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丸一日の金稼ぎ 中編 1 荒れ果てた村

「ここがアレー横断街道の一部であるセンヤ街道だ」


 俺たちは理由も分からず、リバンにセンヤ街道とやらに連れてこられていた。


「センヤ街道ってどこなんだ? あとアレー横断街道も」


 リバンがそれらの言葉をスラスラと話していくので、両方知らない俺はリバンに聞く。


「なんだ、知らないのかい?」


 どうやらリバンは、俺が2つの言葉を知っているという前提で話していたらしい。


「知ってるわけないだろ、俺たちが旅に出たのはつい数日前だ」


「ラナー、それはお前の勉強が足りないだけだ」


 シナンに責められてしまった。ごめんなさい。


「そういうことならまた説明だね」


 よかった、2つの言葉について説明してくれるらしい。この他にも色々と書きたいことはあるがとりあえず今はこれを聞こう。


「まず、アレー横断街道ってのはアレー地方を東から西に横断する街道のことだ。ちなみに、ヴィージャンド王国を通るルートと通らないルートがあるんだが、違いは所要時間ってとこかな」


「どっちのほうが早く着くんだ?」


「そりゃ、もちろんヴィージャンド王国を通るルートだ。ただ、国境の通行を許されてる人しかそっちのほうを通れないんだ」


「ほう」


 何がなんだか分からないが、とりあえずここは分かったことにしておこう。シナンならアレー横断街道のことは、知っているだろうしいいだろう。なんせ、シナンは学力1位だからな。


「で、センヤ街道とはなんなんだ?」


 理解は、シナンに任せておくとしてセンヤ街道について聞く。


「センヤ街道ってのは、アレー横断街道の一部でセントラとヤセンを結ぶ街道を言うんだ。で、今いるのがそのセンヤ街道ってわけだよ」


「なるほどな」


 なんとなくだが理解することができた。センヤ街道については案外分かりやすかったな。しかし、問題は全くといっていいほど解決していない。本題が分からないのだ。どんな理由があってここに来たのかが。


「で結局、そのセンヤ街道に来た理由はなんなんだ?」


「そりゃ、依頼を達成するために決まってるじゃないか」


「そうだったのか?」


「そうに決まってるじゃないか。むしろ、どういう理由だと思ったんだい?」


 どういう理由だと思ったかだって。そんなのひとつに決まっている。


「その隣街のヤセンとやらに行くのかなと」


「行くわけないじゃないかい。ヤセンはセントラとだいぶ距離があるんだよ」


「そうなのか」


「とても、徒歩で1日で行ける距離じゃない」


「何日くらいで行けるんだ?」


「最低でも2日は必要だな」


 とりあえず分かったことは、ヤセンの街に行くわけではないということだ。依頼の現場へ向かっているということでいいだろう。


「それで、結局どんな依頼で街道に来たんだ?」


「街道の道中にある、村の道を直してくれって依頼だ」


「なるほどな。リバンは道なんか直したことあるのか?」


「そりゃあ、あるさ。何回もな」


「何回もって……」


「それじゃあ、まるで旅人ギルドは何でも屋みたいじゃないかって思ったか?」


 いや、そんなこと思っていない。何回も直してるなんてすごいなぁと思っただけだ。


「実際旅人ギルドは何でも屋みたいなもんだよ。いろんな種類の依頼がくるからね」


 とりあえず、ここはリバンに話を合わせておこう。


「そうなのか。そりゃ大変だな」


「おいおい、ラナー。もう人ごとじゃないからな。君たちは既に旅人ギルドに入ってしまったんだから」


「でも、なんで旅人ギルドに道の修理なんかっていう依頼が来るんだ?」


「その方が楽だからだよ。旅人ギルドへの依頼だと手続きが少なく済むんだ。依頼の報酬額と依頼の内容を伝えるだけであとは勝手に旅人ギルド側がやってくれるんだ。だから旅人ギルドの依頼数は以外と多いよ。まあ、その依頼を受けれる人は少ないんだけどね」


「なるほどな」


 なんとなくだが理解することができた。


「で、その村はどこにあるんだ?」


「もうすぐのはずだよ。ほら見えてきた」


 リバンが言ったとおり前方に石造りの建物が集まった集落が見えてきた。ここから見る限り建物の数は少ないように見える。規模から見るに村と言って間違いはないだろう。旅人通りから歩いて2時間といったところか。村まではその程度で辿り着くことができた。セントラからそれほど離れてはいないようだ。


 村が見えてから、少し歩き村の門を通り村の中に入ると、そこには荒れ果てた道が建物と建物の間を通っていた。どこの道も荒れ果てている。もちろん村を東西に貫いている街道もだ。


「これは……ひどいな」


 村に着いてから最初に言葉を発したのはシナンだった。村に来るまでの道中はほとんど言葉を、発していなかったので約2時間ぶりということになる。


「本当だな……」


 これは、ひどい。いくらなんでもひどすぎる。ここまでひどいのは見たことがない。


「この依頼が出されてから、既に2日が経過しているから少なくとも2日間はここの村の人達はこの状態で生活していたようだね。これは、一刻も早く直してあげないすぐと。まずは村長のところへ向かおうか」


 リバンのその言葉に俺たちは頷き村役場へ向かう。村の入り口に建てられていた地図看板によると村役場は村の中心付近にあるようだ。とはいっても小さい村なのですぐ村役場に着くことができた。


