和解
落ち着く、レナに全て知ってもらえて、認めてくれて。死に亭の身体はいつの間にか回復してるし、生涯の中で一番泣いたのではないかってくらい泣いた。
彼女が微笑んでくれているそれだけで、救われた様な気がした。
「クスクス、たくさん泣きましたね、リュウ」
「あはは、ありがとうレナスッキリしたよ」
「それは良かったです、あんまりにも泣きすぎて子供みたいで可愛いです」
「ちょっと恥ずかしいよ」
先ほどまでの静けさがなくなっていく様に、徐々に時が動き出した。
「ほら目が真っ赤で…クスクス…」
「そ、そんな事ないし」ぐしぐし
「ほらそんなに目を擦ると痛くなりますよ」
「はい」
動き出したのだが、いつの間にか二人の世界に入っていた。
「もうしょうがないですね、リュウは…」
「ありがとう」
まったく気づかなかった、周りに人がいた事を…。
「ねえ、レナお姉ちゃんのあんな姿初めて見た」
「しっ、聞こえちゃうでしょ」
「レナちゃんにも春が来たみたいね」
「でも、あのおっかない奴とだぞ」
ヒソヒソ
「おい族長を見てみろよ、開いた口が塞がってないぞ」
「よっぽどショックだったのかしら」
「でもレナちゃんあんなに幸せそうにしてる」
「おい族長が動き始めたぞ」
「どうなるのかしらね〜」
「ゴホン、ゴホン、二人ともそろそろ良いか」
「へっ、あっお兄様」
「あっそのすいません」
そういえば周りに人がいた事忘れてた。
「はー、まあいい、とりあえずお前のおかげで助かったのは事実だ。礼を言わせてもらう、ありがとう。まあ何だ、罵倒して悪かったな」
「いえ、その…」
「あとあの時お前を殴った事や、放りだそうとした事もすまない」
「いえ、弱いのも役立たずなのも、本当の事ですから」
「まぁ聞きたい事は色々あるんだが…、そろそろ二人とも手を離したらどうだ」
「おう」「きゃっ」
レナの兄貴が居る前で手をつないでいる事を、今思い出した。
「取り敢えず広場まで行こうか」
そういって、後ろをついていくと数人の人がいた。
「よくぞご無事で」
「何とかな、みんなをここに集められそうか」
「逃げ延びたものは、ケネディーさんが見てます」
「少し時間はかかりますが、お待ちください」
「頼んだ」
逃げ延びたものだろう、俺を見て訝しむが、直ぐにかけて行った。
「此れでいいだろう、皆は少し休んでろ」
そう言うと、俺に何か聞きたそうにしているが、各々休んで行った。
「レナ」
「はいお兄様、此処にあの剣を持ってきてくれ」
「あれをですか」
「今後の事で重要になってくるからな」
「分かりました、リュウ行きましょうか」
「待て、そいつとは話したい事があるから、残ってくれ」
「お兄様まさか、またリュウを傷つけるのですか」
「する気はない、さっさと行ってくれ」
「わかりました、くれぐれもお願いしますね」
そういうと、レナは離れていった。
「はー、やっと話せるな。ああそういえば自己紹介がまだだったな。俺はクリスだ」
「リュウです」
「やっぱり不思議だ、身体も魔力も優れている訳でないが、騎士を殺したあの強さ。お前は一体何者なんだ」
「わかりません、あんな事初めてで」
「敬語はいい、あとその服装も変だ」
「わかった、多分それは異世界から来たからだと思う」
「なに、異世界からだと」
「ああ、俺の世界では魔法なんか存在しなかった、それに俺の時代は剣を持って戦う時代では無かったしな」
「そんな世界もあるんだな、まあいい、そうか異世界からか…」
何かを納得しているようにうなずく。
「信じるのか」
「ああ、俺の先祖にもいたからな」
まさか信じられるとは思わなかった。
この世界にも時々異世界から物や人が流れ着く事があるらしい。クリスたちはその子孫である武器も、その先祖の物らしい。何でも一度振れば、たとえ神の精鋭ですら切る事ができるらしい。
「だが残念ながらその剣を抜けるものはいないんだ」
「なんで…」
「強力な封印がかかっているらしい、俺も抜く事は出来なかった」
「だが、お前ならあるいは…」
「へっ俺…」
「駄目元だがな」
そうこう話しているうちにレナがもどってきた。
「ただいま戻りました」
そうしてレナが持ってきたものは…
「日本刀!」