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旅人ギルドでの再会

 裏道の脅威からなんとか逃れることができた俺たちはふたたび旅人ギルドの建物の前に来ていた。迷ったせいで夕方になってしまった。時間が遅くなってしまったが旅人ギルドで金稼ぎができるのだろうか。もう裏道のせいで疲れ切って体力はあまり残ってないんだけどな……。できれば疲れるようなことはしたくない。いや、無理な願いか。


「で、金稼ぎはどうすればできるんだ?」


 シナンに金稼ぎがどこでできるのかを聞いてみる。それが分からなきゃどうにもならないからな。


「それが……私にも分からないんだ」


「なに、分からないのか!」


「そこまで驚くことではないだろ……」


 金稼ぎをする手段が分からないというのならなぜ旅人ギルドに来たのだろうか。


「お前はギルドに加入した時の説明をしっかりと聞いていなかったのか?」


「説明?」


 なにか説明していただろうか。いや、そもそも記憶が曖昧だ。どのような説明をしていたか覚えていない。


「そもそも旅人ギルドはどんな施設だと言っていた?」


 なんと言っていたかだって。全くと言っていいほど覚えていない。でも確か……。


「旅人支援の施設だっけか?」


「ああ、大雑把に言うとその通りだな」


 どうやらそれは合っていたらしい。でも旅人支援の施設と言っていただけでそれ以外になにか言っていただろうか。


「詳しく言うと旅人支援の施設の続きの言葉だな。旅人の安全、旅費の確保」


 確かにそんなことを言っていたような気がする。今日は色々あったから忘れていた。セントラバーガー&サンドの美味しさ。そして裏道のせいだ。その2つのおかげで記憶が飛んでいる。旅人ギルドに加入したのは午前のはずなんだけどな……。


「で、重要になってくるのが後者のお金の確保だ。旅人ギルドで金稼ぎできるということじゃないのか?」


「それは……そういうことなのか?」


「私に聞かないでくれ。金稼ぎの詳しい手段は分からない」


「とりあえず、中に入ってみようぜ」


「そうだな」


 旅人ギルドの両開きの扉を開けて中に入る。ここを出てからそこまで時間が経っているわけではないのだが、ものすごく久しぶりに来たような感覚に襲われる。


「で、中に入ったのはいいけどどうすればいいんだ?」


「中に入ろうと言ったのはお前じゃないか……。考えてなかったのか?」


「ああ、考えてなかったさ。とりあえず中に入らなきゃなんにも始まらないじゃないか」


「それはそうだが……」


 中に入ったのはいいものの金稼ぎをどうすればいいのかイマイチ分からない。これは入る前から分かっていたことだけどな。


 換金をしに来た時はどうしたんだっけかなと思い午前のその時のことを必死に思い出す。確かあの時は……俺より少し年上の旅人の青年に声をかけられてどうにかなったんだっけな。あの時もそうこんな風にオロオロしていたんだっけ。そこで不意に通りかかったその旅人の青年に声をかけられて。


