Two.~第二話~
新年明けましておめでとうございます。
去年中にこれを終わらせられてなかったのでささっと書いてしまいました。
どうぞ今年も宜しくお願いします。
では、ゆるりとお読み下さいませ。
ああ、うん。退屈だ。
さっきのガンファイトの方が幾分かマシだった。
このただ外眺め続ける作業、かなり辛い。いや、もっと辛いのは運転だ。
何しろ、一直線な道だからな。道路の上走らせておけばハンドルを定位置に固定すればアクセルを踏むだけだ。しかも、外眺めて変なものがあれば寄らないといけないからあまりスピードも出せない。何もしなくていいということの残酷さが痛いほどわかる。
今その作業に従事している運転手の顔を見ることはできないがひどく絶望していることだろう。
ちなみに俺も運転できるが、あまりしない。運転が荒っぽくて車を傷つけてしまうかもしれないからな。
さて、さっき拾った女も、包帯を巻かれた右腕を抱え、その退屈さに耐えかねてか
「…CDかテープレコーダーでもないわけ?」
なんて尋ねてきた。
「生憎だが、この車にそんな洒落たもんはついてない。怪我の治療をしてやっただろ?諦めておとなしく外の風景でも眺めてるんだね」
なんて風にそこの運転手はぶっきら棒な返事をしてる。
普段は女に優しいやつではあるが、餓鬼はその限りではないらしい。(それでも、右腕の怪我はしっかりと治療していたが)餓鬼とは言っても、俺と同じ十六か十七かってところだろう。まあ、そんなのどうでもいいことだが。
「じゃあ、ラジオくらいなら付いてるでしょ?」
ある。確かにこの車にラジオはさすがに搭載されている。しかし使い物にはならない。
「こんな道路のど真ん中にどっかの街の電波が流れてると思うか?」
運転手の方が再度返答となる質問を返す。街のラジオは街全体に届くくらいの範囲にしか電波を飛ばせない。
つまり、街につかなければラジオも聞くことができないのだ。
これは、本来街から街まで車で移動するなどということが少ないことが起因しているのだろう。
「……それもそうね。乗せてもらえただけ感謝…ということにするわ」
と退屈そうな独り言を呟いたか、あるいは言葉に出しながら納得をしたか。
ゴソゴソやカチカチと金属音や弄っているような音を繰り返し始めた。
おそらくさっきの落し物を確認しているのだろう。国家機関の後ろでなんと図太いことをしてくれるのだろうか。
まあ、人口管理局は人口の大きな変動に関わりのあること以外は不問とするということなので、この盗人女が多くの人々の命を脅かす存在でない限りは何をすることもない。
「……女、一つ聞いておく、殺人と聞いてどう思う?」
暇であることも相まっておかしなことを口走ってしまった。
何を言っているのだろうか、この荒野の景色と車内の温く気まずい空気にやられてしまったのかもしれない。
「ん?なぜそんなことを?」
「あ、ああ、暇だからな……答えたくなければいい。黙って俺のように外の景色を眺めていればいいさ」
ちょいとばかし意地悪くごまかす。どうせ暇なんだ、無視なんてしないだろう。
「……」
と思っていたらされてしまった。意地悪いことを言った仕返しだろうか。
そのまま黙って、先ほどの盗賊連中から巻き上げたものを確認しているのか、ゴソゴソという音が乾いた車内に響く。
まあ、例え答えを聞いたとしても俺はそのあとに言葉を返すことはできないが……
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この後は幸運にも、街に近いこともあってか村やら集落やら集団は見当たることはなかった。
ようやく、入街役場までたどり着くことができ、手続きを終え車ごと街に入る。
「さて、降りてもらおうか?」
俺は言った。こんなところで降ろすのもどうか、と端から言われそうではあるが、盗人であろうこの娘に情けなどかける必要もないだろう。それに俺らの”本来の仕事”について知られたら困る。
「……まぁ、ひどいわね。運転手さんホテルまでお願いできない?」
「この車はタクシーじゃねぇんだよ。さっさと降りて自分の足でホテルに行きな」
「何よ〜!いいじゃないのさ!そんなにかからないでしょ?」
「俺は二度同じことは言わない主義だ。素直に従ってくれないと短気な助手席の相棒が腰のモン突きつけて脅してくるぞ?」
出会ってから、まだ数ヶ月しかたっていないのに俺の性格を理解してくれているな。この元医者男。
彼の言った通り、俺は腰のホルスターの銃のグリップを握っていた。
「……わかったわよ。乗せてくれてありがとね。」
流石に銃を突き付けられたくは無い様で、素直に盗人少女は後部座席から後ろのドアを開け、車から降りていった。
「んじゃ、まあ人口管理局の支部に向かおうかねぇ」
「そうだな」
今回の疲れを少しでも癒すためにラジオをつける。行き着いた局は、激しいロックを延々と垂れ流す。
癒えるどころか余計に疲れてしまい、局を変えようとする頃には目的地に着いてしまった。
「よお、お勤めご苦労。中央街のヤーンさん」
車を支部の路肩に止め、ドアを開けたところでそう声を掛けられた。
迎えに来た、人口管理局員だろう。目の感じから、こっち側の人間だろう。
「有名なもんだな、相棒として鼻が高いってな」
「おいおい、言ってくれるなよ。」
そんな感情もこもって無い声で言われても照れるに照れられないじゃ無いか。
「ははは、仲がよろしいようで何より。さて、支部長が待ってる」
早く着いて来い、と言わんばかりに先に支部に向かって行く。
そのあとに俺たちも続く。さて、行くか。
仕事の時間だ。
誤字脱字、好評批評どうぞよろしくお願いします。