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町の中で薬草を採ってこいと無茶ぶりされたけど、なんとかなりそう

 迷子になったことで村からの外出を禁止された僕。

 成人するまで村から出ることを禁止された。

 まあ、これは僕の身を守るためだったりする。

 ボーゲンに無理な使いをさせないためだ。

 ゴッサ兄ちゃんが商工会長のクラウスさん経由で、渋る町長のワーレンさんに根気強く掛け合ってくれたお陰で村の外での薬草採りを禁止させたのだった。


 代わりにボーゲンが薬草採りに行っていたが、採ってきた薬草は僕の五分の一にも満たなかった。

 どれだけ僕が有能で、どれだけボーゲンが無能かと思い知ったことだろう。

 これでスッキリしたと思うかもしれないけど現実は逆だ。

 稼ぎの元となる薬草が手に入らなくなり、収入も激減したボーゲンがやたら僕に辛く当たってくる。


「アーキ! てめえのせいで薬草が手に入らなくなったんだから、どうにかしろ!」

「どうにかって、村から出れないんじゃどうにもならないですよ」

「つべこべ言うんじゃねー! さっさと集めてこい! 集められなければギルドをクビだ!」


 凄い無茶ぶりだ。

 村から出ずに薬草を集めろって?

 そんなの無理に決まってる。

 道端で僕が途方に暮れて泣いていると、女の人に声を掛けられた。


「坊ちゃん、こんな所で泣いてどうしたの?」


 去年成人になり、冒険者を始めた女戦士のマイカ姉ちゃんだった。

 最近はあまり見かけないけど、彼女は僕の父さんがまだ生きてた頃はよくギルドでポーションを買いに来てくれていた。

 なんで最近は見かけなくなったか聞いてみると、ポーションの質がかなり落ちているからとのことだった。

 今の品質なら冒険者仲間に錬金を頼んだ方がマシとのこと。


 どうやらボーゲンは薬草集めだけじゃなく、錬金術の方もあまり上手くないらしい。

 どうりで父さんの生きていたころと比べてお客さんが減ったわけだ。


「町の外に出れないのに、薬草を集めて来いってギルド長に言われたんです」

「ギルド長ってボーゲンのこと?」

「はい、町の中で薬草を見つけて来いって無茶過ぎます」

「確かに無茶よね。でも手がないわけじゃないわよ」

「本当ですか?」

「ええ。ちょっと待っててね」


 しばらく待っていると息を切らせて戻って来たマイカ姉ちゃん。

 薬草の種を仲間から分けて貰って僕にくれた。


「これを植えて育てるのよ」

「育てる?」

「うん。町の外れに私たちのチームハウスがあるんだけどね、畑にもなるぐらいの広さの使ってない庭があるからタダで使っていいわよ」

「本当にタダでいいんですか?」

「タダだと気を使うっていうのなら……そうね、薬草から出来たポーションの一割をちょうだいね」


 畑の使用料はポーションの現物支給ということとなった。

 でも、僕はポーションなんて作れないんだけど。

 錬金術ギルド長の息子なのにポーションも作れないなんて笑えるね。

 父さんが生きてる頃にちゃんと作り方を教わっておけばよかったよ。


「ポーションを作れないなら、この機会に錬金術の勉強もしないとね」

「でも、僕、ポーション作りなんてやったことないし、さっぱりわからないです……」


 ギルドの中を探せば父さんの持っていたポーション作りの本ぐらい見つかるかもしれないけど、ボーゲンは絶対に貸してくれないだろうな。


「それなら錬金術の出来る子を紹介するから教えてもらいなさい」

「本当ですか? なにからなにまで、ありがとうございます」

「気にしなくていいわ。君のお父さんには色々良くしてもらったしね。恩返しよ」


 *


 そしてマイカ姉ゃんのチームハウスの庭に行くと……広さは十分にあったけど雑草ボウボウだった。

 そりゃね、冒険者が庭いじりや畑仕事なんてするわけないしね。

 仕方ないので雑草抜きから始めてると、農家のシェーマス爺さんがやって来た。

 シェーマス爺さんの方は僕のことを覚えていなかったみたいだけど、父さんの知り合いで何度かあったことがある。

 たまに採れたての野菜を持ってきてくれたとてもやさしい人だ。


「どうだ? 薬草栽培は上手くいっとるか?」

「栽培前の畑作りからですね」

「そうかそうか。わしも手伝ってやるぞ」


 なんでも、マイカ姉ちゃんに聞いて応援に来てくれたらしい。

 本当に助かる。

 シェーマス爺さんは父さんのことをよく知ってた。


「アルタの息子だったのか。どうりで面影があるな」

「父さんと違って、ポーションの錬金もむりな出来の悪い息子ですけどね」

「なあに、ポーションなんてうちの婆さんでも作れるぐらいだから、すぐに覚えられるさ」


 すぐに畑作りが終わり、薬草の種を撒く。

 シェーマス爺さんは「今回だけだぞ」と言って僕にキラキラとしたものを渡してくる。


「これを畑に撒くんじゃ」


 僕は言われるままに畑にキラキラと光るものを撒いた。


「これは?」

「魔石紛って言っての、薬草にとっては肥料みたいなものだ」


 町の外にいる魔物から取った魔石を砕いてパウダーにしたものらしい。

 薬草は魔力を吸って育つので魔力が篭もった魔石は肥料になるそうだ。

 さすが農家だけあってシェーマス爺さんは色々と詳しいな。


「さあ、一週間もすれば収穫できるぞって……なんかもう生えてきてないか?」


 目の前でみるみる生えてくる薬草。

 さすが、魔石粉の効きは半端ない。

 でもシェーマス爺さんは首を傾げていた。


「魔石粉を撒いたとしても……薬草がこんなに早く育つのを初めてみたぞ」


 薬草がとんでもなく早く生えたのも幸運ステータスの効果だったとはアーキはまだ知らない。

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