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強制的な冒険譚 魔法が消えつつある世界にて  作者: 川理 大利
第1章 3部 セントラへの旅編
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怪我と毒からの目覚め

 なんだ? 薬品の匂いか? 目が開かない。開かない感覚に抗い目を開ける。だめだ前が見えない。真っ暗なままだ。目を開けたつもりだったんだけどな。


「うぅ痛っっ」


 しかも体中が痛い。手を動かそうにも動かせない。なんだ? 俺はどうなった? 分からない何がどうなったんだっけ? もう何も考えられない。


「ラナー! 目覚めたのか?」


「よかった、目覚め…………」


 なんだ? シナンか? そんなことを思いながら俺は眠りに落ちた。最後なんて言っていたのだろう。体中が痛すぎて何も考えられないから寝ておくのが一番楽なんだ。


 色々な夢を見た。どこかへ遊びに行く夢少年時代の夢、故郷の夢、王都に初めてきた時の夢。そして、巨大なヘビと戦う夢。


 どれもとても懐かしく涙が出てしまいそうだった。なぜ、最後の夢が懐かしいと思ったのだろう。俺にもいまいち分からない。巨大なヘビってなんだっけ? どれも楽しい夢だった。しかしそんな夢は突如暗闇に包まれた。


 突然の覚醒感。目が開く。今回は視界は真っ暗ではなく、少し暗めの持ち運び可能なランプの光が見える。


 俺は、病室らしき部屋の白いベッドの上で寝かされていた。窓の外はもう真っ暗だ。外に明かりなどないので星がよく見えることだろう。ベッドの周りの棚には薬品などがたくさん置かれている。


「やっぱ、体中が痛いな。そして痒い。なんだ? 包帯が体中に巻かれてるのか?」


 まるで、害物の一種の包帯人間になったのかと思うほど、包帯がグルグル巻かれている。何があったんだっけ?


「手は…………動くな」


 一回起きたとき手が動かなかった。とりあえず動いてよかったと安心して腕を動かそうとするが左腕が思うように動かない。だめだ、動かすと痛いんだ。しばらくは動かせないだろう。


 ガチャっという音を立て扉が開き、シナンが部屋に入ってくる。


「ラナー、今度こそ目が覚めたか? まったく、大変だったんだぞ」


「大変だったって何がだ?」


 何が大変だったのだろう。そもそも、俺はなぜこんなにも怪我をしている。


「覚えてないのか? 私はな、地上まで運ばなきゃいけなかったんだ。お前を」


 シナンのその言葉で俺は全てを思い出した。なぜ忘れていたのだろう。俺は、巨大なヘビを倒したあと気を失ったのだ。


「今、全て思い出したよ。それにしても、左腕が動かないんだが何か知ってるか?」


「たぶんまだ回った毒が取れ切ってないんだろうな」


「毒か………どうりで動かないわけだ」


 毒が回ってしまうのも無理はない。俺は、一度牙がかすっただけでなくヘビの口に左腕を突っ込んだのだ。


「私は、草原ヘビの毒を食らって生きているのが奇跡だと思うがな」


「そんな危険な毒なのか?」


「草原ヘビの毒を食らったら、致死率70%とも言われている」


「そうなのか…………。それにしては治りが早いな」


 怪我も痛むには痛むが、傷はもうかさぶたになっている。左腕はまだ動かないが、それ以外は動く。左腕もそのうち元に戻るだろう。


「それは、この建物に置いてあった薬のおかげだろうな。今の薬よりも治りが良かったんだよ。不思議なことにな」


 昔の薬すごいな。あれ? 気を失ったのは、採石場の中だからここまで運んでくれたのはシナンなのか? お礼を言わないとな。


「ありがとな、シナン。ここへ運んで処置してくれんだろ?」


「いや、お礼を言わないといけないのは私の方だ。ありがとう。お前がいなかったら、私は死んでいただろう」


「それぐらいどうってことないさ。感謝しないといけないのは俺の方だ」


 そう言い、俺はもう一度窓の外を見る。外が暗くなっているのはもう夜になったからだろうか。


「それにしても、もう夜か。旅の2日目はいろんなことがあったな」


「2日目? いや、もう3日目の夜だ。4月23日のな」


「俺、丸一日以上眠ってたのか?」


「そうだ。おかげで石はたくさん拾えた。あと、宝石もいくつか」


 俺が、毒や怪我などで眠っている間にシナンは再び採石場へ行き石を拾っていてくれたらしい。


「ありがとな」


「ヘビのおかげと言うべきかな? ヘビが天井を崩してくれたおかげで石がたくさん拾えたんだよ。その中に宝石もあったんだ」


 ヘビのおかげか…………。ヘビはどうやら良いこともまたらせてくれたらしい。これでお金はもう心配いらなそうだ。


「私はラナーの荷物を取ってくるよ」


 そう言い、シナンは部屋から出て行った。


 シナンを追いかけようと思い、ベッドから立ち上がろうとした俺は着ている服を見て驚く。


「こりゃ、酷いな」


 制服が傷だらけだ。破れている箇所がかなりある。制服とももうおさらばだ。2年間ずっと着ていて愛着あったんだけどな。


 戻ってきたシナンから剣と鞄を受け取り、無事か確認してみる。鞄は、シナンが持っていてくれたので無事だ。剣は、鞘の中に戻されており無事そうだ。鞘から引き抜いてみると、なんだか少し刀身が長くなっているような気がした。気のせいだろうか?


 まぁ、それはまた考えてみるとして、シナンが荷物と一緒に保存食を持ってきてくれたので夢中で食べる。昨日の朝、朝食をとってから何も食べていないのでお腹が空いている。


「何から何までありがとな」


「これが今の私にできる、唯一のことだからな………。明日から旅再開できそうか?」


「大丈夫だ! 再開できる」


「よし! それなら明日の8時30分頃にここを出よう。それまでゆっくり休んでくれ」


「分かった」


「それじゃ、また明日。おやすみ」


「おやすみ」


 シナンは部屋を出て一階へ降りていき別の建物に向かっていった。俺も保存食を食べたら旅日記を書いて早く寝よう。一日も無駄にしてしまったからな。


 保存食を食べ終わり、ベッドに座り旅日記を書く。昨日の旅日記は書けていないので2日分を書く。巨大な草原ヘビのこと。シナンへの感謝の気持ち、それらを文字にしていく。


 旅日記を書き終わり、ベッドに横になり目を閉じる。こうして俺の旅の2日目と3日目は幕を閉じた。

読んでくださりありがとうございます。

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