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強制的な冒険譚 魔法が消えつつある世界にて  作者: 川理 大利
第1章 3部 セントラへの旅編
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宿を出て

 星歴 1314年 4月22日 7時30分


 なんだか光が眩しい。あれ? もう朝なのか。起きなきゃな。シャレー起こしてくれよ。そう思いながら俺は目を開けた。


 そこは、見慣れた家の天井ではなく宿の部屋の天井だった。そうえば旅にもうでてたんだったな。旅も2日目に突入したが、まだ王都すら出れていないのだ。


「もう朝か。早いな、今何時なんだ?」


 壁に掛けられている時計を見てみると、7時30分を刺している。確か、受付に集合の時間が8時だったかな。あと30分ぐらいしかないじゃないか。少し急いで支度をしないとな。


 寝間着から急いで着替え宿の廊下に出る。顔を洗いたいな、洗面所はどこだっただろうか。ついでにシャワーも浴びたい。昨日は夜部屋に戻ってきてからすぐ寝たからな。


 洗面所を探して1階に降りると階段の向かい側にシャワールームがあったのでシャワーを浴びる。顔はもう洗う必要がないだろう。


 ちなみに王都は上下水道が完全に整備されているので水に困るなどといったことはまず無い。その水が飲めるかは置いといてだが。


 シャワーを浴び終え部屋に戻り時間を見ると、7時50分になっていた。もう部屋を出ないとな。この部屋でゆっくりできる時間など俺には残されていない。忘れ物がないのを確認し、部屋から出て鍵を閉める。


 そのまま受付に行ったが、シナンがまだ来ていなかったため、受付の部屋に置かれている椅子に座りシナンを待つことにした。


 椅子に座り5分ほど経ったころ、シナンがやってきた。時間ぴったりだ。


「おはよう、体調はもう大丈夫か?」


「あぁ、おはよう。もう大丈夫だ」


「それは良かった。さて、早く会計を済ませて宿から出ようか」


「そうだな、早くセントラまで行きたいよ」


「今日中にセントラまでは行けないだろうが、せめて採石場までは行けるといいんだけどな」


 とりあえず、宿の代金を払わなければ。えーと確か1200Eだったかな。1200Eを取り出し受付の人に部屋の鍵といっしょに渡す。


「ありがとうございました」


 続いてシナンも代金を払い宿を出る。宿を出て、そのまま王都から出ようとしたのだがシナンに止められた。


「ちょっと待ってくれ。朝食を食べてからにしないか」


「なんでだ? 昨日朝ご飯食べなかっただろ」


「この先はかなり歩くから食べておかないと倒れる可能性がある。食事は旅をするうえで大切なことだと本で読んだことがある」


「それもそうだな。それじゃ朝ご飯食べてから王都を出ようか」


「それで、頼む」


 朝ご飯は何にしようかと街道付近を歩いていたところ。朝からやっている飲食店を見つけたのでそこで朝ごはんを食べることにした。


 21区はかなり広いらしいから街道付近がいいからだ。飲食店の中に入りできるだけ安いメニューを頼む。600Eの朝セットだ。とても良心的! 旅をするうえで節約も大切なことだろう。


 頼んだものがくるまでの間少し今日の予定について確認をすることにした。昨夜も確認はしたが、最終確認だ。


「今日の予定を確認しとかないか?」


「そうだな。まずは、朝ご飯を食べ終えたらできるだけすぐに王都を出る。そして街道をしばらく歩く」


「ずっとまっすぐでいいのか?」


「ずっとってわけじゃなくてどこかに街道から分かれる道があるらしいからそこを曲がっていく」


「その分かれ道はどこらへんにあるんだ?」


「詳しい場所は分からない、とりあえず今日のうちに採石場まで行ければいいさ」


「なるほどな」


 分かれ道までいったいどれだけあればつくのだろう。そもそも、採石場まで今日中に着けるのだろうか。たしか採石場が王都の建物を作るためのものだったからそれほど離れた場所にはないだろう。


「あれ? 今日の夜ってどこかに泊まるのか?」


「きっと野宿になるだろうな」


「野宿か…………」


 野宿をすることもあるだろうと寝袋は買っておいたので大丈夫だろう。念の為鞄の中を漁っていると、今のところただの荷物になっているものを見つけた。遠距離小型多機能通信機だ。これはいったいどうやって使うのだろう。鞄から取り出しシナンに見せてみる。


