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強制的な冒険譚 魔法が消えつつある世界にて  作者: 川理 大利
第1章 5部 フォレット過去編
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友人宅へ招かれて

お久しぶりです。なんと五年ぶりの投稿です。

この先のフォレット過去編では、一話内で過去ラナーと未来ラナーの視点を行ったり来たりします。

できるだけ、分かりやすいようにはしますが分かりにくいところもあるかもしれません。

そこは、申し訳ないです。

 授業が全て終わり放課後。校門へ向かうとすでにそこにはガランとシャレーがいた。何か話をしているようだ。いや、2人で話をしているというよりかは、立ちながら本を読んでいるガランにシャレーが一方的に話しかけているようだ。


「ごめん、少し遅くなった!」


「いや。そんな待ってないから別にいいよ」


 と、ガラン。


「ラナー、遅い!」


 と、シャレー。


「ごめん、ごめん。今日教室の掃除当番だったんだ」


 掃除当番は2日に1回のペースで回ってくる。日によって廊下だったり教室だったり様々だ。正直面倒くさいが、毎日ではないのでそこはまあいいだろうと思う。


「てか、むしろ2人とも掃除当番じゃなくてずるいよー」


 どうやら2人とも同じ周期で掃除当番が回ってくるらしい。今日が掃除当番でないということは、僕は明日掃除当番だ。同じクラスなのにそんなことを気にしたことは一度もなかった。


「文句を言っても仕方ないだろう。さあ行くぞ、ラナー、ガラン」


 僕に対する詫びは特に無かった。少しくらい謝ってくれてもいいだろうに。まあ、いいか。


 シャレーのあとについて歩く。そうえば、シャレーは博物館の場所を知っているのだろうか?


「ねぇシャレー」


「なんだ?」


「博物館ってどこにあるのか知ってるの?」


「知らないが? それがどうかしたか」


「いや、だってそもそも場所知らないと、博物館までたどり着けないじゃん」


「それもそうだな。まあなんとかなるだろ」


 僕とシャレーのそんなくだらないやりとりを横で歩きながら見ていたガランは一つため息をつくと僕たちに向かってこう言った。


「二人には計画性というものがないのですか? 僕についてきてください。博物館まで案内しますから」


 ガランの後についてシャレーと話しながら歩く。校門を出て町と学校とを隔てる崖にかかる階段を下りる。崖といってもそれほどの高さは無いため大人ならばよじ登ることができるだろう。

 道を少し歩き十字路に差し掛かる。この十字路を西へと行けば、僕の家があり東にはシャレーの家がある。家に帰って少し寝たいとも思ったが、博物館に行くという楽しみのほうが勝った。まあ、どっちにしろついていくしかないのだが。ついていかなかったらきっとシャレーに怒られることだろう。


 十字路を過ぎ町の中心である広場へと差し掛かる。広場には円形の噴水と噴水の周りに並べられたベンチがあり町に住む人々の憩いの場となっている。また、広場を囲うように衣料品をはじめとして輸入品店などといった様々な店が建ち並んでおりこの町で一番栄えている商店街といえる。まあ、街といえるほど店の数があるわけではないのだが。なお、馬車などといった乗り物が乗り入れることができるのは広場までとなっているため、広場の南側にある馬車止めに馬車を止めて、広場のベンチに座り休んでいる行商人の姿を見かけることもある。


 そんな広場を東へと行く。たしかこっちの方にはガランの家があったはずだ。両側に住宅が建ち並んでいる。この辺りは住宅街だ。道を少し進むと小さな川を渡る橋に差し掛かった。この川はなんといっただろうか。川の名前は忘れたものの、源流がどこにあるのかは知っている。学校の裏にある森の中だ。森のどこかに源流があるらしいのだがそもそも森が入り組みすぎていて、森の奥までの立ち入りは禁止されているため、詳細な場所まで知る人はいないらしい。


「知ってるとは思いますが、ここが僕の家です」


 橋を渡ろうとしたところ、ガランが一軒の家の前で立ち止まりそう言った。


「わりとでかい家なんだね」


「わりとでかいとは、失礼だと思います」


 僕の言葉にガランはすぐに反応した。わりとでかいという言葉が気に入らなかったようだ。


「僕の家に用は無いですし、このまま急ぎましょうか」


 と、ガランは言いそのまま素通りしようとしたところ家の扉が開き、ガランの母親が出てきた。ガランの母親と直接話したことは無い。参観日の日や町中でたまに見かけるくらいだ。


