・・・」
「ウグ・・・アーレイ、アーレイ、貴方の事が好きよ・・・だから待っている・・・いつまでも待っているから」
アーレイは彼女を抱きしめる以外方法を思いつかなかった・・・・。
宜しければブクマ、評価お願いします。




