秋の夕暮れ
自分の体験を元に創作しています。
5歳から始まった保険金殺人ゲーム
家族や親戚の殺人計画から生き延びた僕の命の記録
僕が生まれたのは昭和40年の秋。
北関東の小さな町の、貧乏一家の末っ子として生まれた。
酒乱の父、精神を病んでいる母、6歳年上の姉、3歳年上の兄が僕の家族だ。
僕が子供の時、家族会議が開かれた。
何故か、僕だけ家から締め出された。
寒い秋の日の夕方だった。
薄着のまま家の外に追い出された僕は、早く家に入りたくて中の様子を伺っていた。
そこで話していた内容は、「保険金を受け取るために、僕をどうやって殺すか?」だった。
寒さと心細さに震えながら、家族会議をそっと聞いてたことを、今でもよく覚えている。
その日は、僕の5歳の誕生日だった。
それから数ヶ月後、親戚のそのまた親戚の年寄りが亡くなったことが伝わってきた。
にわかに、家族が慌ただしくなった。
父が、兄弟達と頻繁に連絡を取っている。
どうやら、その遠縁の年寄りの葬式に出向くらしい。
僕も、両親と一緒に葬式に参列することになった。
翌々日には、群馬県安中市の遠縁の家に僕はいた。
葬式に参列した子供は、何故か僕一人だけだった。
たまに来る子供は、線香をあげるとすぐに帰って行った。
「悲惨な事故を子供達には見せられないから」と、どこかの母親が言っていた。
「まだ子供なのに可哀想」と、僕に言う大人もいた。
亡くなったのは年寄りなのに、なんで僕に言うのだろう?
そういった大人達の会話を聞いているうちに、子供の僕でも事態を理解することができた。
これから、僕が殺されるんだ。
僕は殺されるために、ここに連れて来られたんだ。
それを、ここに居る大人達は全員その事を知っているんだ。
あっちには、お金の分配の事で揉めてる大人がいる。
こっちには、涎を垂らしそうなほどの満面の笑みで僕をじっと見つめるおばあさんがいる。
ここに居る全員が敵なんだ。
保険金欲しさの親戚一同 vs 5歳の僕
絶対に勝ち目の無い戦いが、今始まってしまった。