 村役場、村の中でもひときわ大きい建物の中に入ると早速村長の元に通された。村長はその役職に似つかわしくかなり若めに見える村長だった。


「君たちは、依頼を受けてきてくれたんだね?」


「はい。そうです」


 村長の問いにリバンが答える。


「では、早速だが君たちに道の補修を頼んでいいかな?」


「はい。もちろんです」


「道具は、用意してあるから頼んだよ!」


 と村長は言い、俺たちを村長室から道の補修へと向かわせた。


 村長の言葉に従い、道具を手に持ち村役場から出たのはいいのだが、どこからどう手をつければいいのか。分からない。


「それにしてもいったい、何があってこうなったんだろうな」


 とシナンに尋ねる。シナンなら原因を知っているだろうか。


「ついさっき村に着いたばかりの私に聞かないでくれ。分かるわけないだろ」


「そりゃそうだな」


 シナンも分かるわけないか……。ダメ元でリバンにも書いておこう。


「リバンは原因分かるか?」


「詳しい原因はわからないな。でもな、なんとなくだが想像がつくような気がするよ」


「なんなんだ?」


「害物のせいだろうな。きっと」


「害物のせい?」


 害物……ああ、あれか。草原ヘビか。それと同じような奴がいるのだろうか。あいつもなかなか強敵だったからな。


「害物ねー。俺知ってるぞ。草原ヘビとか」


「なに!? 草原ヘビを知っているのかい? 害物指定23番の草原ヘビをかい?」


 草原ヘビという言葉に、リバンは物凄く食いついてきた。


「その、害物指定23番ってのはなんだか分からんが、俺は採石場の草原ヘビを倒したからな」


「原因が分からない以上変なことは出来ないな……とりあえず道を直さないか?」


 シナンから冷静な提案が飛んできた。しかし、リバンは、そんな言葉など耳に入っていないらしい。


「草原ヘビをた……倒しただと。……草原ヘビの生き残りなど居たのか」


「おーい、リバン!」


「はっ、すまない。そうだな……、とりあえず道を直そうか」


 一応話は聞いていたらしいリバンはそう言うと、鞄の中から地図を取り出し俺たちに見える位置に置いた。どうやら分担して道を直すらしい。地図で見る限り村は、それほど大きくなく外周を柵で囲われているらしい。


「それじゃあ、ラナーはこの辺りでシナンはこの辺りでいいか?」


「構わないが……リバンはどこの道を直すんだ?」


 シナンからリバンへの問いかけだ。


「俺は、街道とか中心付近を直そうと思うよ。……あとはそうだな。なんかあったら連絡してくれ」


 連絡してくれと言われてもできないじゃないか。する方法がない。


「どうやってだ?」


「まあ、そうだな。街道に来てくれ」


 それじゃ。と、シナンとリバンとは一旦別れ、それぞれの持ち場へ向かう。俺は村の北部分だ。畑などが多いのが北側である。


 というわけで、シャベルややツルハシを手に数分歩き北側に来たわけだが見るからに北側の方が道が荒れている。原因は、いったいなんなのだろう。


「ここらの畑使われてるのか?」


 畑は一面全て、道と同様荒れており作物などは植えられていないようだ。作物を作るにしても水はどうしているのかと思いあたりを見回す。少し離れた場所に、石で作られた古ぼけた井戸があり、そこから水を汲み上げているようだ。


「井戸か、うっ喉が渇いた……」


 井戸を見た途端に喉が渇いてきたので、井戸に近寄り中を見る。井戸はかなり深く掘られているようで底が暗く、見えない。カゴをおろしてもおろしても、水に着かない。水は、どれくらいの量が入っているだろうか。小石を足元から手に取り井戸の中に試しに投げようとするが、よく石を見ると汚い。魔法を使って石を綺麗にする。風で汚れを払い、小石をポーイと井戸に投げ入れた。水魔法を使えば、喉の渇きも癒せるような気もするがそれは嫌だ。あの水どこから出てくるのだろうか。


「1.2.3.4.5.6.7.8.9.10」


 どれくらいで、井戸の底に石がつくかを数える。別に数える必要などないのだがあえて数える。


「23.24.全然底につかないじゃないか」


 なかなか底につかないためしばらく数えながら待ってみることにした。


「46.47.48、まだ底につかないのか…….」


 カーン!


 井戸の底から、硬いものに石がぶつかったような甲高い音が聞こえてきた。


「まさか、この音は……」


 井戸の底に石がついたということで間違いないだろう。しかし……、カーンか。チャポンでは無いのか。


「もしかして、水が枯れてるのか?」


 ここで、考える。まず何をするべきか。今は喉が渇いている。水を飲まなければ作業効率はきっと落ちるだろう。最悪倒れるなんてこともあるかもしれない。しかし、水が枯れている。でも飲みたい。よし決めた。


「井戸の底へ行ってみよう」


 きっと村の住人も困っているだろうしな。


 そう決意した俺は、村役場から長くて丈夫なロープを持ってきて垂らし、井戸の柱に縛り付ける。準備ができたため、垂らしたロープを掴み壁を伝いながら暗い井戸の底へ降りようとしたのだが……。


「剣、邪魔だな。でも、シャベルとツルハシは持っておきたいしな。そうだ!」


 剣を背中から下ろして井戸の横に置き、剣が吊るしてあった場所に剣の代わりにシャベルとツルハシを吊るす。重さは、吊るしていた剣ひとつとほぼ同じだ。


「よし、これでいいな」


 こうして俺は、シャベルとツルハシ、そして鞄を持ち。今度こそ、ロープを掴み壁を伝いながら井戸の底へ降りる。

読んでくださりありがとうございます。

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