居場所
レナSide
リュウ様は静かにたたずみました。
「近寄るな化け物」
やめてください。そんな風に彼を言わないでください。彼はこんなことを望んでいない、私たちが生きているのがその証拠。だからお願い⋯。
「化け物、消えろ、俺たちの前から、俺の仲間たちを殺させはしない。だから、消えろ」
動けない私を叱咤しました。お兄様にあの言葉を言わせたことを。また、彼が傷つくのを見ているしかなかった私を。
生き残った騎士たちが
「今の内ださっさと撤退するぞ」
「ひっ、ははい」
と逃げるのを、彼は見送った。
私は、少しずつ、リュウ様が戻っているように感じました。黒さが少しずつ霧散し、少しだけ表情が見えた気がしました。その表情は、ひどく悲しげで、ちょっとだけ皮肉気に苦笑している、リュウ様でした。
「消えろと言っている」
お兄様はなおも彼に対して罵倒を浴びせます。
「あは、あはははははは」
笑い声が聞こえました。でもその笑い声には聞き覚えがありました。
「もう、俺には居場所なんてない。いや最初からなかったんだ」
何かをあきらめた、そんな声が小さく私の胸に届きました。その言葉を聞いて、ようやく立ち上がれました。
「ごめんなさい」
自分の弱さを、彼についていく強さもなかったことを謝りました。
「ごめんなさい」
彼を守ろうとして、逆に守られた私を恨みました。
「何をしている早く逃げろ、レナ」
お兄様が叫びますが、私にはもう、一人しか意識を向けていませんでした。
私が今できること、私にしかできないこと。彼が私を守ってくれたように、私は彼のすべてを受け入れ、何からも守って見せる。
いつの間にか彼のそばにいました、彼は私をじっと見つめます。
「リュウ」
彼の名を呼びました。しっかりと彼に届くように。
「ありがとう」
「生きていてくれて、守ってくれて、それから、それから、」
彼の目から涙が見えました。私は伝えたいことがたくさんあるはずなのに、言い表せなくなりそれでも、
「知っているから、あなたがたくさん傷ついて、でも前に進んでいることも。もう戦うなとは言いません。一緒に、これからは一緒に私も戦います。あなたの居場所を作ります。だから、そんな悲しい顔はしないでリュウ」
リュウSide
暗い闇の中で悲鳴が聞こえてくる。眠い、怠い、疲れた。
もうどうでもいい、どうでも。これに身を任せてゆっくりしたいもんだ。
うるさい黙れ黙れ黙れ。しばらくするとようやく静かになった。
これで眠れる。ぱきっ何の音だ
「ごめんなしゃい」
なんだ子供の音か、どうでもいい、あれ子供のほうに体が勝手に近づいていく。
たくさんの謝ってくる声に困惑する。誰かが目の前に来た。確かレナの兄だったか。
「⋯この化け物め」
何を言っている。どういうことだ。そして思い出していく、確か俺は死んだはずじゃあ。
はっとして思い出す、あの騎士たちを自分がいつの間にか、邪魔だと言って殺していたことを。
今自分がどんな立ち位置であるのかを。
ああ、確かに化け物だと納得せざるを得ない。レナの兄に罵倒されようやく、理解した。
自分はいらない存在だと、この世界には居場所などないことを、仕方がないそう思い苦笑するしかなかった。
「あは、あはははははは」
「もう、俺には居場所なんてない。いや最初からなかったんだ」
もう世界に認められるとは思っていない、レナを今回守れただけでも奇跡に等しい。だから、おれは静かに去ろう。
「ごめんなさい」
小さな声が聞こえた。
「ごめんなさい」
聞きたかった声が聞こえる。でも自分は化け物だ、レナも認めてはくれないだろう。静かに去ろうそう思ったが、彼女はこちらに近づいてくる。
「リュウ」
自分を呼ぶ声がする。敬称などなく家族かのように。
「ありがとう」
何もできなかった、怖がらせた自分に、
「生きていてくれて、守ってくれて、それから、それから、」
心配し、存在していい、そんな気持ちにさせる、
「知っているから、あなたがたくさん傷ついて、でも前に進んでいることも。もう戦うなとは言いません。一緒に、これからは一緒に私も戦います。あなたの居場所を作ります。だから、そんな悲しい顔はしないでリュウ」
自分は一人ではないことが、このときはじめてわかった。
俺はレナを抱きしめた。
「俺は君の隣にいていいのか」
「私はあなたといたいです」
「弱いよ、俺は」
「くすくす、知っています、体力は私よりないですもんね」
「そうだよ、こうして今も泣きそうなの我慢してるし」
「泣いてもいいんですよ」
「いいの?」
「私があなたのそばにいたいんです」
「ありがとう。ありが⋯ぐす」
そのあと俺は涙が枯れるまで泣きつくした。
この後は展開を広げていきますが、筆者の文才がないため、不明な点がいくつも出ると思います。
楽しくするつもりなので、よろしければ見ていってください。