出会い
拙い駄文ですが宜しければお付き合いお願いします。
区切りのため短いです。
大陸にその名を轟かせる帝国。その帝国の北方を守護する八つの公爵家の一つ。それが我がバーティン家。そんな公爵家の一人娘がこの私、レティシア・バーティン。
公爵家の一人娘、なんて聞けばさぞかし甘やかされ、愛されたことと思うだろう。
実際はそんなことはない。私はむしろ親の愛情というものを知らずに育った。別に、公爵夫婦の仲が悪いという訳ではない。むしろ、両親は政略結婚だとは思えないほど仲睦まじい。
でも、両親は夫婦として完成してしまっていて、そこに私が入る隙はなかった。屋敷に仕えている者達は私に優しくしてくれたけど、私が本当に欲しかったのは両親からの愛情だった。きっと、私が娘だからだろう。仕方のないことだ。
そんな私にも婚約者が出来た。皇帝陛下から直々に持ち込まれた縁談だ。一つ上の第二皇子殿下かと思ったが、そうではなかった。エヴァリスト・カルティエというカルティエ公爵家の次男だった。この婚約には皇家、いや皇帝陛下の思惑が絡み付いている。
この国の貴族は、帝都を中心とする中央派と辺境公などを中心とした地方派とで酷い隔たりがある。こんなことになったのは前皇帝陛下によるところが大きいが、今代の皇帝陛下はそれを正そうとしている。そのための第一歩として、私達の婚約が決まった。
なぜ私と彼の家が選ばれたかと言えば、どちらも各派閥の中で力を持ち、それ程派閥を意識させる振る舞いをしていなかったからだ。なんとも簡単な話である。
五歳になった年の社交シーズンに、私は両親に連れられ帝都のタウンハウスに来ていた。そこで私と彼の顔合わせが行われた。
「お初にお目にかかります。バーティン家が長女、レティシア・バーティンですわ。」
「私はカルティエ公爵家の次男、エヴァリスト・カルティエだ。よろしく頼む。」
金属的なダークグレーの髪と温度を感じさせないブルーグレーの瞳に、幼さはあるものの精悍に整った顔立ち。とっつきにくさは感じるが、とても美しい人だと思った。
実際に話してみるととっつきにくさは消えて、時々見せてくれる笑顔が嬉しかった。十歳の彼からしたら私は幼児だっただろうに、面倒がらずに相手をしてくれた。
「この婚約は国のためのものだ。だが、冷たいものにするつもりはない。お互いに歩み寄っていこう。」
もうすぐ帰るというところで彼は言った。私と彼には派閥という溝がある。でも、それを気にせずに付き合っていこうという提案だった。国のために、より良い未来のために。
「もちろんですわ。エヴァリスト様、どうぞ末永くよろしくお願い致します。」
「あぁ。レティシア嬢、よければレティと呼んでも?」
「嬉しいですわ。私はなんとお呼びすれば?」
「では、リストと。親しい者は皆そう呼びますから。」
「そうなのですね。リスト様とお呼びいたしますわ。」
出会った頃は私とリスト様は仲がよかった。互いに歩み寄っていくごとに、私は彼に惹かれていった。少なくとも、その頃の彼は私に少なからず好意を持ってくれていたはずだ。可愛いとも綺麗とも言ってくれていた。でも、そんな幸せな時間は長くは続かなかった。
切る場所が難しい(´・ω・`)
2019/04/20 全体を変更
2024/0827少し修正