表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もう尽くして耐えるのは辞めます!!  作者: 月居 結深
一年間の休息
31/34

勧誘

 夜は両親と殿下とシリル様と食堂で晩餐会をした。

 初日は疲れているだろうということで、殿下達は部屋で食べていたから揃っての食事は今日が初めてだ。


 いつもよりも少し豪華な食事から、料理長達の張り切りぶりが想像出来た。

 まぁ、殿下はこの国の第二皇子であるし、変な物は出せないのだろう。





 晩餐会が終わると、温室に集まった。


 ロザリーにお茶を用意して貰って、殿下とシリル様に許可を頂いてからロザリーにも席に着いてもらった。


「シルにはもう話したのだけど、シリル様とロザリーにも伝えておきたいことがありまして、お時間を頂きましたの。」

「それは俺達にも関係あることでいいんだな?」

「ええ、そうですわ。」

「……そうか。何をするつもりなんだ?」


 隠しきれない好奇心を瞳に覗かせるシリル様は、年相応の少年のようで、それが少しおかしかった。


「ふふっ、実はわたくし旅行に行こうと思っていまして、宜しければ一緒にどうでしょうか?因みに、シルの同意は既に得ていますわ。」


 シリル様は殿下の方を首を痛めそうな速さで向いて、険しい表情をした。


「シルヴェール!……お前って奴は、なぜそんな楽しそうなことを黙っていたんだ!」


 皇族としての自覚がどうこうなどと怒るのかと思えば、全く逆の方向で怒っていて驚いた。

 二人は乳兄弟で幼馴染だというから、皇族に対する気安い態度も彼らの友情の賜物なのだろう。


「仕方ないじゃないか、僕だって今日の昼間に聞かされたんだから。」

「帰ってきてから話せただろ?」

「僕から言うことでもないでしょ。」

「確かにそうだが…。」

「まぁまぁ、そのくらいで。シリル様も一緒に来て下さると思っていいのでしょうか?」

「ああ、勿論だ。」


 シリル様は深く頷いてくれた。


 ロザリーは殿下やシリル様の前ということもあって、進んで口を開こうとしない。私から聞くしかないだろう。


「ロザリーはどうかしら?私と一緒に旅に出てくれる?」

「喜んでお供致します。」

「ありがとう、嬉しいわ。」

「それで、いつ旅立つ予定なの?」


 殿下はこてんと首を傾げる。殿下のこういった仕草は、天然なのか計算なのか読めないところがずるいと思う。


「明日お父様に話をするから、早くて明日の昼過ぎになると思うわ。」

「それじゃあ、僕達は準備をしといた方がいいね。」

「……そうだわ、シリル様とロザリーは冒険者ギルドに登録しているかしら?旅行中は冒険者として行動することになるから、していないのならしてほしいのだけど。」

「俺は親父から修行の一環として、ギルドの依頼をこなしていたから持っている。」

「私もメイド長からの勧めで登録しております。」

「それなら心配ないわね。」

「因みに、二人のジョブは?」


 殿下は悪戯を仕掛けた子供のような顔で聞いた。

 私にはなぜそんな顔をするのか分からなかったが、すぐに分かった。


「俺は#狂戦士__バーサーカー__#だな。」

「私は#暗殺者__ アサシン__#でございます。ですので、斥候役はお任せ下さい。」


 二人のジョブはなんとなく予想出来る職業だったが、イメージに合いすぎて面白かった。


 殿下は求めた答えが返ってきたことがおかしかったのか、けらけらと笑っている。


「あははっ!…はぁ、本当に期待を裏切らないよね。でもまぁ、バランスもいい感じなんじゃない?」

「そうですわね、シルが魔法で後方から攻撃して、私がサポートという形かしらね。」

「それがいいと思うよ。」


 その後軽く打ち合わせをして別れた。



 早ければ明日にも旅立つことになるだろう。

 この息苦しい環境から抜け出して、広い世界を見て回れると思うと楽しみで、久しぶりに疲れやストレスとは違う理由で寝付けなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