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強制的な冒険譚 魔法が消えつつある世界にて  作者: 川理 大利
第1章 3部 セントラへの旅編
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街道にて

「そうえば、街道って馬車通れるんだったな。なんか、懐かしい風景だな」


 王都では、基本的には馬車の通行は禁止されているが唯一馬車の通行が許可されているのがこの街道である。


「それがどうかしたのか?」


「いや、俺の故郷ではこんな風景が普通だったからな」


 俺の故郷の道はどこもこんな感じだったものだ。ここまで交通量が多いわけではないが。


「私は、王都で生まれ育ったからな。むしろこの風景の方がすごいと思うよ」


 どうやら、シナンは王都で生まれ育ったらしい。どの区出身だろう。


「まぁ、王都中心部の道幅はどこも狭すぎて、馬車が通ることができないから仕方のないことだが」


 王都が馬車の通行を禁じる一番の理由はこれだと聞いたことがある。


「それにしてもシナンって、どこの区出身なんだ?」


「私の出身は24区だ」


 24区といえば何があっただろうか? というか。どこだろうか。だめだ、分からない。まだ王都に来てから2年ほどしか経っていないのが主な理由だが、それだけ外出をしていないのだ。


「24区は港があって良い区域だよ」


「港があるのか。と言うことは海に面する区なのか?」


 王都の海に面する区では基本的にどの区でも港があり、農業より漁業の方が盛んなくらいだ。確か、特に大きな港は16区と25区にあると聞いたことがある。


「そうだ。でも、隣の25区が大きい港だからそこの方が盛んだけどな」


 旅客船が止まる港はそことは別の場所にあり、18区と22区にあるとどこかで見た。東の方へ向かう場合は18区を使い、西の方へ向かう場合は22区を使うというふうに使い分けがなされているらしい。


「なるほど、大変なんだな24区も」


「そうなんだよ、だから24区では農業もそれなりにやっているんだ」


「俺の故郷では農業ばかりだったな」


「ほう、そうだったのか」


 そうえば、街道に出たのはいいがここから先はどのようにして王都から出るのだろう。


「このまま、端まで街道歩いていくのか?」


「歩いていくわけではないが、とりあえず休憩だ。ここまでかなり長い間歩いてきたからな」


「そうだな、もう疲れたよ」


 休憩場所を探して歩道を少し歩くと、カフェの外に置かれているテーブルがあったのでそこで少し休憩することにした。


「何か頼もうかな」


 テーブルに貼り付けられたメニュー表に目を通す。


「何か頼むのか?」


「あぁ、お腹が空いちまってな」


「なるべく、安いものを頼んだ方がいいんじゃないか?」


「あぁ、そうだな。1番安いものにしておこう」


 1番安いメニューを見てみると街道というだけあって値段が高い。なので頼むのはやめておくことにした。


「やっぱ、やめとくよ値段が高い」


「そうか、良い判断だ」


 その後、俺たちは何も頼まないのも悪いため、飲み物だけ頼み、カフェに居座り休憩し続けた。少し疲れが取れたかなと思う頃に出発することにした。


「で、結局ここからどうやって王都の端まで行くんだ?」


「街道はあるものの通行が許可されている。さて、それは何でしょう?」


 うわ、いきなりクイズみたいに聞いてきやがった。まぁ、いいここは冷静に答えておこう。そもそも、さっき言ってたじゃないか。


「馬車だろ? そんなの常識だ」


「正解!」


「で、馬車とそれがどう関係するんだ?」


「まぁ、答えを言っちゃうとこの街道では南北両端を行ったり来たりして人や物を運ぶ馬車が運行されてるんだよ」


「そうなのか。つまりそれに乗って端まで行っちゃおうってことか」


「楽な移動方法だろ?」


「そうだな」


「その馬車はいつ来るんだ?」


「あと、15分くらいで来ると思うが」


 その馬車が止まる場所は決まっているらしいのでそこへ向かい。待つことになった。そして、約15分待つことようやく馬車がやってきた。やってきた馬車に乗り込みシナンにかなり重要なことを尋ねる。


「この馬車ってお金いるのか?」


「いや、いらない。王都の住民ならな」


「それは便利だな」


「そうだろ。ちなみにあと1時間ほどで北端に到着する」


「ずいぶん、早く着くんだな」


 確か、あの場所から北端までだと25キロ以上はあったはずだ。街道は便利なんだな。学園の近くにあると良いのにな。


 途中で何回か止まり人が乗ったり降りたり物を下ろしたり積んだりしながら馬車は進んでいく。街道沿いの区に住む人たちは今乗っているこの馬車をよく使っているらしい。


 乗り心地は、はっきり言って悪い。馬車にしてはかなりの速さで移動しているからだ。そんな馬車に乗り30分が経過し、馬車に少し慣れた俺は本でも読もうかと思い魔法に関する本を鞄の中からとりだす。


 読み始めのうちは良かったのだが、馬車の揺れのせいで軽度の乗り物酔いを起こしてしまい、読むのを断念した。早く着かないだろうかなどと思っているうちに馬車は止まり扉が開く。どうやら着いたようだ。


「おい、ラナー着いたぞ。まさか乗り物酔いでもしたのか?」


「そのまさかだよ」


 うげぇ、気分が悪い。


「本なんか読んでるからだろ、しかしそんな状態で王都を出るのは怖いな」


「今日の旅はここまでにしとくか?」


「あぁ……それで頼む………。それにしても………ここはどこなんだ?」


「21区だ、王都の端に位置する区であそこに見える門を抜ければ王都の外だ」


 シナンが指差した方向を見ると城壁の門の下をくぐり街道が城壁の向こう側へ続いているようだ。


「今日のところはそんな様子じゃ、外に出るのは無理だろうな。まだ早いが今日の宿を探しに行こうか」


「あぁ………そうだな」


 こうして、俺の旅の1日目は無理やり幕を閉ざされようとしている。シナンに若干申し訳ないと思う気持ちと共に。

まさかの、乗り物酔いで旅の1日目は幕を閉じようとしています。乗り物酔いは怖いですね。

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