表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もう尽くして耐えるのは辞めます!!  作者: 月居 結深
芽生え
16/34

邂逅

 回廊の突き当たりを曲がると、曲がった先の壁にもたれている人がいた。まさかそんなところに人がいるとは思ってなかったから、危うく悲鳴をあげるところだった。


「こんにちは、月華姫。僕はシルヴェール。シルヴェール・ニエルマン。この国の第二皇子だよ。」

「失礼致しました。お初にお目にかかります、殿下。わたくし、バーティン公爵家が長女、レティシア・バーティンと申します。」


 深々とカーテシーをとる私に、殿下は楽にしてと言った。


「不躾だけど、月華姫の婚約はなしになったんだよね?」

「ええ、今さっき解消して来ましたわ。…それが何か?」

「大したことじゃないよ。ただ、僕を新しい婚約者候補にどうかなって。…ほら、僕、こんなんでしょ?だから誰も妃になってくれなくてね。公平な月華姫ならどうかなって思ったんだ。」


 第二皇子殿下は有名な方だ。

 文武に秀で、持ち前の膨大な魔力量でどんな魔法でも使いこなす天才魔術師。彼のおかげで我が国の魔法技術は進歩したと言っても過言ではない。ただ、その容姿から皇宮にその居場所はない。


 殿下は艶のある漆黒の髪と血を押し固めたような深紅の瞳をしている。私は綺麗だと思うが、この容姿は魔族に通ずるものがあり、口さがない者たちは殿下を魔王と言っている。


 噂に聞く活躍に、殿下とは楽しく話が出来そうだと思っていた。今までは婚約者がいたから、殿方とのお茶会なんて以ての外だったが、今なら許されるだろう。


「そうですわね、嬉しいお誘いではありますが、わたくし殿下のことを殆ど知りませんの。ですから、我が家でお茶でもいかがですか?」

「喜んで。…どこに行くの?」

「連れてきたメイドのロザリーを迎えに、薔薇園に行くところだったのです。」

「そっか、じゃあ行こうか。」


 すっと差し出された右腕は自然で、誘われるように手を乗せた。そのまま、迷いのない足取りで薔薇園までエスコートされた。


 疎まれていても教育はきちんとされているようで、歩調は私に合わせてくれたし、気まずくならないように話を振ってくれもした。こんな風に大切にエスコートされることが、ここ十年近くなかったからか、少しむず痒い気持ちになった。


「ロザリー。」


 薔薇園で薔薇に囲まれたロザリーは、いつにも増して可愛いと思った。

 太陽を受けて輝く金茶の髪と、優しいくりっとした桃色の瞳。来年には二十になるというのに、私と同い年だと言っても通じそうなくらいの、幼さを感じさせるが可愛らしい見た目を本人は不満に思っているようだが、私はとても好ましいと思う。


「お嬢様!お疲れ様でございました。今日から領地に向かわれますか?」

「今日の夜出発にしましょう。昼間は殿下とお茶にしようと思うの。」

「かしこまりました。そのように手配いたします。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