「あら、ガラン。その子達は友達かい?」


「そうだけど。だったら何、母さん?」


 なんだか面倒くさそうにガランは返事をする。


「少し寄っていかないかい? お菓子ご馳走するよ」


「お菓子!?」


 僕は思わず反応してしまう。ちょうど少しお腹が空いていたところだし、少しくらい寄ってもいいんじゃないかと思うんだ。


「ラナー。君は……まったく」


 そんなことを言いながらも、シャレーもお菓子という言葉に誘惑されているのか、チラチラとガランの家の方を見ている。


「はぁ……、分かりましたよ。博物館に行く前に、僕の家で休憩していきましょうか」


 ――――――――――――――


 なんだか、甘い匂いに釣られて目が覚める。この匂いはクッキーだろうか。見慣れない部屋、見慣れた友人たち。もっとも、その友人達は10歳だが。


「クッキーもう少しで焼けるわよー」


 とても懐かしい、ガランの母親の声が聞こえる。ガランの母親の声を聞くのは8年ぶりだ。そうか、この見慣れない部屋はガランの家の居間か。


「わーい。クッキー!」


 少年ラナーが、その言葉に反応した。とても子供らしい反応でいいと思います。


「母さんのクッキーを食べれる事に、感謝してくださいね」


 ガランはなんだか得意気だ。


「ああ、楽しみにしておくよ」


 シャレーもなんだか楽しそうだ。

 子供らしい話に耳を傾けているうちに、クッキーが運ばれてくる。


「さあ焼けましたよー」


 ガランの母親がテーブルの上にクッキーが山盛りになった皿を置く。焦げてもいなく、焼き不足でもない、程よく茶色になったクッキーはとても美味しそうだ。


「ありがとう母さん」


「あら珍しい、ガランがお礼を言うなんて」


「そんな事ないよ」


 何気ない、親子の会話。しかし、その会話はとても楽しそうで、何だか俺も楽しくなってくる。


「ふふふ、そうね。みんな飲み物は何がいい?」


「僕、オレンジジュースで」


 何とも図々しい奴だ。子供の頃の俺。まあ、子供だから仕方ない。今の俺は遠慮するくらいはできるし、無理言うことは無いはずだ。遠慮できるよな……。


「俺も同じので」


 シャレー、こいつ本当に10歳か。あまりにも大人びすぎている気がする。敬語なんて使いやがって。10歳なら敬語なんて使う必要ないだろ。いや、俺が子供すぎるだけなのか?


「僕もオレンジジュースでいいよ」


「それじゃあ、オレンジジュース入れてくるから、クッキー食べててね」


 ガランの母親はそう言うと、キッチンへと戻っていく。


「美味しいねー。クッキー」


 クッキーを一枚食べると、口の中がサクッとした食感と優しい甘さでいっぱいになる。この味がとても懐かしい。もう一度食べてみたかった、絶品のクッキーだ。もう食べることはできないと思っていたため、物凄く嬉しい。なんというか、一枚食べるごとに幸せな気分に包み込まれるんだ。


「ふふふ、そうでしょう。母さんの焼くクッキーはすごく美味しいんですよ」


 なんだかガランは得意気だ。自分のことではないだろうに。


「ほんとだな。ガランが羨ましいよ」


 シャレーは羨ましそうにガランを見ている。


「ふふふ、そうでしょう。そうでしょう」


 オレンジジュースが入ったコップが載ったお盆を持って、ガランの母親が戻ってくる。


「まったく、ガランは何得意げになっちゃってんだか」


「別にいいでしょ。母さん」


 ガランは嬉しそうな笑顔でそう母親に言う。


「ふふ、そうね」


 ガランは、普段俺やシャレーといる時には見せない、安堵しきったような笑顔を母親だけには見せる。しかし、この光景が見られるのもあの日、襲撃のあった日までだ。あの日以降、この笑顔を見せることは無くってしまった。どんなに話しかけても、どこか上の空で適当な返事が返ってくるのみ。表情も常に暗かった。あの日々を思い出すたびに、胸が苦しくなる。なんとしても、襲撃の被害を少なくしなければならない。俺自身、あの日失ったものは多い。多すぎるのだ。

 しかし、分からないことがあまりにも多すぎる。襲撃があった日の正確な日にちに、襲撃の目的。それが分からなければどうにもならない。俺は考えを巡らせる。しかし、それ以上のことは思い浮かばず考えるのをやめた。

 ひとつだけ思い出したことがある。あの日、あの夜、空に月は無くひたすらに暗かったことを。

読んでくださりありがとうございました。

しばらくは、1週間に1話ずつ更新します。

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