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ポーションを作っていることがバレてしまった

 僕はポーションを作りにリサさんの元を訪れる。

 もちろん来た目的は錬金術の練習である。

 毎日ポーション作りの練習を繰り返していたので、錬金術を知らなかった僕でもハイクオリティー品を作れるようになってきた。

 

「すごいわ! ポーション作りを始めて一週間でハイクオリティー品を作れるなんてすごい才能よ!」


 リサさんは高く売れるハイクオリティー品が出来て大喜びだ。

 ハイクオリティー品は通常品と比べて値段も効果も消費期限も5倍なのでお金の好きなリサさんが喜ばないわけがない。

 出来上がったポーションの小瓶に頬ずりをしながらうっとりとしている。


「私でも1ヶ月に1個作れるかどうかってとこなのに、錬金術を始めたばかりのアーキ君が10個中2個も作れるなんてすごいわね」


 テーブルの上にずらっと並んだ小瓶のうち、20個がハイクオリティー品だった。

 これはベテラン錬金術士の域に達しているかもしれないとのこと。

 

 もちろん、幸運のステータスのお陰だったけどアーキもリサも知らない。


 *


 大儲けでウハウハのリサたちに反して、全くポーションが売れなくなった者がいた。

 ボーゲンだ。

 普段なら日に10個は売れていたポーションがパタリと売れなくなった。

 客に話を聞くと冒険者ギルドでポーションの格安販売を始めたらしい。

 その値段は1000ゴルダ。

 ボーゲンの売っているポーションの値段5000ゴルダの五分の一である。

 これでは売れなくなって当然だ。

 それにしても安すぎる。

 

 ポーションの材料となる薬草はアーキに採らせてタダで手に入れているものの、雑貨店に売れば1束500ゴルダはする。

 その薬草2束を使ってポーションが1個出来るが、錬金は5回に1回しか成功しないのでポーション1本分の錬金で10束の薬草を消費する。

 つまり、ポーション一本の錬金に5000ゴルダの材料費がかかり、良心的に原価で提供していることになる。

 

 それなのに、原価以下の1000ゴルダでポーションを売っているとは……。

 ありえない!

 いったい誰が売ってるんだ?

 きっと何か変な混ぜ物をしたり、薄めてるはずだ。

 早速、町長のワーレンに相談しに行く。

 ワーレンとは前々から懇意にしてもらっていて、たいていの頼み事は聞いてくれるはずだ。

 以前にもアーキの父親のアルタのギルド譲渡で色々と口を利いてくれた。


「ほほう、原価以下でポーションを売っているのか」

「きっと、私のギルドを潰そうとしているんです」

「それは許せないな」

「品質の保証の出来ないポーションの販売を禁止してもらえませんか?」

「それには証拠がないとな。まずはポーションを手に入れて検査してからだ」


 ポーションを手に入れ、町で唯一の鑑定屋のハージ婆さんに調べてもらった。

 すると意外な答えが返ってきた。

 

「製作者はアーキじゃな」

「嘘だろ? アーキがポーションを作ってただと?」


 あいつにはポーションの作り方は一切教えてないどころか、錬金台にも触れさせていない。

 なので、ポーションなぞ作れるはずがないんだが……。

 ハージ婆さんはダメ押し俺に告げた。


「このポーションはかなり質のいいポーションじゃな」

「は? この激安のポーションがかなりいい出来ですって? 何かの冗談では?」

「いや、混ざりもの無しのポーションで、グレードは……上質じゃぞ」

「上質ですって?」


 冒険者ギルドで手に入れたポーションは『ポーション:【上】』だった。

 年間数本しか作れないポーション:【上】を1000ゴルダで売ってるだと?

 ありえない!

 ハイクオリティー品と言えば儲けの要、俺は3万ゴルダで売っていたのに。

 ハージ婆さんは続ける。


「それに対してこちらのポーションの方はかなり質が悪いな。ぎりぎりポーションではあるけど、あと少しで劣化ポーションになる品質だぞ。これはお前さんが作ったのか?」

「はい……」


 ボーゲンは錬金術士としては並以下なのは自分自身で嫌というほど思い知っていた。

 たぶん向いていないんだと思う。

 それは以前のギルド長だったアーキの親のアルタにも耳が痛くなるほど言われていた。


「もう少し、精進せにゃならんのう。このままでは遅かれ早かれ錬金術士としてやっていけなくなるぞ」


 アルタに同じことを言われたのを思い出す。


『キミはいつまで経っても成長しないな。努力する気がないのならば、錬金術士を止めた方がキミのためだ』


 アルタにクビの予告をされた。

 俺は努力をしたが一向に錬金のコツを掴めず結果が出なかった。

 錬金術士として一人前にやっていけるかを審判する宣告期限の半年を迎えようとしていた。

 このままでは錬金術士をクビになる。

 それだけは困る。

 あのみじめな無職だけには戻りたくない。

 ならば、俺が取るべき道は一つだけしかない。

 仕方なしに、俺は町長のワーレンに相談した。

 ワーレンは全てを任せろと言い、その3日後にアルタとその妻が馬車事故で死んだ。

 モンスターの襲撃に見せかけて……。


 はあ。


 アルタと嫁が死ぬことになった原因は俺だ。

 俺だってあんな結果になるとは思っていなかったんだよ。

 でも錬金術士を続けるにはああするしかなかったんだ。

 この婆さんのせいで嫌なことを思い出してしまった。


 ワーレンの所へ結果を持って戻る。


「ポーションには問題が無かったか」

「ええ。むしろ上質なぐらいでした」

「ならば、他の手を打つしかあるまい」

「他の手って?」


 まさか、ワーレンに言われてアルタを手に掛けた時のようにこのポーションに関わったアーキも殺すのか?


「さすがにこの小さな村で両親に続けて息子まで殺すのはまずいだろう」


 よかった、殺しはしないんだ。

 ボーゲンはほっと胸を撫でおろした。


「殺すにしても、今回はちゃんと法的に手続きを踏まないとな」

「殺すんですか?」

「ああ、犯罪者として葬る」


 ワーレンは人の命をなんとも思わないとんでもない化け物だった。

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