熱愛メイドバトル
そしてテトラはうっとりと惚けた瞳で言った。
「あたし、カナタ様のことご主人様として尊敬してますし、男の子としても強くて優しいから好きですしっ! そ、それに……カワイイって、初めて言ってもらえたし……。へへ、正妻はユインシェーラ様でいいんで、あたしのことも貰ってくれませんか?」
「え、ええっ!? テトラ、そ、そそそそれ本気でっ!?」
予想もしないことを言われてあたふたする俺。
テトラはどんどん赤面していくが、それでもいつも通り明るく言った。
「やだなぁカナタ様! あ、あたしだって……さすがに、こんな冗談言う勇気、ないですよ?」
「テトラ……」
「そ、それでどうですか? あたし、こうみえて結構尽くせるタイプだと思ってるんですけどっ♪」
「え? ど、どどどどうって言われても……!」
「あ、これはまんざらでもないですかねー? ユインシェーラ様やアイリーンみたいにおっぱい大きくないですけど、貰ってくれたらいっぱい尽くしちゃいますよ♥」
多少照れたように――けれどキラキラした目で俺を見つめてくるテトラにドキッとしてしまう。
や、やばい……! いつの間にか彼女をただのメイドさんとしてではなく、ちゃんと女の子として意識し始めてしまってる! そりゃ無理だろこんなことされちゃったら!
するとテトラは、隣で「あわわわわわ……!」と取り乱していたアイリーンをチラッと見て。
「でも、アイリーンはやっぱり諦めちゃうんだよな~? ずーっと臆病に待ってたって、大切なものは手に入らないぞ。だからあたしたちメイド隊に入ったんじゃん。忘れたのかよ?」
「え……」
「まーあたしは諦めないけど! カナタ様、考えておいてくださいねーっ♪ そしたらこの身体もぜーんぶカナタ様のものですから!」
まるで彼女を挑発するように言ったテトラは、そのまま見せつけるように俺へとさらに密着してくる。ああああこれやばいやばいしかもみんながいる前でええええ!
「……う、うう、ううううう………………」
するとそこで、苦しげな声を上げるアイリーンがぐっと握った両手をぷるぷるさせていた。
彼女は今にも泣き出しそうにその目を潤ませると、大きく息を吸って――
「――しだって…………私だって! 私だって諦めないもんっ!!」
と、今まで聞いたことがないくらい大きな声量で言っ
た。
「私だってカナタ様のこと好きだもんっ! そんな簡単に諦めないもんっ!!!」
今度はアイリーンが俺の逆の腕をしっかりと抱きかかえて、そのたっぷり大容量なお胸の感触がダイレクトに伝わってくる。おわあああああああ!
「え……えええええっ!? ちょ、ア、アイリーンまで!? お、俺のこと!? その……冗談……じゃなくて?」
「だって、カナタ様は、わ、わたしの…………う、ううううう~~~~っ…………!」
アイリーンはそれ以上何も答えてはくれなかったが、それでも真っ赤になりながら俺の目を見る。
俺を離すまいと必死になってくれているその姿を見れば、気持ちはちゃんと伝わってきた。俺は当然だが、ミリーもシャルもリリーナさんも目を点にしている。
――え? なにこの状況。どうなってるの?
いきなり二人に告白されちゃったんですけど。
モテモテなんだけど!
両手にメイド天国じゃん! うへええええええマジかよおおおおお!
すると、そこでテトラがなんだか嬉しそうに声のトーンを上げていく。
「なんだよ、やれば出来るじゃん。そんじゃあたしたちも勝負だアイリーン! どっちが先にカナタさまから側室と認めてもらえるか勝負な! 勝った方が“ご奉仕”してよしっ! どうだ!」
「いいよテトラ! 私、負けないもん! もう大切なものは離したくないもん!」
「よーし言ったな? い、言っとくけど、“ご奉仕”ってすっごいコトなんだからな! もうあんなことやこんなことしちゃうんだぞ!」
「そ、そんなのわかってるもん! 私だって、もうすぐ結婚出来るようになるんだから!!」
「ふーん? アイリーンじゃすぐびびっちゃって、逆にカナタさまに気を遣わせちゃいそうだけどなー。その点、あたしは弟たちの裸で慣れてるから余裕だしー!」
「うううう……そんなことないもんっ! テトラだってそんなこと言って震えてるくせに!」
「んなっ! そ、それはアイリーンの方だろっ!」
「私だっていっぱい勉強して、いっぱい想像して、いっぱい練習してるもん! テトラよりおっぱいだって大きいもん! こ、ここでだって……カナタさまにご奉仕出来るんだから!」
「あっ、こら抜けがけすんなアイリーン!」
と、そこで左右からぎゅうぎゅうとメイドサンドされ、腕を引かれまくる俺。
さらに二人の行動はエスカレートしていき――
「うわああああ!? ちょ!? テ、テトラ!? アイリーン!? どこ触ろうとしてんの!? ほら少し落ち着いて! ていうかちょっと離れてええええええ!」
二人はなんと俺の股間を目掛けて大胆な行動に移ろうとしたので悶えながら逃げようとするも、彼女たちの力の強さはすさまじい。無理矢理振り払うことも出来なかった。
と、そんな事態をポカンと見つめていたシャルが、やがて愉快そうに笑いだした。
「――ふっ、はははは! まさかあのテトラとアイリーンが恋をするとはな。いや、カナタ殿くらいの御仁であればそれも当然か。それに彼女たちの歳を考えれば自然なことだ。リリーナ、君はいいのか?」
「な、何を仰いますシャルロット様。私は、その……」
「ふふ。いや、やはりお前たちを連れてアルトメリアの里に向かって良かった。リリーナもテトラもアイリーンも、以前よりずいぶん表情豊かになったものだ。それこそが、お前たちに最も必要なものであると感じていたからな」
「シャルロット様……」
「お前たちは優秀なメイドだが、ただ主に従い、その武力を使わされるだけでは何の意味もない。それを扱う者の心を磨いてこそ、それは本当の力になる。私はそう思っている」
「本当の……ですか……」
「うん。だからカナタ殿には感謝しないといけないな。これもまた勇者としての――いや、これはカナタ殿自身の力かな」
なんてことを言って静観するシャルは満足そうに微笑み、リリーナさんでさえ照れたように目を泳がせている。
だが俺はそんな場合じゃない!
「いやいや二人とも何ほっこりしてるの!? ほらみて! テトラとアイリーンがなんかヤバイんですけど! ちょ、見てないで止めてよおおおおおお!?」
マジでメイドさん二人から襲われかけていた俺の悲痛な叫びによって、ようやくシャルとリリーナさんが動いてくれてなんとか貞操を守った俺であった!
 




