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強制的な冒険譚 魔法が消えつつある世界にて  作者: 川理 大利
第1章 3部 セントラへの旅編
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採石場跡を発つ

 星歴 1314年 4月24日 8時25分


 採石場跡の地上の建物の外でしばらく待っていると、4つ目の建物の扉が開きシナンが出てきた。どうやらシナンは俺が4つ目に探索した建物で寝泊まりしていたらしい。


「おはよう。今日はやけに早いな」


「おはよう。腕時計壊れちゃって時間分かんないんだよ。新しいの買わなきゃな……」


「なるほど、そういうことだったのか。そんなのこれ使えばなんとかなるだろ 」


 そう言ってシナンが鞄から取り出したのは遠距離小型多機能通信機だった。そうえばそうだったな。それに時計機能付いてたっけな。


 でも俺は…………。


「俺は腕時計の方がいいんだよ。腕を見るだけで時間が確認できて便利だろ?」


「た、確かにそうかもしれないが…………」


 俺は、腕時計について強いこだわりを持っている。腕時計は時間を知りたいなというときにすぐ分かるからそれが便利なんだ。そのうえデザイン性にも優れている。それに比べて遠距離小型多機能通信機はダメだな。


 デザイン性は皆無だし、いちいち起動しなきゃいけないのは面倒だ。

 サッと確認できる方がいい。


 なんだか、買いたいものが色々できてしまったな。服に腕時計に…………。そして旅中の食糧。


 俺が服と同等、いやそれ以上に困っているのは食糧のことだ。鞄の中には食料など入っておらずシナンから持ち運びできる保存食をもらい食べている状態だ。


 それらがセントラで売っているといいのだが。そもそも今向かっているセントラとはどのような街なのだろう?


「なぁ、シナン」


「どうした?」


「これから向かうセントラってどんな街なんだ?」


「それは、着いてからのお楽しみだ。と言いたいところだが1つ教えておこう。王都に次ぐヴィージャンド王国第二の都市だ」


「そして、四街都と呼ばれている」


「で、詳しいことは?」


「詳しいことは着いてからのお楽しみにしといてくれ」


「なんだ、残念だな」


 故郷から王都へ行くときに通ったはずなのだが覚えがない。しかしそれも仕方のないことだ。馬車に乗りっぱなしだったからな。でもそのときは乗り物酔いにはならなかった。きっと話し相手がいたからだろうな。いかんいかん思考が脱線してるな。


「ラナー、ここを出る準備はできてるか?」


「あぁ、準備はとっくにできてるさ」


「それでは行こうかセントラへ向けて!」


「おぉ!」


 さよなら、採石場跡。滞在したのはたった数日だったけど色々なことがあった。


 巨大な草原ヘビに出会い、命からがら倒し。俺は気を失った。倒した代償に俺は大怪我をして今も包帯は取れないような状態だ。しかし俺は、採石場に感謝をすれこそ恨んではいない。


 もともと、あのヘビも被害者だったんだもんな。俺に会いさえしなければ今も採石場跡内部で暮らしていたことだろう。俺に世界の広さと厳しさを教えてくれたあのヘビに感謝をしなければな。


 さて、行くか…………。


 行きとは逆方向の採石場跡から街道へ向かう。丘を登って下る。さぁ、ここから街道までは全て平地だ。


 太陽は出ておらず、どこまでも広がる雲の下ひたすらに砂利道を歩き続ける。ジャリジャリと音を立てながら歩く。時間が分からないというのも案外いいものだな。


 自由だ。時間を気にしないということは。不安にもなってくるが、このどこまでも続く草原で何処へだって行けるそんな気分にさえなってくる。


 そんな開放的な気分で歩き続けていると街道が見えてきた。気分が気分だけにすぐ着いてしまったような気がする。一応時間を聞いておくか。


「今、何時だ?」


 シナンは、時間を確認して教えてくれた。


「今は、10時46分だな」


「そんな歩いてたのか…………」


「お前はどのくらい歩いているように感じたんだ?」


「せいぜい1時間くらいかな」


「それは羨ましい。私はいつ街道に出るかと何度も考えていたよ」


「そうだったのか」


 要するに気分次第ってことだな。人は気分で体調が悪くなるという迷信があるぐらいだしな。実際俺も気分が晴れやかな時は体調が物凄く良いが、気分が良くない時は体調も優れない。案外迷信は間違っていないのかもしれないな。


 街道に合流して北のほうを目指す。街道は砂利道ではなく、石で舗装されているので歩きやすい。通行する馬車の邪魔にならないよう道の隅を歩き続ける。


 もう街道の道中では用がないだろう。何か珍しいものがあったら拾っていきたいがたぶんそんなものない。ここは草原の真ん中だ。落ちている方が凄いだろう。


「ここからどれくらいかかるんだろうな?」


「現在地がどの辺りなのか定かではないからな」


「とりあえず、今日中には着けるだろ。ほら、もう中間地点までやってきた」


 シナンが指差した方を見るとウィンドレセントラ間中間地点と書かれた看板が立っている。良かった。中間地点までは来れているようだ。


「ラナー、ひと休みしていかないか? ここまで歩きっぱなしだからな」


「そうだな、そうしよう」


 そこでひと休みしていこうということになったので中間地点の看板の近くで座り保存食を食べながら休んでいると、街道を王都方面へ馬車が5台ほどガラガラと音を立て通っていった。王都へ行く馬車なのだろうか。それにしては数が多いな。


 とりあえず休憩が済んだらセントラへ向けて出発だ。今日中にはセントラに着けるだろう。あと半分だ。体力を振り絞っていかないとな。

次の話から新編に入ります。

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