第二皇女殿下と砕けた初恋
今回も区切りのために短いです。
出会った翌年、皇宮で開かれた園遊会で幸せな時間は終わってしまった。
高位貴族の令息、令嬢を集めたそれに五歳になった第二皇女殿下が初めて参加されたのだ。彼女が現れた瞬間、時間が止まったように感じた。隣にいた彼が、一瞬にして彼女に目を奪われたのだ。彼が殿下に恋をしたのが分かった。それくらい、彼の視線には熱があった。その視線で私は私の初恋が散ったことを悟った。
太陽の光を受けてキラキラと輝く金色の髪にペリドットのような大きな瞳。可憐でありながら生命力を感じさせる力強い美貌。瞳と同じ色のドレスがそんな彼女にはよく似合っていた。彼が目を奪われるのも頷けるほど。
私と彼女は全てにおいて正反対だった。その喩えられ方から振る舞いまで、何もかもが正反対だった。
彼女がその愛らしさと明るさから『陽光姫』と謳われる一方で、私は美しさと聡明さから『月華姫』と謳われた。
彼女は大輪の真紅の薔薇を好んだが、私は月花と呼ばれる夜にだけ咲く小さな白い花が好きだった。
ドレスも、彼女の好むような明るくて煌びやかなものより、落ち着いた色やモノトーンが好きだった。
皇女という立場にありながら色々な感情を笑顔という表情にのせる彼女が、私は少し羨ましかった。私は全てを笑顔で押し殺して、覆い隠すことしか出来なかったから。
そんな私達は容姿に至るまで正反対だった。
彼女と違い、私は老人のような青みがかった銀にも見える白髪と仄暗い紫色の瞳だ。
貴族達はそんな私の容姿を、滑らかな絹糸の髪と憂いのある神秘的な瞳と言って持て囃してくれたがそれがお世辞であることくらい分かっている。
園遊会の間中、私は彼に放って置かれた。楽しそうに殿下と会話される彼を見ているのは辛かった。それでもその場を立ち去らず、微笑み続けたのは公爵家の令嬢としてのプライドからだろうか。
その日を境に彼と私の関係は変化した。以前は頻繁に交わしていた手紙やプレゼントはだんだん少なくなりついにはなくなったし、彼は私に可愛いとも綺麗だとも言わなくなった。顔を合わせても興味がないと言わんばかりの冷めた目で見てくるし、褒め言葉の一つもない。
この婚約を冷たいものにはしないとどの口が言ったのかと詰ってやりたかった。歩み寄ろうと言ったではないかと。でも、そんなことしても私が惨めになるだけだと分かっていたから出来なかった。それにまだこの頃は、成長されれば理解してくださると期待していた。
私は彼に振り向いて欲しくて努力を重ねた。淑女としての立ち居振る舞いに始まり政治に剣術と、皇太子妃もかくやという教育を受けた。両親が私にそこまで求めた訳ではなく、私が自分から頼んだ。
がむしゃらに頑張ったおかげか、デビュタントする頃には貴族が学園で学ぶことは学習し終えていたし、淑女としても文句のつけようがない程度には成長していた。剣術や馬術などの運動も先生にお墨付きをもらえるほどだった。そんな私を皇帝陛下や皇妃陛下、皇宮に勤める官僚や騎士の皆様は才媛だなんだと褒めてくれたし、可愛がってもくれた。特に両陛下は私を実の子供のように可愛がってくれた。愛情に飢えていた私にとってそれは救いではあったが、やはり心にはぽっかりと穴が空いていた。
2019/04/20 大幅に変更
2024/08/27少し修正