復讐の魔王
魔王。 飯島恭也《いいじまきょうや》の住む街では、その人物の噂が広がっていた。 復讐を望めば現れると言われるその人物は正体不明で、様々な説が飛び交って収集がつかない状態となっている。 あるところではサラリーマンだと言い、またある場所では学生だと言う。他にも定年を迎えたおじいちゃん、小学生、大企業の御曹司、自衛隊、AIなど様々な説が交錯し、もはやどれが本物なのか手掛かりにすらならない。 そんな、世間に溶け込む中で、魔王は地べたを這った弱者に手を差し伸べ囁いた。 「お前は――復讐を望むか?」 その人物について嗅ぎ回る女が一人。 飯島と同じ学園に通う一年生の後輩。九重沙月《ここのえさつき》。 あざとくてバカっぽい彼女は、放課後の誰も居なくなった教室でやり忘れた宿題と格闘している時、突然現れてはこんなことを尋ねてきた。 「あなたが、魔王ですか?」 否定虚しく疑われ、下宿先にまで追いかけて来る始末。 飯島は疑いを晴らすべく、一緒に魔王を探し始めることにするが……。
※この小説はエブリスタとの重複投稿です。