表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もう尽くして耐えるのは辞めます!!  作者: 月居 結深
芽生え
19/34

懸念

 私達は来た時と同じように、一ヶ月かからないくらいで領地に戻った。


 屋敷に戻ってから一ヶ月経った頃、殿下から手紙が届いて両親に呼び出された。


「レティ、第二皇子殿下から手紙が届いたそうだが、どういう関係なんだい?」

「新しい婚約者候補といったところですわね。」

「レティ、あなたって子はどうしてそう険しそうな道を行くの?」


 この一ヶ月で両親は私によく話しかけるようになった。

 食事も、夕食は家族揃ってテーブルに着くようになった。私は食べられないことが殆どだけど。


 これまでのことを両親なりに反省しているようで、かつての私が欲した愛が示されている気がする。


 とは言え、お互いに今までをなかったことには出来ない。ぎごちないのは仕方のないことだ。



 歩み寄る努力を積極的にするつもりはない。そうした結果、散々な目にあったから。


「わたくしだって、こんなことになると思っていませんでしたわ。でも、お断りする理由もありませんもの。…それに、私がいずれ結婚しなければならないことくらい、お母様もお分かりでしょう?」

「それはそうだけど、でもだからってよりによって第二皇子殿下だなんて…。」

「皇族と姻戚関係になるだけでも面倒なのに、殿下が相手となるといらぬ苦労まで負うことになるだろう。レティ、覚悟はあるのかい?」

「わたくしは家を継がなければなりませんから、殿下にはお婿に来て頂くことになると思われますわ。となれば、皇子妃教育は必要ないはずですし、もしあったとしても身につけているもので事足りることでしょう。殿下に纏わりつく問題についても、わたくしと殿下であれば解決出来ると思いますの。まぁ、あくまで殿下と結婚するならの話ですけれど。…それに、お父様、我が家は公爵家ですのよ。もともと皇家とは姻戚関係ですわ。」


 我がバーティン家の始まりは、帝国建国当初にまで遡る。当時の王弟が国の安定のために臣籍降下したのが始まりだ。

 領地が辺境なのは、中央から離れることで兄である皇帝の政治を邪魔しないためと、油断できない状態であった隣国との境界を守るためである。帝国を内と外から支えるための配置でもある。


 そんな歴史ある我が家は、その後も時々皇族の方を嫁や婿にもらっており、八つの公爵家の中でも一番家格が高いとされている。


「確かに、才媛と名高いレティと文武に秀で、天才魔術師でもある殿下であれば、大抵のことは解決出来るだろう。だが、出来過ぎるが故に、二人を王位に押し上げようとする者がいるかもしれないよ?」

「殿下は継承権を破棄するようですが、私達の存在が次代の皇帝陛下の御心を悩ませるのならば、『血の盟約』において陛下への忠誠を誓いましょう。」


 『血の盟約』とは、絶対の忠誠を誓う契約であり、一種の呪いだ。互いの血を飲み交わすことで発動し、裏切れば惨たらしい死に方をする。契約が結ばれると、心臓の上あたりに薔薇のような模様が浮かび上がる。色はそれぞれで、契約を複数結ぶことも可能だ。


「…国のためだからといって、そこまでしなくてもいいのではなくて?」

「わたくしも殿下も、国のためだけに動いているわけではありませんわ。目的のために必要だと思ったのなら、どんな手段でも使いますわ。わたくしと殿下は似た者同士ですから。」

「わたくしには、理解できませんわ…。」

「理解されたい訳ではありませんわ。」

「殿下からの手紙には何が書いてあったんだい?」

「ふふっ、まだ読めておりませんわ。だって、お父様ったら手紙が届いたと知ってすぐ呼び出すんですもの。読む暇なんてありませんでしたわ。」

「それはすまなかった。今ここで読んでくれて構わない。どうせレティのことだから持っているんだろう?」

「分かりましたわ。少々お待ち下さいませ。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