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One.~第一話~

どうも、速川渡です。

お久し振りの方もいれば初めましての方もいると思います。


まあ、下らん話がお好きで暇な方は、どうぞごゆるりとお読みください。

ピピピ


ピピピピピ


ピピピピピピピ


車の中で目覚ましのアラームが鳴り響く。

しかし、まだ助手席で寝ていたい俺はアラームを止めようと手を伸ばす。


……届かない。後部座席のちょうど俺の後ろに置いてあるなこれ


ああ、残念。脳が働き始めてしまった。

もうこれは起きるしかない。というか、二度寝するにはもう遅い。

しぶしぶ、アラームを止めて、目を擦り脳の働きを活性させるため、車のサイドドアを開け日光を浴びる。

うん、相変わらずの殺風景だ。


「お、起きたか。飯はできてるぜ」


先ほどまで運転席で眠っていたはずの俺の相棒が俺より早く起きて、プラスチック製の食器に不味い朝食を並べて待っていた。


「ああ、起きたよ。朝日が昇るのと同じくらいに起きる癖に、アラームかけてやがった誰かさんのせいでな」


そんな風にイヤミを口にしながら、彼が作ったというほとんど味のない薬膳食に口を汚し始める。

ああ、やはり慣れない。味がなさ過ぎる。はぁ、中心街のピッザの味が懐かしい……


「だって、俺はいいけどああでもしなけりゃ、ずっと寝てるじゃねぇか。おまえ」

「俺はお前の数倍の心労があるんだよ。疲れた分くらい休ませてくれよ」


昨晩も遅くまで金銭管理をして、このまま次の街に行って何日持つか……

そんなことを考えつつ、俺か愛飲しているレモン100%ジュースの紙パックに手を掛ける。

ああ、やはりこれがなくてはこんなまずい飯は食えない。


「またそれ飲んでんのか……よく飲めるぜほんと……」

「味が薄すぎんだよ、もちっと味付けしろよ。」

「言ってんだろ、味付けは最低限してあるって、そんな劇物飲んでるから偏食気味なんじゃないか?」


劇物とはひどい言われようだ。ただただ酸っぱいだけなのに。

酸っぱすぎて販売中止になり掛けるほど、酸っぱいだけなのに。

偏食も言いがかりだ。確かに味の濃いジャンクフードは好きだけども、少し薄味の和食だって好きだ。限度はあるが。

俺が飯を食い終わった頃には、相棒の方が出発の支度を始めていた。


「そろそろ出発するぞ。さっさと乗れよヤーン」

「あいよ、今行くぜアラン」

プラスチック製の食器はそこらに投げ捨てて車に乗り込む。


ここらで自己紹介をしておこうか。

俺はヤーン。ヤーン=ルピター。

そして、運転席でアクセルを踏み始めたのがアラン。俺の相棒のアラン=バイソン。

俺たちは国の人口を管理する人口管理局。仕事内容は役職の名前の通りだ。

次の街へ向かうのに途中、野宿をしていたんだ。


車外に広がるは一本の道路とカラカラな荒野。この国の大半がこの景色だ。

中心街ノルレージタウンを含め十三の街を持つ、荒地の国エミリー王国。

国の領土があまりに広いため、街の数(中心都含め十三)及び人口数を一定に定めている。

時計のように十二の街が円状になっていて、その中心に中心街がある。



北を十二時とするのであれば、俺たちは三時の方向にあるルサエロタウンに向かっている。

大抵の移動は飛行機で行われるが、俺たちがそうしないのは

この道の途中に村や集落はない。双眼鏡で外を眺め、それを確認する。そのためだ。

もしもあったら、余計な仕事が増える。

昨日も六件あったな…

それが本来なら半日ほどで着くはずの移動が途中、固い助手席で一晩明かした原因でもある。

しかし、本日は見当たらない。この分なら、昼にはつけるはずだ。



・・・・・・・・



・・・・・・・・・・・



・・・・・・・・・・・・・・



・・・・・・・・・・・・・・・・・



あれから数時間後。いつの間にか、飲んでいたジュースの中身がなくなっている。

片時もストローから口を離していなかったのに…どこに消えたと言うのだろう。

朝飲んだのを含め七つ目、今取り出したので八つ目だ。

残りはあと二つ三つ程度だったはずだ。このペースで街まで持つのだろうか……


双眼鏡とジュースを片手に周辺の様子を見ていると、道路から数百mほど先の岩陰に五、六人の人影が見えた。

野盗の集まりか何かだろうか……


「アラン止まってくれ」


彼はブレーキを踏んでから

「ん、どうした? またあってはならないものを見つけたか?」

            と面倒臭そうな顔をこちらに向けてきた。


「いや、向こうの岩陰に五、六人の人影が見えた。それを確認しようと思ってな」


それを聞くと少し考えたようにして

「成る程……分かった。真っ直ぐな道の運転で退屈してたところだ。確認しに行くか」

                まだ表情を曇らせつつも再び車を走らせ始めた。


長くて退屈なコンクリート道を抜け、母なる荒れた大地にタイヤを滑らせていく。

車体はガタガタと揺れて、まるで『待っていた』と言わんばかりにはしゃいでいるみたいだ。


この車は本来オフロード専用なのだが、基本整備された道路しか走らない。

元々、給料から買ったもので、安くて性能がいいのを選んだらこの車だったのだ。