「そうえば、これってどうやって使うんだ?」


「私にも分からないが、とりあえずボタンを押してみたらどうだ?」


「そうだな、とりあえず押してみるか」


 上にあるボタンを押してみるが何も起きない。説明書はひと通り見たつもりだったが、何か見落としていただろうか。俺はそう思い、鞄から紙を取り出し裏面を見る。


「一応、確認しとくか」


 おっと、下の方に見落としていた項目があるじゃないか。えーとなになに?


 遠距離小型多機能通信機は、定期的に魔力を込める必要があります。その魔力が込められた状態でボタンを押すと使用することができます。


 …………なるほどな。学園長は魔力について知らなかったらどうするつもりだったのだろうか。

 まあいい、試しに魔力を込めてみよう。手で握りしめて魔力を遠距離小型多機能通信機の中にこめるイメージを持ち言葉を唱える。


「魔力よ、遠距離小型多機能通信機内に発生せよ!」


 すると、少し黒さが薄まるとともに現時刻が表示されていた。そのほかには番号のようなものが下側面部に書かれており、さらにボタンもいくつか増えている。


「ラナー!いったい何をやったんだ?」


「思ったより凄いことが起きたなこりゃ。とはいえもうこれで使えるんじゃないか」


「そうだ、シナン。お前のもやってやるからこれ渡してくれ」


「あぁ、分かったよ」


 シナンが鞄から取り出した遠距離小型多機能通信機を受け取り同じ手順で魔力を込める。


「ほら、できた」


「なんだか分からないがありがとうな」


 いったい学園長は、俺とシナンどちらも魔法が使えなかったときはどうするつもりだったのだろう。起動はできたからいいもののここからどうすればいいのだろう。


「で、これをどうすればいいんだ」


「この番号を使うんじゃないのか?」


「そうだな、番号を打ち込むんだろうが。でもどうやって?」


「撮影機能とやらを使うんじゃないか?」


「そうかもな、使ってみるか」


 たしか機能の切り替えは、ボタンを2回押すだったか?ボタンは5つほどあるがどれを押せばいいのだろう。とりあえず左から2番目のボタンを押してみる。


 ボタンを押してみた結果表示が時刻から撮影機能という文字に切り替わったようだ。これで撮影機能が使えるだろうか。


「その番号撮ってみるよ」


 右隣のボタンを押してみるとカシャッというような音が鳴り、撮影機能の文字の下に撮影されたであろう番号が表示される。どうやらこれで撮ることができたようだ。


「なんだか、便利そうな機能だな」


「シナンもやってみてくれよ」


「分かった」


 シナンも同じような手順を取り撮影することに成功した。これで通信ができるだろうか。


「通信機能は左隅のボタンを使うらしいな」


 左隅のボタンを押してみると、再び文字が切り替わる。通信番号を選択してくださいと表示されているが、これはダイヤルで選択するのだろうか。


 ダイヤルを右に回してみるとシナンの番号のところが選択される。これでもう1度ボタンを押してみよう。


 ボタンを押してみてから数秒後、遠距離小型多機能通信機はシナンにつながったようだ。


「おーい、シナンか?」


「そうだが、これ少し離れないと分からないな」


「たしかにそうだが、使い方が分かっただけでもいいだろう」


「もう、切るからな」


「あぁ」


 使い方が分かったところで料理が届いたので鞄の中にしまう。さあ、食べ始めようか。


 朝ご飯を食べ終わり、飲食店を出て街道を歩き門の前に辿り着く。いよいよ王都を出発だ。


「ラナー準備はできてるか?」


「あぁ、問題ない」


「それでは、行こうか王都の外へ!」


 なんだかシナンは楽しそうだ。

 かくして、俺たちは今門をくぐり王都を出る。これがどんな旅になるかなんて知ったことじゃない。


 半分ぐらい嫌な気持ちで旅に出るんだ。唯一嬉しいことといえば、勉強をしなくていいことくらいだろうか。なんにせよ、良い旅になることを願うばかりだ。

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