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■ガスプラを照らす光と陰

 ガスプラは今、新たな局面を迎えようとしている。最後のシリンダー延長計画が2190年に始まろうとしているのだ。完成すれば、ガスプラを貫く18キロメートルのシリンダーが完成し、およそ13万平方メートルの土地が生まれることになる。GaDAはこの新たな土地を使ってガスプラを100万人都市に変貌させる計画だ。実現すれば月のアルテミスや火星のマリネリスの経済規模を遥かに超える地球外最大の都市になるだろう。

 シリンダー延長に伴う関連産業の整備ラッシュは既に始まっているようだ。ガスプラに注目する大手の人材派遣会社は水面下で契約獲得に向けた行動を開始し、一歩先んじた企業は、既に地球の後進地域で新たな契約労働者の募集を始めている。

 更なる発展を見越したガスプラへの資産投資も活発だ。不動産投資ファンドのキャピタランドは、昨年10月ににガスプラ内にある3つの大型オフィスビルの買収を発表した。担当者はガスプラへの投資に絶大な期待を寄せている。「惑星間距離は地球のような電子工学的交流を困難にしますから、現地に物理的な支店を構えたい企業は数え切れないほど存在しています。環境を用意すれば、安定した収益は確実でしょう。投資家にとっては理想的な商品です」キャピタランドは、今後新たに建設されるビルを含めてさらに5つのオフィスセンターを整備するつもりだ。他の投資ファンドも、シリンダー延長計画に合わせたガスプラへの投資計画を大々的に実行している。

 世界から集まるガスプラへの視線は、今のところその多くが肯定的なものだ。シリンダーという唯一無二の観光資源に加え、世界の頭脳を集めるビジネス環境と、外惑星系のアイスラッシュに素早くアクセスできる市場を持つガスプラは“世界都市”への飛躍を可能にする多くのカードを持っている状態だ。適切にカードを利用できれば、地球に次ぐ経済圏の地位は確実だろう。だが成長の裏に生じた歪みは無視できるものではない。労働問題に目を瞑り続ければ、国際的な非難を浴びることは確実だ。GaDAが謳う自由都市というガスプラの特権を守るためには、彼らが信奉する市場原理だけではなく、確かなセーフティネットの構築も必要だ。

 欲望、矛盾、そして希望が渦巻く都市ガスプラ。23世紀にこの星がどんな姿になるのか、今後も動向に注目していきたい。

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