あの日の初恋に決着を
長い間更新しておらず申し訳ありません…。
書き溜めてある分が終わればまた不定期となりますが、完結まで書き切りたいと思うので、お付き合いいただけたら幸いです!
アルファポリスの方も一緒に更新していきますので、皆様が楽な方でご覧ください。
ロザリーは薔薇園で待っていると言っていたから、迎えに行かなければ。そう思って方向転換したところで腕を掴まれた。何者かと思えば彼だった。今更何の用だろう。
「何か?放していただきたいのですが。」
「すまない。…レティ…シア…嬢は、私との婚約解消を何とも思っていないのか?」
何を聞いてくるかと思えば、なんと下らない。これが次期宰相だなんてこの国は大丈夫だろうか。
「何とも思っておりませんが?強いて言うならこれで自由だと思っております。」
「何で。だって、家格の釣り合う婚約者を今から探すなんて大変だろ?」
「だから、私にしておけとでも?笑わせないで下さる?わたくし、もう何かに耐えるのは懲り懲りなんですの。政略的な物だとしても、相手を蔑ろにする方には興味ありませんわ。」
「…それは謝る。これからはもう蔑ろにしたりはしない。だからもう一度考え直してはくれないか。」
縋り付くような響きの声は、真剣な雰囲気を醸し出していますが、彼の瞳は懸命さのけの字もなかった。そこには欲に濡れた打算だけがあった。
「何度考えても答えは変わりません。貴方様の考えてること、当てて差し上げましょうか?…レティシア嬢はまだ私のことを好きかもしれない。そうでなくても、家格と容姿があって、地位だって期待できるような好物件を捨ててまで、他の令息の元へ行ったりしないだろう。…ふふっ、何で分かるんだって顔ですね。簡単なことですわよ?わたくし、誰よりも貴方様のことを見て参りましたから。何を考えているかくらい分かりますわ。」
図星を言い当てられ怒ったのか、彼はギリギリと私の腕を掴んだ。痛みで思わず眉間に皺が寄る。振り払うことも出来るが、逆上されると厄介だ。
「こっちが下手に出ていれば調子に乗って。可愛げのないお前なんかをもらってくれるやついるはずがない。私がもらってやると言っているんだから従ったらどうだ?」
「可愛げなんていう辺境では何の役にも立たないもの、必要ありませんわ。後継者の心配をなさっているのなら余計なお世話ですわ。親戚筋から養子をとって、わたくしが鍛え上げますから。」
「……この、減らず口が…!!」
口で敵わないからって、手を出すなんて子供じゃあるまいし。それにしても隙だらけだ。そんなにおおきく振りかぶって、横腹がガラ空きじゃない。
勢いよく掴まれている方の腕を引き、バランスを崩した彼のガラ空きの横腹目掛けて膝を叩き込んだ。よろけて壁にぶつかった彼に、しまっていた鉄扇を突きつけた。
「これ以上何かするのであれば衛兵を呼びますわよ。」
彼は力なく首を振った。これ以上ここでどうこうする意志はないだろう。
今度こそ薔薇園に行こうと体を反転させてから、ふと思い出して振り返った。
「あぁ、そうだ。最後に一つだけ。…わたくし、貴方様をお慕い申し上げておりました。今はもう昔のことですが。」
言い終わると、今度は振り返ることなく回廊を進んだ。
これでレティシア視点の婚約解消はおしまいです。次からはエヴァリストの視点です。イラッとしたらすみません<(_ _*)>




