旅人ギルドにて 後編
前編中編に続き後編です。
様々な国の建築様式を組み合わせたような建物の旅人ギルドに入ると、外装と同じく内装も様々な国の建築様式が取り入れられていた。
「へー、すごいな。ここが旅人ギルドか」
「建物に凝ってるようだな。旅人ギルドは」
「さて、換金しないとな」
換金したい。とはいえ初めて来た場所なので何がどこにあるか分からない。
まず今いる大広間のような部屋をぐるっと見渡してみる。
ギルドのロビーらしき部屋にはテーブルとイスが設けられているが、人はおらず閑散としている。
テーブルの上にはメニュー表らしきものも置かれているため、飲食することができるのだろう。
とりあえず、誰かに換金方法を聞きたいんだけどなと思ってオロオロしていると、通りかかった1人の旅人が話しかけてきた。建物内で唯一の旅人らしき人だ。
俺より少し年上ぐらいの青年が声をかけてきた。背は俺より少し高く髪色は茶色と赤が混ざったような色。瞳の色は茶色。大きな鞄と剣を背中に背負っていたので旅人だと分かった。旅人は自衛のために武具を持っている人が多い。
「何かお困りかい?」
「はい、ここには換金をするためにやってきたんですがどこで換金すればいいか分からなくて」
「なるほど、そういうことか。それなら俺についてきな」
「は、はあ」
旅人の青年についていく。部屋の奥のカウンターを左に曲がりそこをまっすぐ進んだ場所の扉の前で立ち止まる。
「ここで、換金ができる」
「ありがとうございます」
「いやいや、どういたしまして。君たちも旅人なんだろ?」
「はい、そうですが」
「旅人ギルドには加入してないんだろ?」
「それがどうかしましたか?」
「加入するのをお勧めするよ。それじゃ良い旅を!」
「はい!」
その場を立ち去る旅人の青年の背中を見送る。旅人の中には親切な人もいるもんだな。さて、まずは換金だ。
扉を開け換金部屋へ入る。換金室と呼ばないのは監禁室と捉えられてしまいかねないからだろう。どちらも変わらない気がするが。
「ようやく換金ができるな」
「ああ、そうだな。これ換金お願いします」
石類と宝石類をカウンターに置きつつ、シナンの言葉に答えながら換金員に換金をお願いする。
「換金承りました」
換金員は、道具箱からルーペを取り出して石と宝石類を詳しいところまで鑑定する。数分ですべてのものを鑑定し終えたのか、換金員さんは紙に何かを書き始めた。そして、その紙を俺たちの方に向けて話し始めた。
「今回の換金額はこちらになります。かなり良い質の石がありましたのと、宝石類は原石のままですが加工すれば、質の良い宝石になるためこの金額となっております」
紙に書かれていた額は、20000E。信じられない額だ。思わずシナンは聞き返す。
「こんなにいいんですか?」
「はい、私の目に間違いはありません」
「ラナー。これはすごいぞ! 10000Eずつ山分けだ」
「あ、ああ。そうだな」
換金員さんはそんな俺たちの様子を気にかけながらも話し続ける。
「あの、よかったら旅人ギルドに加入してみませんか?」
その勧誘にシナンが質問で聞き返す。
「そもそも、旅人ギルドってなんなんだ?」
「旅人ギルドは、旅人のためのギルドです」
「いや、それは知ってるんだ。詳しいことをだな」
「そして、作られた目的は旅人支援のためです。旅人の安全、旅費の問題の解決。そのようなことをするためのギルドとなっております」
「なるほど」
「続けますね。そして、ここは旅人ギルドのセントラ支部です」
「支部!?」
ここが支部なのか? 支部にしては随分と豪華な建物だ。
「だそうだが。どうする、ラナー? 私としては旅人ギルドに加入してもいいと思っているんだが」
「俺もそう思う。だけどな…………」
「何かあるのか?」
たしかに良いんだ。加入するべきだとは思う。特に俺たちみたいな半人前の旅人は絶対な。ただひとつ気になることがある。
「ひとつ質問いいですか?」
「なんでもどうぞ」
「俺たち一応、学生という身分なんですけどいいんですか?」
「はい、問題無いですよ」
どうやら、大丈夫らしい。それならもう決まりだな。入るってことで。
「旅人ギルドに加入します」
「分かりました。それでしたら奥の部屋に移動してください」
カウンターの横にさらに奥に続く扉があった。入ったときは気づかなかったな。
「それではどうぞ」
換金員さんが扉を開けて部屋の中に入るように促す。そこの部屋にはロビーと同じようにテーブルとイスが並べられているものの、相変わらず人は誰もおらず閑散としている。さらにその奥に行き、ギルド長室と書かれた扉の前で換金員さんが一言。
「支部長、加入希望連れてきましたよ」
「おお、加入希望かな? それは珍しい。中へ通してくれ」
部屋の奥の方から初老の男性の声が聞こえてきた。いったい何がどうなるのだろう。
部屋の奥へ言われるがまま連れていかれそこにいたのは声の通り見た目は初老の男性だった。しかし初老に見えない。どこかそんな気迫がある。
「わしが旅人ギルドセントラ支部、支部長のロマナエ・デンテクルじゃ」
この初老の男性改めロマナエさんはどうやらギルドマスターらしいので一礼する。
「君たちが加入希望かね?」
「はい!」
俺とシナンがちょうど同じタイミングで答える。それと同時に背を伸ばす。
「かしこまる必要はない。少し書類を書くだけじゃからな」
そう言って俺たちに渡されたのは名前や経歴や特技などといったものを記入する紙だった。その紙に名前から特技までさらさらと書いていく。
書類を渡すと、ギルドマスターはカードのようなものを取り出しそこに何かを書き込んで俺たちに手渡す。
「そのカードがギルドカードじゃ。簡単に言えば旅人ギルドに加入しているという証明書じゃな」
「なるほど…………」
「とりあえずこれでギルドへの加入は完了じゃ。詳しいことは書類を確認しとくれ」
「ありがとうございました」
そう言い、俺たちはギルド長室から出てイスに腰掛ける。
こうして、俺たちは旅人ギルドへの加入が完了した。これで旅の安全は確保されたと言えるだろう。お金も入ったしひとまず問題は解決だ。
読んでくださりありがとうございます。
旅人ギルドでの話は次も続きます。