しかし、オフロードカーの為整備された道路を走るよりも、脇の地面を走ったほうがよっぽど早いのだ。

まぁ例え、急ぎの用があっても、道路の上での運転のほうが楽なので関係ないが……


ものの数分で、その岩陰まで到着する。

どうやら、野党の何人かが誰かを襲っているようだ……


車窓を開き、見張りに言い慣れた質問をする。


「こちら、人口管理局だ。そこで何をしている」


「ああん? 関係ねぇよ、部外者(よそもの)にしゃべるようなことじゃねぇ!」


『今いいとこなんだから邪魔をするな』というような、聞きなれた返答を見張りをしているらしい男から怒鳴り返される。

ああ、こういう奴は本当に嫌いだ。

素直に答えを返してくれて人口の変動に関係なければそのまま、目的地へと赴けるというのに

とあれこれ、思いを馳せつつ内側のサイドドアに手を掛けた。

一つため息をついてから、ドアを開く。


「もう一度問うぞ……人口管理局の者だが、そこで何をしてる」


車から降りて先程したのと同じ質問を繰り返す。


「関係ねぇつってんだろ! ぶっ殺されてぇのか!? ああん!!?」


向こうは拳銃を取り出し俺の方にそれを向けてそういった。

しかし構わず俺は、その野盗たちがいる方に向かった。


「……こっちに来るんじゃねぇ!」


そう言って、手のそれをもっと俺の方に突きつけてきた。


「ああ……もういいや」


俺はそう口にして、腰についている左ホルスターから拳銃を取り出し、さっきからギャンギャンうるさい木偶の坊の土手っ腹に一発鉛を打ち込んでやった。話も通じないようだったから、撃った。始末書もその旨で書こう。


銃声と共に見張りは倒れて悲鳴をあげる。


野盗たちは行動をやめてこちらを向く。


「最後だ。もう一度だけ問う、こちらは人口管理局だ。そこでお前らは何をしている」


どうやら、こちらに意識を変えたようだ…見た感じ野盗の数は七

旅人に向けていたその銃口をこちらに向けてくる。

こちらの銃は中折れ式リボルバー一丁 


こちらの銃を遠目から見て、向こうは勝手に調子に乗り始める。

リボルバーは大体が五から六の装弾数だ。今撃ったのも含めれば、通常残り四、五発で再装塡(リロード)しなければならない。

この野盗たちは銃の腕によほど自信があるのだろう、四、五発では自分たち全員は倒せない。その再装塡(リロード)の隙にこちらを撃つ気なのだ。


「兄ちゃん悪い事は言わねぇから、持ちもん全部置いていきな」とか「その車ごと置いていってもいいんだゼクケケ」とか言い出す始末だ。


最初から分かっていたが、今の台詞で確信した。それを彼らに毅然とした態度で口にする。


「……よし成る程、その口振りから完全に分かったよ。旅人を襲って、持ち物をくすねていたんだな」


この連中がただの野盗だと分かったら、もう居る必要もない。

人口の大きな増減に関わることでないなら、別にいいのだ。さっさと次の街へ向かおう。

と、拳銃をホルスターに戻して、踵を返し車に向かう。


しかし、どうやら野盗たちはそれが気にくわないようで

「待てや! タダで帰すと思うのか! ああん?」とか「頭の悪いやつだな……俺たちに背を向けやがった」とか言ってくる。

おそらくだが、奴等は後ろで銃を構えている。面倒だが、このまま行くのは性に合わない。


振り返りざまに左ホルスターから拳銃を抜き、まず右端のやつに一発、それが命中すると同時に二発目をその隣に命中させる。

流石に打ち返してきたがハズレ。その替わりに撃って来た奴に三発目、更に四発目、五発目を二人に命中させる。

勿論、見張ってた奴も含めて急所をそらしてある。


装弾数五、六発のリボルバーならここに再装塡(リロード)を挟むことになるが、これは装弾数九発+一発のレマット・リボルバー


まだその必要はない。


再装塡(リロード)の隙を狙っていた残り二名にも他の奴ら同様に鉛玉を撃ち込む。

取り敢えずは全部倒した。始末書が面倒だがやってしまったからには仕方がない。

周りに他の仲間がいないことを確認してから、空の薬莢は専用の受け袋に入れて再装塡(リロード)する。


「ありがとうね、お蔭で仕事が楽になったわ。」

と女の声が響く。襲われていた旅人のようだ。

……いや、今の言葉からするとわざと襲われていたようだ。その証拠に倒れている野盗たちから、金品を巻き上げている。

見た目十代前後…女の子の一人旅ねぇ……

「……はぁ。」

色々な考えを巡らせてから、ため息をついて再び車の方に足を向ける。別に、考える必要はないだろう。


車に入ってドアを閉め、アランに

「もう行こうぜ。お前もあんなのには興味ないだろ?」


「ああ、餓鬼には興味ない。しかしだな、一応俺は元医者なんだぜ? 放っては置けないね」

そう言って、車窓を開き

「ルサエロタウンまでなら乗せていってもいいが?」


金品を一通り盗り終わったのか

「ええ、ここであったのも何かの縁。乗せてくださいな」


こうして、ルサエロタウンまでの道中に一人の少女を同行させることになった。


そしてこれが、始まりだったのだ。


いや、始まりというなら、もっと前から始まっていたが



この名も無き物語はここから始まる。

誤字脱字、講評批評お待ちしています。

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