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紙に書かれていた内容とは

この話から第1章が本格的にスタートです。

 学園長室を出た俺とシナンは、まず紙に書かれた内容を確認するためにレストランウィンドールとは別の学園長室から1番近い西館にあるカフェテリアビレッジへ向かっている。


 少し、話し合った結果そこで紙の内容を確認しようということとなったのだ。


「それにしてもまさかだったな、てっきり退学処分になるのかと思ってたよ」


 俺のその言葉にシナンは同意するように頷く。


「あぁ、私もそう思っていたよ。私は退学ではないとしてラナーお前は絶対退学だとな」


 シナンのその言葉に随分とひどい対応だなと思いながらも態度には見せないようにしながら話を続ける。


「それにしても、なんで旅なんか行かなきゃいけないんだよ」


 そういえば、シャレーは魚のフライを食べてくれただろうか?昼食のことを考えたらお腹が空いてきた。


「仕方ないだろ、決まりなんだから。私がしっかりと同行者としてお前を監視するぞ」


 俺はもうシナンのその言葉などほとんどなにも聞いていなかった。なにせ俺はまだ昼食を食べていないのだ。今すぐにでも走って早くカフェテラスビレッジへ行きたい。


「あの、シナンさん早くカフェテラス着きませんかね?」


 しかし、急ぎたい気持ちとは裏腹に先程からいっこうにたどり着く様子がない。


「あぁ、そうだな…それはそうなんだが、ところで現在地がどこらへんか分かるか?」


 どうやらまた俺たちは迷子になっているらしい。


「俺に聞かないでくれ。えーと今向かってるのが西館だから、西の方へ行けばいいんじゃないか?」


 西はたぶん今向かっている方とは反対側だろう。勘でしかないが。


「そうだな、西の方へ向かおう」


 その後向かっていた方向と反対側へ歩き、なんとか西館にたどり着くことができた。本館恐るべし。


 西館は、1・2年次専用の校舎となっており俺たちは昨年までこの棟で授業を受けていた。


 そのため西館で迷うことはめったにないのだが、3年次以上になると授業を受ける校舎が東館になるため校舎が変わって数日しか経っていない俺たちは東館の構造を理解できていないため東館ではよく迷うことがある。


 西館の中でもカフェテラスビレッジは、本館に近い位置にあり生徒があまり来ないというのもあるが、今の時間では授業を受けている生徒が多いということからかなり空いていた。


 ここにいるのは、授業数がそこまでないという人だろう。俺もそんな生徒たちの一員だったので、かなり楽をしていた。


 カフェは、統一感のある白の内装で彩られており、カウンター席が10席ほどとテーブル席が15席ほどあるようだ。


 俺たちは15席ほどあるテーブル席の1席に座り、料理の注文を済ませてから、先程学園長にもらった紙に目を通す。詳しい説明が書かれているらしいが何が書かれているのだろう。


 読み進めていき、紙に書かれている内容がとんでもないものだと気づく。紙に書かれている内容をおおまかにまとめるとこうだ。紙には実際はもっと難しい感じに書かれている。細かいところは、良く理解できなかった。


 旅費は自分で用意してね!


 国については3カ国以上は必ず周ること!


 国境通行許可書については…頑張れ!


 半年経ったら学園長に連絡してね!


 出発はいつでもいいよ!


 旅支度も自分でしてね!


 次に書かれていたのは、目的についてだが、目的は学園長が言っていたこととほぼ同じようで、世界中を自分の目で見て周ることと自分がやりたいことを見つけることというふうに書かれていた。


 ついでに、学園長の通信番号とやらも書かれている。


 そして最後に遠距離小型多機能通信機の取り扱い説明書が裏面に書かれていた。内容はこうだ。


 遠距離多機能小型通信機は、遠距離通信機の小型グレードアップ版です。小型で、持ち運ぶことができるため外での通信が可能です。


 機能としては、通信 録音 撮影 などが主な機能となっております。また、所持者により機能が自動的に追加されることがあります。


 通信したい人の通信番号を登録することによってその人との通信が可能となります。


 なるほど、上のほうに書かれていた学園長の通信番号はそのことだろう。


 紙を読み終わったタイミングでちょうど料理が運ばれてきた。


 念願の昼食だが、どうも気分が乗らない。料理のメニューは、海紅茶にごちゃ混ぜハヤシライスだ。海紅茶は王都ウィンレドの名物であり、海のように青い紅茶である。ハヤシライスには名前通り具材がごちゃごちゃに入っている。美味しそうだ。美味しそうなのだが。


「読み終わったか? この旅なかなかキツいぞ」


 気分が乗らないのは、そのせいだ。何よりキツいのが、旅費の問題と国境通行許可書のことだな。


 旅費はなんとかなるとしても、国境通行許可書は一定以上の国からの信頼の上で発行される許可書だ。

 あまりの無理難題にシナンは頭を抱えている。


「そうだな、それが一番の問題だ。国境通行許可書はどうすれば手に入るんだ?」


 国からの信頼を上げるというのは中々大変なことであり、国から出たことがないという国民はかなり多いと言われている。


「ラナー、ちなみにお前今お金どれくらい持ってるんだ?」


 今、俺は財布に全財産が入っているのだが、何円くらい入っているのだろう。


「まさか、その財布が全財産ですとは言わないよな……」


 なぜシナンには分かっているんだ。まさか超能力というやつか?


「は、はいおっしゃる通り全財産です」


「ちなみに昼食代を払って残るお金はどれくらいだ?」


 急いで俺は、財布の中を確認してみる。財布残高1000Eで昼食代は990Eとなる。

 つまり…………。


「10Eですシナンさん」


 2人の間に悪い沈黙が流れる。


 この時点でもうすでに旅の雲行きが怪しくなってきたが、俺たちの物語はまだ始まったばかりである。この先いったいどうなることやら………。

1Eは日本円でいうところの1円です。

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