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気晴らし本舗  作者: わふ太郎
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その1


『気晴らし~、気晴らしは如何かね~。見渡す限り鬱、鬱、鬱。楽しいことなんてありゃしない。仕事で失敗家族に逃げられ、こうして一人新事業に乗りだすも、客は一人も来やしないよあーもうやんなっちゃうなあー! 如何かね~!』


「途中からあなたの愚痴になってなかったかしら」


少女が一人、移動屋台のそばでこちらを睨んでいた。


『おーどうしたねお嬢ちゃん。迷子かね』


「ちょっと! わざわざスピーカーで話さないでよ!」


「お嬢ちゃんが初めてのお客さんだ。そこ、座ってくれ」


「勘違いしないで。私は客なんかじゃないわ! ただ耳障りだから静かにしてほしいだけよ!」


そういって少女はドカリと屋台の椅子に腰かけた。


「随分と苛ついてるねえ。何かあったのかい」


「ふん! あったとしてもあなたに聞かせてあげる必要がどこにあるのかしら。でもいいわ、今ここで話さなかったら、道端の石ころに話しかけてしまいそうだもの!」


「ありがとう、ありがとう。では……」



お客さん一人参ります。こちら気晴らし本舗、気を晴らすにも気を付けて。

あなたの愚痴にお付き合いします。

題目は、『日常で見かけたもうっ!本当に理解不能!まじやばい!な出来事』でございます。

どうぞ、ごゆっくり……。



――そもそもここが現実のはずないのよ。だって、人面猫が町を駆けまわったり、カジキイルカが道を歩いたりしているんだもの!

でもね、私の夢にしてはセンスが悪いわ。だからこれは気晴らし本舗、あなたが見た夢ね。でも不思議ね。私にはあれが何か分かるもの!

目の前にいる大男は、頭が鮫みたいで、首から下はスーツを着ていて人間みたいなの。まあ、立てず泳げずでピチピチと跳ねてるだけだから、きっと彼はまだ人間の体になれてないのね。

そう、ただ目障りだったのよ。だから声をかけたの。


「私のお父様が言っていたわ。そんなところで寝ると風邪をひいてしまうよって。そうなの。お父様が言った唯一為になる教訓よ」


「じゃあ立ち方を教えてくれないか」


「いーやだ!」


「それは一体何故だろう!」


「私はまだ子供よ。大人じゃないの。あなたは大人でしょう。ダメよ、大人は自分で考えなきゃ! 一人で立てなきゃ! でもそうね。きっとあなたは夢から目を覚ますべきよ。人間だって、一人で立つのが難しいとわかったでしょうから」


「ううむ……夢の霊長類の日々がぁ……!」


「来世あたりから出直してらっしゃい! このファッキンフィッシュ!」


「い、いやだ! 助けてくれぇ!」


「夢の世界で淘汰された生き物は現実でしか生きられない! さあ帰れ! 帰れ! 帰れ帰れ帰れ……あら?」


気が付くと、彼は刺身に代わってたの。一体何があったのかしら。この世界は、やっぱり不思議みたい。

私が分かったのはこれだけじゃないわ。この世界では私のしたいことが何でも出来るのよ!見てらっしゃい!


そう、それは鮫男の一件で頭を回していたときよ。前からイルカさんが歩いてきたの。


「あら可愛いイルカさんこんにちは」


「やあ、今日はいい天気だねぇ」


「そうね。でも明日もいい天気だったわ。昨日の天気予報で言ってたもの。あら、すると明日の天気は昨日の事実ってことにならないかしら。明日になっても、今日はいい天気だねなんて、時代遅れでとてもとても恥ずかしくて言えないわね! ところで何か用かしら」


「昨日の君も今日の君もかうぃいね。きっと明日も可愛いね。今日は君を褒めにきたんだ」


「……ごめんなさい私、お母様に早く大きくなって可愛らしいお嫁さんになるように言われてるの。なのに私ったら昨日からちっとも変わってないわ。これもきっと昨日から決まってたことなのね。きっと明日も決まってるんだわ。そう、きっと明日も可愛いの。残念だわ。そういうことだから、気分が大変傾いた。もっと褒めてもいいのよ」


「スラッと伸びたまな板ボディ!」


「バラバラになぁれ☆」


「げぼぉ!」


よって私は気分が大変悪い。



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