異変
痛いのかすらわからない。自分が今までしていたこととがよみがえる。
走馬燈
そう呼ばれるものであるのは明白であった。
目の前は真っ暗だった、胸にはぽっかり穴が開いて。自分は死んだのだろう。
「ふざけるな」
自分の運命を呪った。神が憎い。助けにすらならない自分がみじめだ。
「俺が何をした、なぜ動かない、あの子を、レナを守れない。弱い、なんで俺は弱い。何が守だ自分すら守れないくせに」
憤りをすべて吐くように言った。
憎いか?
聞こえる、何かの声が聞こえる。
苦しいか?つらいか?
ああそうだ。
なら何もかも我に任せるといい。そうすれば何もかもが終わる。
それもいいかもな。
(ダメだその力を使っては!)
ドラゴンをかたどる檻と白と黒の鎖が見える。
以前にも見たその光景は以前に比べ、やや弱弱しい。奥の何かが漏れ出してくる。
(心地がいい、なんだか眠くなってきた。強い怒りも憎しみも身をゆだねるとトテモ気持ちイイ。モットたくさんコノキモチヲ⋯)
俺の目は徐々に閉じる。しかし、ふと思い出す笑顔が頭に浮かんだ
(タスケナクチャ、メノマエノてきグチャグチャニ⋯)
心地よさが気持ちよさが増大する。
彼の心は闇に閉ざされ、静かに負の感情が彼の心を支配した。
彼は笑った。愚かな自分を。
彼は笑った。愚かな人びとを。
彼は笑った。愚かな世界を。
始まるのは崩壊、起こり得るは破滅。
今まで見ようともしない出来事。想定すらしない存在。
彼の中にいる怪物が今暴れだす。
レナside
騎士にリュウ様が刺されました。あの方には傷ついてほしくなかったのに。
あっという間に彼は死んでしまいました。なぜでしょう、こんなに胸が痛く言葉にすら出てきません。
あの時とは違い助けられなかった、庇うことすらできなかった自分が、ひどくみじめに思えました。
「あはははは、どうだ彼氏を殺された気分は、んん」
騎士は楽しそうにリュウ様の死体を蹴り、私を煽るようにニタニタしています。
「あっああ⋯」
私は座り込んでしまいました。もうどうすることもできない。あきらめるしかない。そう心が叫んでいました。
「あーあ、一突きかよもっとたのしめよ」
「いいだろ急に襲ってきたんだから」
「まあスゲーのろかったけどな」
「違いないげはははははあ」
彼をののしる声が許せなくなります。私はここで何をしているのか、言われるだけでは彼の思いに答えなくては。
「だまりなさい」
「ああ!」
「彼を侮辱しないでください、彼はこの場で誰よりも強く、勇気のあるかたです。その彼を侮辱するのは、私が許しません」
「私が許しません。だとよ、調子に乗んなこのくそアマ」
リュウ様を刺した騎士が私に近寄ってきます。そして
バシンと叩かれ宙を飛びまし。痛いですが彼に比べたら、こんなこと痛くもありません。
「っち、さっさと仕事を終わらせるか、なあ」
と騎士が振り向いたところで異変が起こりました。
「くふあはははっははhっはhh」
彼が、リュウ様が笑いながら立っていたのですから。