狂気
少女視点が続きます。
これから主人公がどんな戦い方をしていくのか、
応援してください。
少女side
私は回復した魔力を自分の怪我に当て治しました。
まだじんじんしますけど、出血は治まりました。
そして彼は⋯
「くきゃ、くひゃひゃひゃひゃ、あはははは」
異常でした。
先ほどまで彼を弄んでいたオークも、彼の豹変に動いていなかった。
ほかのオークも周りの人たちも、状況に追い付いていなかった。
私は彼の姿を見ました。
「あれ⋯は⋯?」
特に変わっていない姿でしたが、一目でわかる変化がありました。
昔お母様に教えてもらった、伝説のドラゴンの話。
そのドラゴンはドラゴンの王と呼ばれ何よりも強いといわれ、
何百年も前にほろんだとされる強者。
その姿は真っ白で、汚れなどないほど美しく。
瞳の色は金色ですべてを見通すといわれ、
神ですら彼を恐れたという。
そんなことを思い出させるかのように、
彼の眼は金色に輝いていた。
そしてその瞳は
(顔は笑っているけど、彼、すごく怒っています)
なにに対して怒っているのかわからないですが、
激怒しているのは分かりました。
「きゃはははははははは⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
笑い声がやみました。
彼は急に走り出しました、先ほどまで彼を弄んでいたオークへ。
オークは彼に警戒し武器を構え、横なぎに攻撃します。
「危ない!!」
私は叫びました。しかし、彼の速度は変わらず、そのまま相手にぶつかりました。
衝撃でオークも彼も倒れこみました。
「あっ」
彼はオークの攻撃を受けていました。
お腹から血がにじんでいるのが見えます。
彼はそんなことを気にしないとばかりに、
オークにつかみかかり、そのまま⋯
オークの首にかみつきました。
「BUGYAAAAAAAA」
血しぶきをあげながら、彼は尚も嚙みつきます。
オークが静かになりました。
彼はゆっくりした動作で、オークの剣をつかみ立ち上がりました。
オークは不気味に笑う彼に、後ずさりしました。
それを見た彼はさらに笑い
「ぐひゃはやひゃはひゃひゃっ」
笑いながらオークに迫っていきます。
武器など扱ったことなどないだろうと思うような構え。
彼は剣をふるいました。
オークが1匹死にました。
それを見た、オークのリーダが声をあげました。
オークたちは落ち着きを取り戻し、彼を囲み始めました。
「GUOOOOOOOOO」
オークの1匹が彼の背後から襲い掛かります。
声を出そうと思ったけど間に合いません!
しかし、彼は後ろでも見えているかのように、
近づくオークに剣を振りました。
そしてもう1匹のオークに彼から近づくと、
今持つ剣をオークに突き刺し、オークの剣を手にまた他のオークに迫りました。
「すごい」
先ほどまで、諦め、弱かった彼とは思えなかった。
でも⋯
「くひゃっ」
彼はオークを倒しているが、無防備に近づいている分、何度も攻撃を受けていた。
(いけない、このままだと)
彼は傷を受け続け、それでもなお戦い続けた。
私は思った、何のためにあなたは戦っているの?
もうこれ以上傷つかないで!
私に気付いたオークが迫ってきました。
逃げないと!
思ったように動けずオークの接近を許してしまいました。
「きゃーーーーー」
思わず目を閉じました。
一向に痛みは訪れません。
そこには彼がいて、オークの武器を片手で防ぎ、もう片方の手でオークを切っていました。
「なんでこんなになるまで戦うのですか!」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
「痛いはずなのに、苦しいはずなのになんで!!」
私はつい彼に叫んでしまいました。
傷ついてほしくないから。泣いてほしくないから。
すると彼から笑い声ではなく、
優しい声音でつぶやいたのでした。
「守りたい、全てをかけて君を守る。君が俺のことを見てくれるから。
弱い俺を君が、守ってくれたから。だから、これからは⋯⋯⋯
君の障害になるものすべてをぶっ潰す。」
私の心は暖かな何かに包まれたような気がした。
そして誓ったこの人と肩を並べて戦えるようになることを。
主人公らしくない戦い方でごめんなさい。
覚醒しても基本弱いのでこれからの進化に期待してください。