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T大出身だけど異世界に落ちました  作者: 和泉ふみん
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モンスターに食べられたけど力に目覚めました


「あ、あ…。ああ…。」


腰が抜けて、立つこともままならない。それほどまでに、目の前の銀狼は、美しくも恐ろしい姿だった。


銀狼は俺のことなど見向きもせず、イノシシに向かって悠々と歩いていく。ようやく体勢を立て直したイノシシも、体格差をものともせず、銀狼に突進していく。


銀狼の体は、イノシシの何倍も大きい。突進が足にクリーンヒットしたが、銀狼はびくともしない。アルファードがタイタニック号にぶつかったみたいな。逆に上から頸に噛みつかれて、イノシシはジタバタしている。牙が銀狼の足に刺さっているせいで、逃げることもできない。


猪突猛進とは言うが、イノシシは本来、臆病で危険を避ける傾向にある。それなのに自分よかデカイのに向かっていくとは、やっぱ異世界だわ、ここ。どいつもこいつもデケエし凶暴だ。


戦闘ですらない一方的な殺戮。いや、遊んでいるんだろうな。相手の牙を避けようともしていなかった。絶対王者。何者にも倒せない壁。アイツが何なのかは分からない。でも、一生敵わないって事だけは分かったよ。


イノシシが動かなくなった。死んだか。銀狼は満足したのか、器用に口と足を動かして、牙を抜いた。そしてイノシシの腹にかぶりついた。生物、特に動物が他の動物を殺す理由は、主に食事だ。ムシャムシャと肉を頬張り、骨を噛み砕く銀狼の表情は、どこか嬉しそうというか、満足げというか。ちょっとかわいい。


イノシシは、あっという間に骨の残骸だけとなった。相当腹が減っていたらしい。銀狼は、今気づいたかのように、俺の目を見つめた。



あれ、これは俺も食べられるのでは?あんな小さい、いや十分デカかったんだけど、銀狼の体に比べたら小さいイノシシじゃ、腹の足しにならないんじゃ…。いやいや、イノシシよか小さい俺なんか食っても、それこそゴミ食ってるのと一緒で…。



ダラダラダラボタボタボタ


ヨダレ垂らしとる!!食われる、物理的に食われる!まだ性的に食ってもらってないのに、新鮮なサクランボのままなのに!


ジリジリと距離を詰めてくる銀狼。30メートルはあろうかというその巨体に迫られると、膀胱が涙を流しそうになる。


「あ…、終わった…もう終わっだぁぁ…。」


人間って、諦めると悟るんだな。もう、抵抗する気が起きない。燃え尽きたボクサーみたいに、もう好きにしてくれって感じ。


「降参…。一思いにやっちゃってよ…。一気に噛み砕いたら、痛みを感じる暇もないからさ。」


ふっ、言葉分かんねえか。よっと。地面に大の字に寝転んで、死刑執行を待つ。今までありがとね!俺は、土に還ります。



上を見上げると、口ん中が見える。牙には、牡丹肉が付いてる。結構好きだったんだよな、牡丹鍋。そんなことを考えながら、いよいよ両手を合わせてお祈りしていると、生暖かい空気に包まれ、俺は丸ごと食べられた。


目指すは食道、その後は胃…のはずだった。しかし、


「うっ!?かはっ!があああっ!?」


体が熱い。体の中に根性焼きされてるみてえな、ヒリつくような熱さと痛み。でも、体の外にはまるで異変はない。


「アチイイッ!うっ、うっうう!」


耐えることのできない痛み。過ぎ去るのを待つことも不可能。

ひたすら暴れて、悶えて、気を紛らわそうと試みる。暴れるせいで、銀狼は俺を呑み込むことができない。最期の瞬間がこんなに苦しいだなんて、それならトラックに轢かれてた方が良かった。


「うう、うう、うがぁああぁ!!!!」

体の中で何かがスパークした。たまっていた熱が全て、体の外へ放出された。周りの温度が一気に100℃近く上がった気がした。


銀狼もたまらず俺を吐き出した。表情…といっていいのか分からんが、顔の筋肉が引き締まる。俺を見る目は、先ほどまでの獲物を見る目ではなく、敵、倒すべき相手を見る闘争心に満ちた目だ。


こっちは訳が分からない。多少はマシになったが、まだ熱い。サウナにいる気分だ。それだけならまだ心地いいが、チクチクした痛みも伴っている。体の中にデッカイウニがいるみたいな。でも不思議なことに、恐怖感ってのが無くなった。さっきまでの諦めの感情とか、今じゃ馬っ鹿じゃねーのって思う。


「なんかわかんねえけど…!こんなところで死んでたまるかぁ!!」


「大体、こんなところに放り込まれて、すぐ死にそうになるとかぁ!理不尽にもほどがあるわい!」


ヤベエ、ふつふつと怒りがわいてきた。誰だか知らねえが、俺をこんな人っ子1人いねえ場所に放り出しやがって!


「あああぁあぁあああ!!!」


その瞬間、世界は暗転し、俺は意識を手放した。





「ハッ!?」


気づくと俺は、地面にぶっ倒れていた。体もダルい。まあそれはいい。周りの地形が、ちょっと見覚えがないものに変わっているのも、まだいい。一番解せないのは…目の前で、泡吹いてひっくり返っている、あの巨大な狼である。体のあちこちから煙をあげて、まるで美味しく焼かれたような…。


「これ、俺がやったのか…?」


呆然とその場に座っていることしかできない、脳が働かない。こんなこと、どこの教科書にも書いてなかった。俺は否応なしに、ここが異世界であると認識させられたのであった。




知識を総動員して書いておりますが、なにぶん高校生ゆえ矛盾は発生します。これから話が進むにつれて、増えてくるでしょう。極力なくしていきますが、何か疑問点や意見などありましたら、感想欄にでもお書きください。できる限りお答えします。

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