会社クビになったけど異世界に落ちました
性懲りもなく、手を広げていきますよ。フフフ…。まあ、前から書きたかったですからねぇ…。異世界ハーレムものは…。
やあやあ、この小説を読んでくれてありがとう。俺は、この小説の主人公だよ。俺のことについては、詳しくは本編を見てくれな。
本編を読む前に、ちょっとお話ししようじゃないか。
学歴ってあるだろ、学生にとっての、ステータスみたいなヤツね。有名な学校なら、それだけでアドバンテージあるよな。でもさ、それだけが全てじゃあないはずだ。ってーのに、世の中には、そんな尺度でしかモノを見れない、可哀想なヤツラが、たくさんいるんだってな?
1つ、言っておくが。学歴と、仕事が出来るかどうかは…
ぜえええんぜん!!かんけいねえからなぁぁぁぁぁ!!
俺が保証する、大学を卒業して以来、不遇な人生を送ってきた俺が!
(この物語は、こんな社会的ダメ人間が、異世界で頑張る話です)
「くぉらぁ!また、契約取ってこれなかったのか!」
「すいません!すいません!」
禿げ上がった頭を真っ赤にさせて、怒髪天状態のおじさんと、平身低頭、赤べこのごとく謝罪を繰り返す青年。
「もういい、こっちも役に立たないヤツを雇っておけるほど、デカイ会社じゃないんだよ!てめえは、クビだ!」
「ええ、そんな!待ってくださいよ、課長!」
ハゲ課長にすがるクビ青年。
「やーね、頭が良くても、仕事が出来ない人は。」
「学歴だけの、コネ入社みたいなもんでしょ?T大だからって、調子乗りすぎなのよ。」
OLたちのヒソヒソ声が、青年に突き刺さる。青年はそのまま、逃げるように会社を出た。
「くっそぉ!コネ入社じゃねーよ、ババアども!面接を適当にしたのは、そっちだろうが…!」
俺は、小室 剣。
T大を卒業して、はや半年。この会社に入って、いろんな仕事を任され、いや押し付けられてきた。新人なのに、ワケわからん仕事を任されて、失敗したらひどい説教。説明してくれればいいのに、賢いんだから分かるでしょ、と来たもんだ。その上、失敗の責任とらされて、減給だの果てはクビだの!ブラックにもほどがあるだろ!
「何で、こうなったんだろ…。昔は、よかったなぁ…。」
自宅までの道のりを、回想で紛らわしながら帰る。まだ午後4時、小学生も、走り回りながら帰っていく。 すんげえ楽しそうに。一緒なのは、方向だけかよ…。
俺が小学生の頃は、男子はムシキング、女子はファッションにはまり、世間がUSJだのに沸いていた頃。俺は、そんなのにはまるで興味なかったし、興味を持つことが、悪とさえ思っていた。
「剣くん、遊ぼう?」
「イヤ。」
「剣くん、お菓子食べる?」
「いらない。」
「剣くん、何でそんなに静かなの?」
「必要ないから。勉強の邪魔。」
そんなことを、小学校でも中学校でも、あまつさえ高校でもやらかした。高校を卒業したタイミングで、俺に友達なんていなかった。何それ、美味しいの?だった。
それから、何だかんだあって今に至るわけだが…。ここまで人並みの感情をもつに至るには、かなりの苦労があった。本当に、地獄だった…。思い出したくない。
「あ、ここどこ?」
ボーッとしながら歩いていたせいで、駅を通りすぎてしまった。戻らねば…。
時計は、まだ4時半を回った頃。のんびり歩くのも乙なものさ、と、家まで歩いて帰ることに。夕飯までには、間に合うさ。まあ、どうせ独り身だから、時間なんて関係ないけど…。
お魚を焼く匂い、晩御飯のいい匂い。ひさかたぶりに、故郷を思い出す。俺のことを心配しながら死んでいった、両親は今、何をしているんだろう…。
バキバキバキ!!ギャリリリ!
「暴走トラックだぁぁぁ!」
「いいっ!?なんだぁ!?」
しんみりした俺の心をぶち壊す、人々の悲鳴と騒音。俺の後ろに、電柱をなぎ倒しながらこちらに迫る、デカイトラックが。運転席のオヤジは、寝てるのか、目が開いていない。
「ちょっ、ちょっ待てって!死ぬって、あれは死ぬって!」
ダッシュで逃げるも、所詮は人間の足と、500馬力のガソリンエンジン。最悪なことに、道はUターン不可能、横に避けることも不可能の、狭い一本道!
「もう…スタミナが…。バイバイ、俺の短い人生…。」
トラックのフロントが、俺の後頭部をかち割ろうとしたその瞬間、世界が闇に染まった。
「ん?お?なんじゃあ!?」
真っ暗で何も見えない。上を見ると、いや上と言っていいのか分からんが、とにかく頭の方を見ると、空間に穴が開いていた。穴の外には、さっきまで俺がいた道路が見える。
「なに?俺、死んだの?ここが、死後の世界?暗すぎね?」
混乱しすぎて、独り言がでかくなる。その時、反対側、足の方にも、同じような穴があることに気づいた。
「ん?何だあれ…。うおおっ!?」
とたんに、足下の穴が周りを吸い込み始める。ダ○ソン並みの吸引力に抗えず、俺は穴に吸い込まれた。
「わぁぁぁあぁぁぁぁぁああ!!!!!」
次の瞬間、俺は空に放り出されていた。むろん、パラシュートなぞない。俺の意志とは裏腹に、体は加速を続けていく。
「死ぬぅ!さっきも死んだのに、また死ぬぅッ!!もうイヤだぁぁぁ!!」
どうするどうする!考える間もなく、体は地面と邂逅を果たした。
ドスーーーーンッッ!!
「うっ…むぅ…。プハッ!」
ペッペッ!口になんか入った!これは…毛?何だ、このモフモフ…。この上に落ちて助かったのか?いや、それよりも!
「どこじゃ、ここはーーッ!!」
草原の中に、ポツンと立つ俺。世界は不条理であることを、身をもって知ったのであった。