「おや? 君たちは」


 不意に後ろから声をかけられた。どこかで聞いた覚えがある声だなと思いながら振り向くと、そこに居たのは困っていた俺たちを助けてくれた青年だった。


「やあ、また会ったね」


「こんにちは! 午前中はありがとうございました」


「感謝なんかいらないさ。困っている人を助けるのは当たり前のことだろ?」


「それはそうかもしれないですけど……」


「で、君たちはもう換金し終えたのかい?」


「換金は終わりました。ただ……」


「換金額に満足いかなかったのか?」


「いえ、そういう訳ではなくてですね。今度は金稼ぎがしたいんです」


 俺のこの言葉に旅人の青年は顔を崩して笑いながら言葉を発してくる。


「なんだ、そんなことかい。それならそうと最初から言ってくれればいいじゃないか」


「いや、だって話を勝手に進めたのはあなたじゃないですか」


「ん? そうかい。まあその話はあれだ、オレが奢ってやるから何か食べながら話そうや」


「そ、そうですか」


 まあいいか。今はこの人に従っておこう。シナンに視線を向けると頷いた。俺と同じ意見なのだろう。


 旅人の青年についていきロビーに設けられたカウンターの横にある扉から奥の部屋に入る。雰囲気はまるで酒場のようだ。しかし、相変わらず人はおらずどこか寂しくも感じる。


「そこの席に座ろうや」


 旅人の青年が座ろうと言った席は、丸いテーブルの周りに4つ椅子が置かれておりシナンと俺が隣り合って座り向かい側に旅人の青年が座る。


「2人とも酒は飲めるかい?」


「いや、俺は酒は苦手なんだ」


「私も飲めないな」


「そうか、それじゃ適当に注文してくるよ」


 そう言い、旅人の青年は注文をするためにカウンターへと歩いていく。それを眺めながらシナンに話しかける。


「あの人名前なんていうんだろうな」


「名前聞いてないのか?」


「聞くタイミングなんてなかったからな」


「それもそうだな」


 そんな会話をしたのちほどなくして旅人の青年は戻ってきた。青年は向かい側の席にザッと腰を下ろす。


「さて、話を始めようか」


 話とは何についての話だろうか。


「はい、お願いします」


 そんな俺の言葉を聞いてすこし旅人の青年は苦笑した。


「敬語はよしてくれよ。歳はそこまで離れてないはずだ」


「そうか、分かった」


 俺たちより歳上であろう相手に、敬語を使わないのは少し申し訳なく感じる。


「分かってくれればそれでいいさ。話を続けるぞ、単刀直入に言う。今日はもう金稼ぎをするのはやめておけ」


「なんでだ?」


 なんでですかと言いそうになり途中で言い直す。敬語はよせと言われたからな。


「もう時間が遅いだろ。旅人ギルドの金稼ぎってのは時間がかかるのが多いんだ。旅人には時間が有り余るほどある奴が多いからな」


 なるほど……そう言うならその通りにしておこうか。


「だそうだが、シナン……どうする?」


 シナンは少し考えこむ仕草を見せてから決意したように俺に言葉を返す。


「そうだな……。その人の言う通りにしておくべきだろうな」


「だそうだ。あんたの言う通りにさせてもらうよ」


 そう言うと旅人の青年は、僅かに嬉しそうな表情を見せてから口を動かした。


「そういや自己紹介がまだだったな。オレの名前はリバン・グラーツだ。よろしくな!」


 自己紹介には自己紹介で返さないとな。


「ああ、よろしく。俺の名前はラナー・グレンテルだ」


 俺に続いて、シナンが自己紹介をする。


「私の名前はシナン・レセストリー。よろしく頼む。主にラナーをな」


「ふむ、ラナーにシナンだね」


 シナンがひどい自己紹介をしたのは置いておこう。


「それよりだ、俺たちが旅人ギルドに加入したって知ってたのか?」


「お金を手に入れるのは旅人ギルドに加入してないとできないんだ。君たちも加入したから金稼ぎをしようとしたんだろ?」


「確かにそうだ。それだけで分かるなんてすごいなリバン」


「いや、この程度の予想簡単さ。そんなことより早く話を再開しようか」


 少し次の言葉までに間を置いてからリバンは話を再開した。


「君たちは金稼ぎがしたい。しかし、どうすればいいか分からない。明日はオレと一緒に行動しないかい?」


「一緒に行動って?」


「言い方が悪かったな。一緒に金稼ぎをするってことだ」


 確かにそれはいい案だ。詳しい人がいることほど頼もしいことはない。


「俺はいいけどシナンはどうだ?」


「私も同意する」


「よし、決まりだな。もう頼んだものが運ばれてくるだろうしそれを食べ終えたら解散だ。明日は朝8時に旅人ギルドロビー集合だ! 忘れるなよ」


「了解!」


 俺とシナンがリバンの言葉に同時に返事をした。


 そうえばリバンは何を頼んでくれたのだろう。まあもう夕方だからどんな物でも夕飯みたいなもんか。本当にリバンには色々感謝しなければな。

読んでくださりありがとうございます。


新キャラ登場回です。リバン・グラーツです。厳密に言うと新キャラではないですが本格的に登場という面でいうと新キャラです。

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