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13月の狩人  作者: 宗谷 圭
第一部
8/73

 全力で走り、肺が破れるのではないかとまで思えてきた頃に、二人は中央の街へと辿り着いた。賑やかな大通りを抜け、市街地の中心から少し外れた場所にある、こげ茶色を基調とした建物の前に立つ。

「カミル……いるかな?」

 互いに不安な顔を見合わせ、フォルカーがドアノブに手をかける。だが。

「……留守か……?」

 フォルカーが掴んだドアノブは寸とも回らず、ただガタガタと音を立てるだけだ。

「カミルは十三月の狩人に狙われてないのかしら? それとも、まさかもう……!?」

「俺達みてぇに、合流しようとして入れ違いになったかもしれねぇな……だとしたら、早く探さねぇと……」

 そこまで言って、フォルカーの耳がまたピクリと動いた。険しい顔で辺りを見渡し、「くそっ!」と毒づく。

「もう追ってきやがった! テレーゼ、一旦逃げるぞ!」

 そう言って駆け出した瞬間に、またもあの黒い矢が次々に降り注いでくる。しかし、今回は周りに多くの人間がいるにも関わらず、誰一人として悲鳴をあげる者は無い。不思議そうな顔をして、テレーゼ達を見詰めている。

 どうやら、十三月の狩人の矢は、獲物とされている者以外には見る事ができないようだ。恐らく、その姿も獲物以外には見えないのだろう。

 つまり、例え事情を語って信じてくれる者がいたとしても、その人物からの援護は望めない。姿が見えないのでは、守りようも攻撃しようも無い。獲物とされているテレーゼ達だけで、何とかしなければいけないのだ。

 走りながらその結論に辿り着き、テレーゼの顔は更に青褪めていく。そしてその間にも、黒い矢は間断無く降り注ぐ。石畳の街中では、先ほどのように砂埃を起こす事もできない。

 矢が背中を掠める気配に慄きながら、テレーゼとフォルカーは走り続けた。どこに逃げれば良いのかは、まだわからない。だが、走らなければすぐにでもあの黒い矢に貫かれて死んでしまう。

 脇目も振らず、二人はただ、ひたすらに走り続けた。

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