休暇申請
決別と同じ内容になっていたみたいで、申し訳ないです。
ご指摘下さった方、ありがとうございます!!
決意を胸に執務室に入った。中には珍しくお母様もいた。私を見ると二人とも相好を崩した。でもすぐに怒ったような顔になって、
「レティ…!!貴女、なんであんなことしたの!?」
お母様が取り乱した様子で私に詰め寄る。
なんでって、そんなのは簡単だ。
「死にたかったからですわ、お母様。」
「何ですって!?」
驚きでそれ以上言葉が続かないお母様の代わってお父様が口を開く。
「私達はお前に無理をさせていたか…?」
「わたくし、ずっと願っていたことがありますの、何か分かります?」
お父様はキョトンとしてから首を振った。
「…すまない、分からない。」
「…両親に、お父様とお母様に愛して頂きたかった。抱きしめて、キスをして欲しかった。勉強が出来たら褒めて欲しかった。……でも、もういいのです。表立って欲しがらなかった私が悪いのです。無償で与えられるものなんてあるはずがないのですから。」
両親は何も言わなかった。そんなこと思ってもみなかったという顔をしていた。愛しているつもりだったのだろうか。それとも、私がそんな図々しいことを考えてると思っていなかったとか?
「まぁ、そんな話は今はいいのです。終わったことですから。今日のお願いは別のことですわ。わたくし、休暇を頂きたく思いますわ。いえ、この場合は言い換えて静養でしょうか?」
両親は今しばらくフリーズしていたが、お父様は流石に復帰が早かった。
「それはどのくらいの期間なんだい?」
「ざっと一年ですわ。」
「…なぜ、静養するんだい?」
「わたくしの心身の健康のためですわ。それに色々としなくてはいけないことが出来ましたの。皇帝陛下にもお会いしたいわ。」
「分かった。しなくてはならないこととは何だ?陛下との謁見も何故?」
「婚約の解消ですわ。わたくしもうあんなのと婚約しているの疲れましたわ。…あぁ、もしかしてお父様方はご存知ありませんか?有名な噂だと思うのですが。」
「………………。」
「ふふふっ、だんまりだなんて意地悪ですわね?もしかしてわたくしのことを不出来な娘と思っておりますの?…あははっ、いっそのこと除籍して下さっても構いませんのよ?わたくしきっと一人でも生きていけますもの。」
壊れていると自分でも思った。
何も面白くはない。でも、どうしようもなく可笑しくて、笑いが止まらない。笑っているのに、悲しくて、私の左頬を涙が伝った。
両親は呆然としていて、ロザリーは私を気遣わしげに見ていた。
「…うふふっ、ねぇ、お父様、あははっ、お返事して下さいな。くふふっ、わたくし、今までこの家に貢献してきましたでしょう?あはっ、それとも、それは全部お父様の功績ですか?」
笑い声混じりの私の呼びかけに、お父様は何とか意識を戻したようだ。
「…お前の婚約は勅命だ。変わることはない。」
「そんなこと知っていますわ。ただ、悪あがきくらいさせて下さいませ。…家には迷惑をかけません。私の命で片を付けてみます。どうか、陛下に取次を。」
お父様は考え込むように視線を下げた。それから深い深いため息を吐いて顔を上げた。
「…仕方ない、認めよう。ちょうど陛下へ届けてもらいたいものがある。それを一緒に持って行ってくれ。それから、一年間の休暇も認めよう。今までー」
その後に続く言葉が私には簡単に想像出来た。でも、だからこそ言わせなかった。
「お父様、それにお母様も、わたくし謝罪など望んでいませんわ。その謝罪は罪悪感を軽くするためのものでしょう?そんな軽々しいものもらっても吐き気がするだけですもの。…わたくしが苦しんだように、どうぞ存分にその罪悪感を堪能して下さいませ?」
許可は下りたのだからここには用がない。完璧なカーテシーをして部屋を出た。
2024/08/27修正