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■地球圏への挑戦者

 世界で最も魅力的な都市はどこだろう?

 例えば、熱帯植物と都市構造を融合させた完全環境都市(アルコロジー)のシンガポールや、1000メートルを超えるメガタワー群とそれを結ぶ空中交通ネットワークを築き上げたムンバイは、居住環境やビジネス、カルチャー、エコロジーなど、あらゆる要素をポイントにしても非常に魅力的な場所だ。あるいは、あなたがありきたりなアクティビティに飽きた観光客やギャンブラーなら、感覚拡張によって生身の限界以上の興奮も味わうことが出来るカジノリゾートの聖地マカオを挙げるかもしれない。

 どれも納得できる意見だが、これはあくまで地球に限った話だ。今、世界の主要なエコノミストや研究機関は太陽系全体に注目している。コーネル大学の研究グループが発表している国際的な都市指標の1つ「ザ・パワー・オブ・シティーズ」の最新レポートはその象徴的な例だろう。月面のアルテミスと嫦娥(ジョウガ)、そして火星のマリネリスは地球外でありながら、サンパウロやジャカルタと同列であるセカンドグループの常連として今年もランクインしている。だが、今回のレポートで最も注目されたのは、トップグループでも三大地球外都市でもない。それは地球から遥か遠く、内惑星系すらも超えた先で新たに頭角を現した1つの天体――小惑星“ガスプラ”だ。

 小惑星帯(メインベルト)に位置する直径10キロメートル程度の小天体であるにもかかわらず、ガスプラは経済と文化と権力が集積する“世界都市”の地位にその名を新たに連ねようとしている。「ザ・パワー・オブ・シティーズ」の最新レポートでは、ガスプラはついにセカンドグループにランクインした。今後もガスプラに対する注目と投資が続けば、23世紀には世界の新たなビジネスリーダーになっているかもしれない。

 だが、地球圏という太陽系の絶対的王者に並ばんとするガスプラの急速な成長は、同時に太陽系に広がったグローバル社会の暗部を浮き彫りにしつつある。昨年には国連+Sの人権理事会より、ガスプラの労働環境を懸念する特別報告書が発表された。そこには劣悪な労働と生活に苦しむ人々の存在を裏付ける証拠が示されている。

 小惑星ガスプラを照らす繁栄の光と陰。注目を集めるこの星はなぜ人々を魅了しているのか、そしてここで何が起きているのか、現地での取材を通してこの星の真実の輪郭を探ってみよう。

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