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強制的な冒険譚 魔法が消えつつある世界にて  作者: 川理 大利
第1章 3部 セントラへの旅編
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分かれ道へ

 星暦 1314年 4月22日 8時50分


 巨大な門をくぐると、そこはもう活気溢れる街の中ではなかった。端が見えない青空にどこまでも続きそうな広大な草原。草原を東西に割りまっすぐ続く街道。この街道の名称はセンウィン街道といいセントラとウィンドレというヴィージャンド王国2大都市を結ぶ街道であるためそのような名称となっている。


 どこまでも続きそうな草原であるが、ヴィージャンド王国は草原の国と言われており国全土が草原となっているのだ。そのため王都の建物などはかなり多くが石造りとなっている。


 街道によってここの草原は割られており、王都から北を見て見て街道の左手側が南東草原。左手側が南西草原と言われている。方角で名称を決めるのが1番分かりやすいらしい。


 ちなみにこの2つの草原以外には、北東草原、北西草原、南草原がある。南草原以外は街道によって東西に割られている。シナンにそう教えてもらったのだがなんだか紛らわしい。


「とにかく、進むとしよう」


「そうだな」


 街道は、王都から出ると様子も打って変わりただただ長い道になる。道幅が王都内よりも狭く馬車同士がギリギリすれ違えるぐらいの幅のため馬車が通るとき歩行者はかなり危険なのだ。


 そのため歩行者は街道の隅を通るのを強いられる。かなり主要な道だから歩行者目線で整備してくれたっていいだろうに。しかし、それはないだろう。ほとんどの人が移動の際に馬車を使うからだ。俺たちのように歩いて移動する人はそうそういないだろう。


「それにしても、日差しが眩しいな」


「仕方ないだろ、日差しを遮るものなんて何もないんだから」


「暑くなってきたよ。まだ春に入ったばかりっていうのに」


「それも、しかたないことだ」


 西から吹く風は生温く、太陽の日差しが眩しい。良い天気なのだが最悪だ。せめて曇りだったらまだましだったろうに。


「ほんとに木の一本もないんだな」


 見渡す限りの草原、障害物など何もなく。海まで見えることはないが。海の向こう側にあるであろう山まで見える。


「昔の人は凄いと思わないか? こんな何もない草原の真ん中に街を作ったなんて」


 シナンが1人で話し続けている。


「いったい木はどうやって調達したんだろうな?」


 突然俺に話を振ってくる。


「アレン南大森林から切り出してきたんじゃないか?」


「アレン南大森林ね。でもそれだと遠すぎると思わないか?」


 アレン南大森林は、ヴィージャンド王国の西に流れるセレスト川の向かい側の隣国アレン帝国の南にある大森林のことをいう。木が鬱蒼と生い茂っているらしく、街道から逸れるともう二度と戻れないと言われている大森林だ。いつか行ってみたいとは思っている。森の中に入ったところできっと迷わない……と思う。


 王都についてだが、13区までの中なら木造建築もある。しかし13区以降はすべて石造りの建物となっているのだ。


「たしかに、遠いのか? だとなんだ、木が昔はこの辺にも生えてたってのか?」


 地理がよく分からないため適当に話を合わせておく。


「でも、確かめる手段なんてもうない。大昔のことだからね。ねえ、ラナー。どうして木は無くなったと思う?」


「さあな。俺には想像もつかないよ」


「私はそのようなことを考えるのが好きなんだ。一つ有力な説があってな。木を喰らい尽くす存在がいたとかでな」


「そうなのか、恐ろしい存在だな。おまえそういう道に進むのか? 考古学者というか歴史学者というか」


「私は、やりたいことを自分で決める。まあ、その道も良いとは思っているよ」


「シナンってすごいよな。卒業したあとにやりたいことがあって。俺なんて何も無いよ」


「旅の中で見つかればいいな、ラナーのやりたいこと」


「そうだな。見つかるかな、やりたいこと」


「きっと見つかるさ」


 俺には、夢ややりたいことなんてない。今は。昔はあったのだがもう忘れてしまった。いや忘れた。


「で、分かれ道まであとどれくらいだ?」


「歩き続ければあるだろ」


 なんて、シンプルな答えなんだ。いったい街道をどれだけあるけばいいのか。


 さらに歩き続け、王都が霞んで見えなくなり始めた頃。街道の西側に細い分かれ道が現れた。


「あれが分かれ道か?」


「少し、細いような気もするが…………とりあえず進んでみないと分からないな」


 少し細めの分かれ道を進み続けること1つ丘を登って下って、平地を進みもう1つ丘を登り下ると海に出た。あれっと思いシナンに聞いてみる。


「海に出たのだが、ほんとにここに採石場はあるのか?」


「これは、たぶんないな。こういうこともあるさ、街道に戻ろうか」


「なんで、海につながってんだよ」


「それも私には分からない」


 ここまで来たのと同じ道を通り、街道に戻る。草原をつっきらないのは道以外の場所を通ると迷いそうだからだ。


「どっちから来たっけ?」


 街道に戻ったのはいいものの同じ景色がずっと続いているようなものなのでどちらから来たか忘れてしまう。方位磁針などといったものは持っていないからな…………あ、遠距離小型多機能通信機を使えばいいのか。


 そう思った俺は鞄から遠距離小型多機能通信機を取り出し、機能切り替えで方位磁針機能に切り替える。方位磁針機能に切り替えたところ見事に北の位置を知ることができ旅を続行することができた。


 今いる場所から左手側を指差してシナンに方角を教える。


「あっちが北だな」


「そうなのか、ありがとな」


 北へ向かってさらに街道を歩く。先ほど行った分かれ道も遠くへ過ぎ去った頃、今度は東側に2つ目の分かれ道が見えてきた。あの道はきっと採石場へと続くだろうと信じて分かれ道の方へ進む。


 しばらく平地を歩き続け、高めの丘を超えると丘の上から廃墟がいくつか並んでいる村のようなものが見えた。


「なんだ、廃村か?」


「王都とセントラの間に今も昔も村はないはずだけどな」


「じゃあ、あれはなんなんだ?」


「近づいてみないと分からないな」


 廃村のようなものに近づいてみると、その廃村のようなものの真ん中には大きい深い穴が開いていた。シナンなら分かるかもしれないと思いシナンに聞いてみる。


「これはなんなんだ? もしかして採石場なのか?」


「私にも分からない。もしかしたら建物の中を探せばここがなにか分かるものがあるかもしれないな。協力して探そう」


「そうだな、なにか見つかったら教えてくれよ!」


「了解!」


 こうして俺は後ろにある、壊れかけている石造りの建物に向かった。ここはいったいなんなのだろう。採石場だったらいいんだけどな。

この話は、前後編にはなりません。

次話をお楽しみに!

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