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8精の王  作者: ryou
森の民たち
13/16

理解者

レナSide

笑っている。また彼は、笑っていた。でも、前回の笑いとは違い、彼の笑い方は、なんとも暗くなんともあくどく、すべてを壊してしまいかねない、そんな感情が見えます。


「なんだこいつ、たしかに死んだはずだろ。なんで起き上がってるんだ」

「ばか、早くかたずけろ、やべーぞそいつ」


騎士たちもその、いやな気配に気づいたようです。私ですらここにいたら死んでしまいそうな、そんな気配が見えます。まるで、圧倒的な暴虐が彼の中にある。気づいてしまった私は、一歩、また一歩と後ずさりを始めました。

お兄様たちも騎士からの意識がそれ少しずつ、後退を始めました。そう、彼を残してすべて。


「アヒャアヒャヒャアアアアアアアアアアアばふfyがjj」

彼の声が無常に響き渡り、ただ一人として発する言葉が理解できなかったと思います。


「死ね、化け物」

「うるせーんだよ」

「まて、お前たち!」

しびれを切らした騎士たちが数人、彼に向って剣を突き刺しました。その剣は彼の体を突き刺し、幾本かの穴ができます。何度も何度も。そして笑い声が収まり静寂に満たされ、ようやく騎士たちは手を止めました。


「はっ、ははっ、なんだ見掛け倒しか」

「つまらねーな、ははは」


飛び出した騎士たちは、笑っている中で、後の人は誰一人、いえ森の中で音を発するものは、何一つありませんでした。その証拠に、私やお兄様、ほかの騎士たちは震えているのです。何かにおびえるように。


「隊長どうしたんですか、こうして死んだのに」

「そうです、なんで笑わないんですか、笑ってくださいよ」

飛び出した騎士たちは、徐々にその不気味さを理解できたみたいです。ゆっくり彼の死体から一人また一人と、離れようとしていきます。そんなことなど、できるはずもなかったのに。


アハハハハハハハハハッハハハハハハハアハッハハハハア


森の中から突如聞こえる彼の笑い声に、私はぞっとする。怖い怖い怖い。まるで、さっきまでとは、いえ、あってからとも違う。この笑っているのは彼ではない。まるで別人。そう負の感情そのもの。しかも、個人だけでは表しようのない、ひどい強いもの。

彼と会って、彼に触れて、彼と話して、今目の前にいるのが心の奥から、彼ではないと叫んでいる。その危険なものは、ここで出してはいけないことも。


だから私は叫んだ。敵味方関係なく、あの危険なものが暴走しないように。彼がこれ以上傷つかなくて済むように。

「にげてーーーーーーーー」

しかし、その声に反応するものはいなかった。

その時には、彼の死体はなく、代わりに彼の周りにいた騎士は、徐々に体が引き裂かれていったのですから。そこにいたのは、リュウ様ではなく、漆黒の黒。かろうじて人の形をとっている、そんな存在だけでした。


そこには、表情などなく無音。圧倒的な力。

引き裂かれる仲間を見てその場から、逃げ出そうとしたものは、次の時には肉塊に変えられる。騎士たちは、次々に死んでいきます。その時間はわずか10秒で生きているのは、風格のある騎士と仲間の肉塊の下敷きになっている騎士、あとは私たち森の民のみ。その場を動かなかったもの、動けなかったものだけでした。


「あ、あああ」

子供の一人が動き静寂の中、ぺきっと小枝の折れる音が聞こえ、そのおとに彼はゆっくりと振り向きました。

「たしゅけて、ごめんなさい、たしゅけてください」

子供の声を皮切りに、森の民は一斉に許しを請い始めました。そんな中、彼はゆっくりとした足で彼らに向かっていきます。いけないそう思っても。自分は動けないでいました。


一歩また一歩。近づく彼にようやく動けたお兄様が、森の民たちの前に立ちはだかり。

「これ以上お前を近づけるわけにはいかない。消えろ。この⋯」

お兄様それ以上は言わないで。リュウ様が泣いてしまう。傷ついてしまう。だから⋯

「化け物め」


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