彼の行動と私の心
十歳になった私はデビュタントを迎えた。夜会のパートナーは彼が務めてくれたし、ドレスなど一式一応用意してくれた。迎えに来た時には義理で花束を贈ってくれた。
ただ、用意してくれたものはどれも私の好みではなかった。むしろ、誰がどう見ても第二皇女殿下の趣味だった。両親は気づいていないようだったけど、私付きのメイドや仲のいい使用人は揃って眉を顰めた。流石の私もこれには耐えられなて、彼にそれとなく伝えた。上手く躱されてしまったが。
社交界にデビューして、私は淑女の鑑だと讃えられた。彼はといえば、その金属的な色彩と冷徹な性格から『鋼の君』と謳われていた。私達は当初こそお似合いだと囃し立てられていたが、翌年第二皇女殿下がデビューされるとピタリと止んだ。
簡単に言えば、彼は成長しても変わらなかった。この婚約が国のためだと知っているはずなのに、婚約者の私より殿下を優先した。皇族を優先するというのは臣下として当たり前のことだが、彼のそれは度が過ぎていた。私を連れて会場に入ると、碌に挨拶もせずに殿下の元に行かれるのだ。ファーストダンスも私とは踊ってくれなかった。
殿下には婚約者がいるというのにもかかわらず。それに、殿下は私達と違ってその婚約者と上手くいっているのだ。誰がどう見ても相思相愛な二人に付け入る隙などないと言うのに。
私は折を見て彼を諭した。己の振る舞いがどういう意味に取られ、それがどう思われるのか、それを理解してくれと、何度も何度も。まぁ、残念なことに改善されることはなく、私は憐れだ可哀想だと令嬢達に馬鹿にされ続け、令息達には慰めてやると身体を求められた。
2019/04/20 大幅に変更
2024/08/27少し修正