旅立ち前夜 2
かくして、鞄を買い夜ご飯を食べるために俺たちは百貨店13に来ていた。百貨店13は、24時間営業であり、安さを売りとしているため王都内では、人気を博している人気店だ。
百貨店13は、家から歩いて10分ほどの場所に位置しているため何か物が欲しくなった時はよくここを訪れる。
約21時という遅い時間に来たのだが、予想に反し人はかなり多くいた。ラナーがどんどん先へ行こうとするので、聞いてみる。
「まず、何から買いに行くんだ?」
「まずは、鞄から買いに行った方がいいんじゃないか」
「そうなると、えーと、鞄が売ってる店は二階だな」
鞄が売ってる店は二階ということなので中央の階段を登り二階に向かう。
鞄を売っている店に着き、鞄のコーナーへ行くと鞄が棚にたくさん並べられている。さぁ、鞄を選ぼう。
できるだけ大きい鞄がいいだろう。とはいえ、旅などするのは初めてのことなのでどの鞄がいいのか店員さんに聞いてみることにする。
「旅に向いている鞄ってどれですか?」
たった1年の短い旅とはいえ、鞄の選択はかなり重要になってくる。剣の選択の次ぐらいにな。
「それでしたら、こちらの鞄セットをお勧めします。こちらの商品には便利な機能がいくつかついており、その中でも自動的に鞄に入れた物の仕分けがされる機能は、旅では重宝するでしょう」
なるほど、それは便利そうな鞄だ。ただ、鞄の大きさは大きいかというと、少し小さいように感じる。
鞄は、肩から掛けるショルダーバッグで大きさは大容量のリュックサックに比べると、少し小さめに思える。
「でも、これを旅に使うには小さすぎじゃないか?」
「確かに、そう思われるかも知れませんが、旅は荷物が少ない方が楽ですよ。これぐらいの大きさの鞄をお勧めします」
たしかに、大きな鞄を持って旅をするのは旅に慣れていない状態では大変なことだろう。この鞄にしておこう。
「じゃあ、これ買います」
「ご購入ありがとうございます。値段は、3000Eとなります」
げ、これでお金が半分以上も無くなってしまうのか。なかなか痛い出費だなと思いながら代金を出そうとすると。
「ラナー、今日の支払いは全部俺がやってやるよ、明日から旅に出るんだろ? できるだけ出費は少ない方がいい」
なんと、シャレーが3000Eを出してくれるということだ。なんて、ありがたいことだろう。
「いいのか、買ってくれるなんて……この恩はきっといつか返す」
「ハハ、そうだな、いつかこれと同じ値段の物買ってくれよ!」
そんなこんなで、鞄を購入した俺たちはその後も旅に必要そうな道具を見て回った。
薪など必要だろうか? いやいらないな、たぶん。火は、魔法でなんとかなるしな。もしかして、魔法って最強なんじゃないか?
使いたくはないがいざという時には創造魔法も使わなければいけないだろう。
創造魔法を使いたくないのは、魔力量の消費が多く疲れるからだ。実際、無意識に発動させてしまった時には一瞬ふらっとしたくらいだ。
せめて、寝袋ぐらいは買っといた方がいいだろう。鞄と寝袋の他には、何か必要なものはあるだろうか? 旅などしたことないから何が必要か分からない。
「まぁ、鞄と寝袋だけ買っとけばいいだろ。あとは、魔法でなんとかなる。たぶん」
「そうか、じゃあ寝袋買ってくるから先にいつものレストランに行って席取っといてくれ」
シャレーにそう言われて、いつものレストランに向かいながら、頭の中では明日からの旅のことを考える。
唯一の長距離移動といえば、俺たちの故郷から学園に通うために王都へ来たときぐらいだろうか。
あの時は、馬車で移動したので200キロほどの道のりを約2日ほどでついたのだったな。しかもシャレーと一緒だったのでそれほど退屈することもなかった。
それに比べて今回の旅は、かなり退屈するだろう。なにせ、あのシナンと旅をするのだ。
そのうえ、お金がそれほど多くないので徒歩で旅をしなければいけない。とりあえずの目的地であるセントラまで、王都から75キロほどとはいえ、徒歩だとどれほどかかるのだろう。
気がつくと、いつものレストランの前に着いていた。レストラン名は、レッドグラスだ。ここの百貨店に来る時はいつもだいたいここのレストランに来る。名前の由来はよく分からないが。
レストランの中に入り、席に着く。食べるものはもう分かりきっているので、シャレーの分まで注文を済ませる。
少し経った頃、シャレーが遅れて来るのとほぼ同時に料理も届く。
「悪い悪い、支払いに少し時間がかかっちゃってな。料理頼んどいてくれたのか。ありがとな」
「頼むものなんて、決まりきってるからな」
ここで、百貨店に来てからずっと気になっていたことをシャレーに聞いてみる。
「それにしても、シャレー、何で今日は鞄に寝袋と色々買ってくれたんだ?」
「それはあれだ、金なくなると困るだろ? っていうのとあと単純に明日から旅立つお前への俺からの餞別だ」
なるほど、そういうことなのか。納得した。きちんと御礼を言わなければな。
「ありがとうな」
その言葉に、シャレーは笑みを浮かべながら答える。
「おいおい、まだその言葉は早いぜ、そういうことは旅が終わってから言うもんだろ!」
「ははは、そうだな」
「旅が終わってからな」
その後、食事を済ませた俺たちはその足で大浴場へ行き入浴を済ませ家へ帰った。
家に帰ってからもまだやることは残っている。そう、旅支度だ。時刻はすでに22時をまわっているため。早く終わらせなければいけない。
机の引き出しなどを漁り、メモ帳やペンを取り出し先ほど買ってきた鞄の中に入れる。
そのほかには、今日昼間持ち歩いていた鞄の中から魔法に関する本を2冊と、同じく先ほど買ってきた寝袋を鞄に放り込む。ついでに、作り出してしまった発火石も入れおこうと思ったのだが邪魔なのでやめた。あとは、遠距離小型多機能通信機と財布も忘れないようにしないとな。
そういえば、水分や食糧のことを忘れていた。まぁ、これも薪と同じように何とかなるだろう。とりあえず、これで旅支度は終わりのはずだ。忘れ物は、ないと思う。
旅支度も終了したことだし、今日は、もう早いうちに寝ておこう。寝過ごすと大変なことになりそうなので、シャレーに起こしてくれるよう頼んでおく。
「シャレー、明日は5時30分頃に起こしてくれ。頼んだからな!」
「おう、分かった。5時30分だな」
その返事に安心した俺は寝室のベッドで横になり、瞼を閉じて無理矢理にでも眠ろうとする。
しかし、そんな努力など関係なく疲れによって、とうに活動の限界を迎えていた俺の体は視界が暗闇に覆われてからほどなくして眠りに落ちた。
次の話から新編に入ります。




