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錬金術士として目覚めたアーキは躍進する

 いつものようにチームハウスにやって来た僕。

 リサさんがこれでもかというスキンシップで迎えてくれた。


「凄いわよ、アーキ君。君の作ったハイクオリティー品のポーション、あれね、鑑定スキル持ちの行商人のバータさんに見てもらったらハイパーポーションだったの」

「ハイパーポーション……」

「あれ? 錬金術士の息子なのにパイパーポーションを知らないの?」

「それぐらい知ってますよ」


 知ってるからこそ言葉を失ったんだ。

 ハイパーポーションと言えば高価過ぎて庶民は手にすることの出来ない、ここぞと言う時に使う超高品質なポーションのことだ。

 熟練の錬金術士でも年に一本作れるかどうかと父さんから聞いたことがある。

 ハイパーポーションが出来た日の父さんの満面の笑みを今でも覚えている。

 そんな作るのが大変なハイパーポーションを僕が量産してたってことが信じられない。

 リサさんはぐいぐいと顔を寄せてきながら話を続けた。

 もちろん満面の笑みだ。


「でね、ハイパーポーションをこんな辺境の村の冒険者が飲んでも宝の持ち腐れだからね。行商人に売ることにしたのよ」


 実際、冒険者たちに売れていたのは普通の1000ゴルダのポーションだけで、「ボーゲンの作ったポーションより10倍は回復する」だの「このポーションなら2本飲めば死にそうなケガも完全回復するしな」だの「普通のポーションの効きがいいからハイクオリティー品なんて要らねーよな」と絶賛され、値段の高いハイクオリティー品はさっぱり売れてなかった。

 それで在庫が余りまくっていたので、消費期限が迫ってきたハイパーポーションを普通のポーションの瓶の中に混ぜてたりして処分してたんだけど、それでもハイクオリティー品が次々量産されまくるので在庫が増える一方だった。

 そこでリサさんは村に来ていた行商人のバータさんに買い取ってもらうように声を掛けたそうだ。


 ドンと音を立てて大きな金貨袋が机に置かれた。

 中を確認しなくてもとんでもない金額なのがわかる。


「いったい、いくらで?」

「1本10万ゴルダ」

「ご、ごじゅうまん?」

「それでも相場の半額よ。行商人のバータさんはあまりの大型商談に涙を流して大喜びで、冒険者ギルドに借金して全部買っていったわ」

「いったい何本売ったんですか?」

「100本ね。売れ残りはその倍ぐらいあったけど、まだ消費期限が十分あったので次回の販売に回したわ」

「100本て1000万ゴルダじゃないですか!」


 なんていう大金。

 500万ゴルダもあれば庶民の一家が贅沢して一年暮らしていけるというのに、その倍とは……。


「これはアーキ君の取り分の500万よ。受け取ってね」

「ありがとうございます。でも、こんな大金は家に持って帰れないですよ」

「ボーゲンに取られちゃうよね。じゃあ、ギルドに貯金しておく?」

「是非とも」


 ということで貯金をすることになった。

 ギルドでは受付嬢のお姉さんが出迎えてくれたがどうやら浮かない顔。

 

「ごめんなさい、未成年は冒険者登録できないの」

「いえ、冒険者登録ではなく、貯金に来ました」

「貯金ですか、ありがとうございます」


 ドンと金貨袋を机に置くと、中身を確認した受付のお姉さんが引いていた。


「子どもなのにこんな大金どうしたんですか? まさか、お貴族様相手にショ……じゃない、なにかいけない事でも?」


 リサさんが事情を説明する。


「このアーキ君、実は私がギルドに納めているポーションを作っている錬金術士なんです」

「え? あのポーションをこんな若い子が作っていたんですか?」

「優秀でしょ?」

「ものすごい高品質なので、もっとお歳を召された熟練の錬金術士が作っていると思ってました」


 受付嬢のお姉さんにポーションの出来を絶賛されると照れてしまう。

 どうやらリサさんの説明で納得してくれたようで、無事口座の開設が済んで貯金も出来た。

 これでボーゲンにお金を奪われることもない。


「いまちょうど新規口座開設キャンペーン中で100万ゴルダ以上貯金すると豪華装備が当たる福引が引けるんですよ」

「お、いいね。ツキまくっているアーキ君なら絶対当たるよ」

「この花瓶の中に入った棒を引いてもらって、当たりが赤の棒です。3本引いてください」


 さっそく福引を引く。

 花瓶みたいなのに100本ぐらい刺さっている棒の中から3本引く。

 3本だけが赤い棒の当たりで、3本とも赤を引けば1等賞だ。


「おお! 赤3本です!」

「当たり?」

「当たりも当たり大当たりですよ!」


 もちろん福引に当たったのは幸運のステータスのお陰である。

 それを聞きつけた冒険者が集まって来た。


「うお! 兄ちゃん、大当たり当てたよ!」

「スゲーな!」

「1等のミスリルの剣じゃないか。羨ましいな!」

「アーキ君良かったじゃないか」


 リサさんも喜んでくれていると、受付嬢さんが剣を持ってきた。


「これが1等の景品のミスリルソードです」

「すごそうな剣ですね」

「買ったら2000万ゴルダはするよ」


 ずっしりとして持つのも大変な剣を渡された。

 それにしても2000万ゴルダって……高すぎ。

 まあ、僕は冒険者じゃないんでこんな貴重な剣を貰っても使えない。

 おまけにこの小さな町では、こんな高価な剣を買い取ってくれる店もないし。

 2000万ゴルダの剣を貰っても扱いに困る。

 僕が困っていると討伐の報告に戻ってきたマイカ姉ちゃんがやって来た。


「坊ちゃん、これはなんの騒ぎなんだ?」

「実はこれが当たっちゃって……」

「うお! ミスリルソードじゃないか! いいな」

「景品の1等賞らしいです」

「すごいツキだな。私も当てて一度でいいからミスリルソードを手に入れてみたいよ」

「どうぞと言うか、畑を貸してくれたお礼に差し上げます」

「え? いいのか? でも、さすがにこれだけのものをタダでもらうわけには……」


 すると、リサさんがマイカ姉ちゃんに金貨袋を渡す。


「お金を貸してあげるから買っちゃいなさい」

「いいのか?」

「こんな辺境の町の冒険者がミスリルソードを手に入れるチャンスなんて二度とないわよ」

「うん、そうだな」


 その後『お金を払う』『お金は要らない』の押し問答の末、相場よりかなり安い500万ゴルダで決着。

 マイカ姉ちゃんは憧れのミスリルソードを手に入れて大喜びだった。

 未成年なのに一日で1000万ゴルダも手に入れてしまった僕。

 最近の僕はツキまくっている気がする。

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