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強制的な冒険譚 魔法が消えつつある世界にて  作者: 川理 大利
第1章 3部 セントラへの旅編
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草原での早朝修練

 星歴 1314年 4月24日 4時30分


 もう、朝なのか…………。腕にかけておいた時計は壊れてしまっており時間が確認できないが。感覚的には4時頃だろう。丸一日以上寝たせいでつい早起きしてしまった。ちょっと散歩でもしようかな。


 ベッドから起き上がり、右手で包帯を解こうとするが包帯を一度全て解いて後悔した。傷口がまだ治りきっていないからだ。かさぶたになりかけていた傷が包帯を解いたことによにくっついて血がにじみ出てきたのだ。どことなくグロい。基本的に服が破れたところが傷口になっているようだ。


 せめて服の破れたところは直したほうがいいなと思ったが、裁縫をするための道具がないのでどうしようもない。裁縫自体は得意だ。


 仕方ない、このまま散歩へ行こう。建物を出て迷わない程度に適当に歩く。外はまだ暗く明かりなどはない。砂利道を少し歩くと湖があり水が綺麗だったので顔を洗う。右手で水をすくい冷たい水をバシャッと顔にかける


「やっぱ、冷たい水で顔洗うと目覚めるなー!」


「戦闘の修練でもしようかな」


 目が覚めた俺は、戦闘の修練をすることにした。とりあえず採石場跡から少し離れた場所へ移動しよう。ここは草原のど真ん中だからな。人なんか来るはずがないのだからどこでもいいのだが、シナンを起こしてしまうという事態は避けたい。


 それにしても、俺があんな苦戦するとは思わなかった。それもそうか。初めての実戦だったわけだし。しかし、こんな痛手を負わされるとは………。少しいや、かなり悔しい。


 採石場跡から少し離れた場所にきて、右手で剣を鞘から抜く。左腕はまだ動かず体中が痛いので、体を動かしにくいが不測の事態に備えておけるのはいいことだ。


「まずは素振りだな」


 相手がいた方が修練しやすいのだが、相手などいない。そのため必然的に剣の素振りなどしかできないのだ。


 ビュンッビュンッビュンッ。

 まだ星の光が見え、どこまでも広がる海原のような草原に剣を振る音だけが響き渡る。なんだか気分がいい。草原を独占しているようで。


「ふぅ」


 剣の素振りを150回ほど終え一息ついた俺は、思いっきり剣を降ってみることにした。何か変化などあるだろうか。


「はぁー!」


 力を込めて剣を振る。ズザッと風を切り裂く音を立て辺り一面に生えていた草がスパッと切れる。


「やっぱ、剣の威力上がったよな…………」


 単純に俺の腕が上がったのだろうか? いや、それはないな。なにせ、俺はあのヘビと互角だった。魔法が使えていなかったら太刀打ちすることすらできなかっただろう。


 そうだ、剣先から魔法を出す練習もしておこう。ひと通りどの魔法も試してみるか。そう思い剣先を正面に向ける。


 まずは、光だ。光のイメージを持ち言葉を唱える。


「光よ!剣先から放たれよ!」


 ズバーッと白い光線が遙か彼方は向かって飛んでいった。光なので実害はないはずだ。


 と思ったのだが、光線の飛んだ場所の草が焦げて消えている。恐ろしい魔法だな。


 炎と水と氷は実戦で使い検証済みなので、残るは風と雷と闇だろうか? 俺の感覚では闇の魔法を使うのが一番難しい。


 次は、風だ。風の中で一番人にとって害があるものは冷たく強いものだ。イメージを浮かべ言葉を唱える。


「強く冷たい風よ、剣先から放たれよ!」


 目には見えることのない突風が剣先から飛び出していく。しかし、草が切れることはなく。突風に吹かれただけだった。威力を上げれば実戦でも使えるだろう……。使えるだろうか? 使う場面があるとすれば……。


「軽いものを動かす時とかに使えそうだな」


 風の次は、雷だな。とはいえ、嵐の日に落ちる雷ほど恐ろしいものでなくてもいい。例えるなら冬の日に鉄を触ると起こる静電気くらいでいい。静電気は嫌いだ。突然起きる静電気ほど嫌なものは無い。


「雷よ、静電気ほどの強さで剣先から放たれよ!」


 剣を持つ指先にビリッとくる感覚がくるとともに黄色だが少し白がかった光線が飛んでいった。光の魔法と同じく光線が通った場所は草が焦げていた。静電気にしては強すぎる気がする。光と同じく雷も使えるとな。威力を上げればかなり強い魔法になりそうだ。


 最後の検証は、闇の魔法だ。闇の魔法使うのが一番難しいと思うのはイメージがしにくいからである。普段の生活で闇など見る機会はないからだ。


 だとすれば、何をイメージすればいいのか。それは、目をつぶった時に見える暗闇だ。それをイメージすると威力は弱いが闇の魔法を使うことができる。


 暗闇をイメージして言葉を唱える。


「闇よ、暗い闇よ、一筋の闇となって剣先から放たれよ!」


 剣先からは黒い光線が飛び出していった。光線が通った場所からは草が根こそぎ消えている。闇の魔法は恐ろしいものだ。


 さて、結論から言うと実戦で使える魔法は、光、火、水、氷、微電流、闇の5つだな。いつか剣に魔法を纏わせて戦ってみたいが今の俺には無理だ。


 風の魔法は、もう少し工夫が必要そうだ。ちなみに魔法に属性などはないのだが、今の俺には基礎の魔法を使うことが限界だ。基礎以上の応用魔法など使えない。


 暇ができたら魔法に関する本を読もうとも思っているが、それだけで応用魔法について理解することができるだろうか。


 修練を終え空を見上げると少しずつ明るくなってきているのでそろそろ戻ろうか。まだ傷は痛むしな。


 帰りは走って戻ろう。これも修練のうちの1つだ。体力は魔法と剣技どちらにおいても大切だからな。手を抜くわけにはいかない。


 とはいえ、採石場跡からものすごく離れているわけではないので、走って3分ほどで戻ることができた。今は何時だろうか? 8時30分まではまだ、時間がありそうなので部屋に戻り休むことにした。


 部屋のベッドに横になり少し休んでいると、だいぶ外が明るくなってきたので荷物を全て持ち外に出る。この病院らしき建物とももうおさらばだ。


 朝日が眩しい。今日はどこまで行けるだろうか…………。セントラに着けるといいな。服新しいの買いたいし。

読んでくださりありがとうございます。

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