冒険者ギルド2
殿下は繋いでいた手を解いて、さっとギルドの扉を開けた。
お礼の代わりに軽く会釈をして中に入ると、活気のある光景が広がっていた。
ギルドの建物は一階の入り口付近は吹き抜けになっているらしく、天井が高く開放感がある。正面に見えるカウンターには数名の受付嬢が笑顔を浮かべている。
もうすぐ冬になることもあってか、人は多い。
向かって右端の、チャコールグレーの髪をした受付嬢が丁度手が空いたようで、目が合った。
「あの、冒険者登録したいのですが。」
「かしこまりました。お連れ様もでしょうか?」
「はい。彼もです。」
「では、こちらの記入をお願いします。」
差し出された紙には、氏名と#職業__ジョブ__#、使用できる魔法や属性を記入する欄が設けられていた。備考欄も設けられており、そこで自己アピールをすることも出来るらしい。
「…ジョブって、自己申告制なんだね。」
「そうだね。でも、自分に合ったものにしないと、苦労するのは自分だから。」
「それもそうか。私達は魔術師ってところ?」
「ブランシェなら、暗殺者とかでもいいんじゃない?」
「それはロザリーの方が合ってるよ。それに、そんなこと言ったら、ノワールは魔法剣士とかいけそうじゃない?」
「出来なくはないし、それでもいいよ?」
「あ、でも、回復できるようなジョブも必要かな?」
「そうかもね。旅するのなら、多少は備えておきたいし。」
「それなら治癒師ってところかな。」
「僕は普通に魔術師にしとくよ。」
「これでお願いします。」
お姉さんはサッと目を通し、不思議そうにこちらを見た。
「これだけでよろしいのですか?」
「?……はい、それで大丈夫です。」
「そうですか。でしたら、登録しますのでこちらに血を垂らして頂けますか。」
差し出された小刀を指先に押し付け、お姉さんが示した大きな水晶のような魔道具に血を垂らした。
魔道具は一瞬白く輝いて、元に戻った。
殿下も同じようにすると、お姉さんがドッグタグとしか呼べないものを持って来た。
「こちらがギルドカードです。砂鉄級からのスタートになります。カードの再発行は出来ませんので、管理は慎重にお願いします。尚、ギルドカードには認識票としての機能もありますので、依頼を受けられる際には必ず身につけて頂きたいです。依頼については、また受けられる際にご説明させて頂きますが、何か気になることはございますか?」
私と殿下は顔を見合わせた。
「今のところはないから、また思いついた時に聞いても?」
「はい、受付にいる職員でしたら基本的な疑問にはお答え出来ると思いますので、お気軽にお問い合わせください。」
「分かりました。今日はありがとうございました。」
「いいえ、とんでもないです。お待ちしておりますね。」
お姉さんはとびきりの笑みを浮かべて見送ってくれた。




