無謀
主人公弱すぎです。ご都合主義で申し訳ありません。
二人で集落まで駆けだした。
「今の悲鳴は集落からいったい⋯」
「とにかく今は急ごう」
疲れてはいたが、先ほどまでの道のりを走り続けた。嫌な予感を感じつつ、今自分にできることをしようと覚悟しながら。
集落に近づくとやけに騒がしい。息が切れていく中で頭を動かし最悪の事態に備える。
「レナ、止まってここからは静かに近づこう」
「は、はい。わかりました」
予感が的中しないことを願いながら静かに集落に近づく。今の自分には武器もなければ体力もない。だから⋯。レナを守るために今は頭を働かせないと。持っているものも桶の一つだけである。
「⋯おいおいこれだけのはずがないだろう。さっさと出さなければこの餓鬼どもを殺すぞ」
「これだけだ、あとのものなど知らん」
「そんなわけないだろう。我々はアシュタル子爵様から直々に命を受けているんだ。女子供を差し出し、宝具を差し出せ。そうすれば楽に殺してやるからよう」
「お兄様、それに子供たちまで」
「兵士ポイやつらは60人ぐらい全員武装までしている。大人たちも何人かつかまっている」
自分が想定していた最悪の事態である。逃げ延びたものも何人かいるが戦える人は少ないだろう。
「レナ生き残っているとして、此処の戦える人は何人ぐらいいそう」
「狩りに行っている人で16人ほど、逃げれた人は50人ほどです。でも⋯」
「でも⋯?」
「仮に戦える人がいても、あの騎士の人たちに相手に、戦えるものはほぼいません。武器が違いすぎます」
本当に最悪な事態のようだ。全員を助けるためには武器も防具もない、この状況で生き残るにはせめて今の生き残りと逃げるしかないみたいだ。
「レナ今のうちに⋯」
「リュウ様は今のうちに逃げてください。私が話をつけて皆を守ります」
「なにを言って⋯」
「ありがとうございました、そして生き延びてくださいね」
こんな状況なのに彼女は笑いながら、騎士の元まで歩いて行った。自分はそんな彼女に声をかけられず、追いかけられなかった。
(なんで足が動かない、何で声が出ない、どうして震えが止まらない)
レナの声が聞こえてくる。
「おやめください、人質なら私がなりましょう、子供たちを解放してください」
「おっと、これは上質な女だなこれは子爵様が喜びそうだ」
「レナ!何で出てきた、さっさと逃げ⋯ぐふ」
「おいおい、何勝手にしゃべってんだ、おとなしくしてな族長さん」
「お兄様!おやめください」
(だめだこのままでは、動け動いてくれ)
口が乾き、なぜか一歩ずつ足が後ろに歩み始める。今の自分のすべてが失おうとしているのに動けない。
(誰でもいい、レナを助けて)
そんな願いが叶わないのを知っているはずなのに、怯えてしまっていた。
「お兄様か⋯。いいことを考え付いたぞ、そのお兄様の目の前でその女を犯すなんてどうだ」
「おっ⋯。いいなそれは。久々に楽しみができる」
「おいやめっ⋯ぐっ」
「おいおいお兄様、黙ってみてろよ。ほかの奴もいたら一緒に面倒見てやるよ」
下卑た顔の騎士たちがレナに徐々に近づいていく。
(俺は何をしている、動けよ、助けるんだろ、なら動けよ)
どくどく鼓動がうるさい。汗が出て周りが暗くなってきた。
(動け動け動け動け)
一歩足が前に出た。桶をしっかり握りしめた。
二歩足が前に出た。迷わないようにしかりと目を見開いた。
三歩足が前に出た。奥歯をかみしめ、震えが止まる。
四歩足が前に出た。視線がそれないようにまっすぐ見つめ。
そしてようやく走り出した。レナの元へ⋯。
「はーーーーーー」
急のことで相手も驚いているみたいだ。このまま桶で⋯。
だがその予想は大きく外れ。
「なんだこいつ」
桶は避けられ、こぶしの一撃が入り悶絶。地面に倒れこみ足で踏みつぶされた。
「ふぐっ」
「リュウ様」
「なんだ知り合いか。おもしれえ。なあこいつ殺してしまってもいいだろう」
「おやめください、私ならどうなってもいいですから、その方は⋯」
「恋人か?なら余計に絶望に染まる顔が見たいからな」
「お願いします。やめてください」
俺を踏みつける騎士は剣を取り出し。
「あはは。もっとわめいてくれよ」
俺の体に剣を突きさした。
1対60だと⋯。アッ、負けフラですね。
主人公弱すぎて話が進みません。仕方ないにしても中盤は鍛えないと話になりませんね。
というわけで、またまた絶体絶命ですね。主人公がんばって。